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美しい眺め

この時期になるとイルミネーションがあちこちで賑やかになるけれど、昔からあまりイルミネーションに興味がなかったりする。
夜景もそんなに、である。
昔、夫とデートしたとき、夫は必死になって夜景の綺麗に見える場所を探そうとして山の中に入り、あまりの暗闇に2人とも恐怖を感じて引き返したことがある。熊が出てきそうな山中で、明かりも持たずに夜景を楽しめる気がしなかったのだ。
闇の中なら、蝋燭の火や蛍の光がいい。なんだか清少納言みたいになるけれど、自然が生み出す炎や蛍の光には独特のリズムがあり、それを「ゆらぎ」と呼ぶそうだ。
小さい頃、夜に蛍を見るために妹と長靴を履いて川沿いを歩いていた。木の葉に残った雨上がりの雫を蛍が飲みにくるのを知っていた。
1つの木にたくさんの蛍が止まり、それぞれのリズムで小さな光を放ち、それが川に反射して映っている。私も妹も黙っていた。
そのうち、バラバラだった蛍の点滅はだんだんと申し合わせたように揃い始める。一斉に消え、無数の星のように一気に現れる。
私と妹は息を飲んで顔を見合わせる。川面に映る光がときどき揺れる。風はなかった。じっとりと草の匂いが濃くなって夜が更けていった。

花言葉 シャコバサボテン

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