見出し画像

てのひらの太陽を

人間には忘れるという機能が備わっているので、どうでもいいことはすぐに忘れるだろうし、ある程度大事なことでもすぐには思い出せなかったりする。
強く心が動いたことは覚えているというけれど、そんな記憶ですら、日常にかき消されて埋もれがちなんじゃないだろうか。

お母さんはどんな人?
お父さんはどんな人?
自分が自分に問うよりも、人に問われると違う答えが出てくるのは何故だろう。
自分の中に埋もれている記憶を探し出して拾っているのは自分自身のはずなのに。
私が小さい頃、母は忙しかった。
寂しいと思ったことはなかったと思う、けれど。
学校行事の代休で母が休みの時は嬉しかった。
お母さんが今日は家にいる。
それだけでうきうきした。
私のてのひらを見て、その人は頷いた。
「必死で世間とかそういうものに合わせてきたんだね」
自分ではそんなにわからない。
そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
こういうことはすぐにわかったりするものじゃない。
きっとこれからじわじわと滲み出るように腑に落ちていくのだろうと思う。

占星術では、太陽星座はどう生きるかという指針みたいなものだとよく言われる。
私はその説明はよくわからないなと思っていた。
てのひらにも天体が散らばっているのだとその人は説明した。
そして、全部の天体が太陽を支えているのだと言った。
なるほど、と思った。
みんなで太陽を応援してるんですよ、とその人は笑ったのだった。
鑑定が終わってからしばらく自分の手を交互に眺めてみた。
てのひらに物語がある。
小さな私も未来の私もいる。
きっとまだ知らない私の物語もここにあるのだと思う。

#エッセイ #手相 #てのひら

いただいたサポートは創作活動、本を作るのに使わせていただきます。