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地獄のスピード出産をしながら考えていたこと:望まない妊娠を防ぐということ

こんにちは。キャリコン社労士の村井真子です。
突然ですが、先日(というか昨日の朝)第三子を出産しました。
久しぶりの出産は破水して入院してから5時間、陣痛が来てから1時間のジェットコースターのようなお産でした。

で、このお産の間、私が考えていたことを忘れないうちに書き留めておきたいと思います。

1)望まない妊娠をして、出産するということ

私は今回も含め、三人の子どもの全員を不妊治療で授かっています。
不妊治療で授かるということは、ありていにいえば、それなりのお金と手間をかけて、望んで妊娠しているということです。妊娠するまでに毎日のようにクリニックに通い、高額な保険外治療を受けるのは、子どもが授かりたいという一心があるからに他なりません。

だから、妊娠している間のストレスにも、出産の辛さにも耐えられたのです。

私はもともと身体が丈夫なほうということもあり、かなり健康な妊婦でした。
ワーカホリック&個人事業主ですので、仕事も入院前日までしていました(友人には呆れられましたが)。
でも、このように健康な妊婦だった私でも、普通に悪阻は辛かったし、一人目の子どもを授かってからずっと慢性不眠で3時間以上まとめて寝られることはなく、後期悪阻で妊娠8か月ごろから出産当日まで夕方になるとマーライオンのように吐くという状況は続いていました。
そして陣痛。初産婦なら通常12~15時間かかると言われているのが1時間で済んでしまったため、要するに痛みも12~15倍で一気に来てしまったような状況でした。第二子のときは「陣痛来たな…病院に電話しよ。あ、充電器荷物にいれたかな」とか余裕で対応出来ましたけど、今回は陣痛が来たな、と思った瞬間一人で歩けないほどの激痛からスタート。
マジかよ!!!と滝のような汗を流しながらひたすら付き添ってくれた夫にいきみ逃しに手を貸してもらって出産しました。自分でもずっと獣のような声を垂れ流しながらのお産でさぞみっともなかったことと思いますが、過去2回のお産と比べてもだいぶマシになってきたというか、上手に産めた気がします。
助産師さんにいたわられ、適切な声掛けをされてなお、そして終わってみれば安産だったのではあるけれど、久しぶりの出産はやっぱり痛かったし、産む直前まで頭の中は「痛い痛い痛いとにかく痛い早く産みたい痛い痛い」しかなかった。

この痛みに耐えられたのは、もちろん子どもに会いたいという気持ちがあったからですが、それだけではなくて、この出産は「守られていた」という安心があったからです。
付き添い励ましてくれた夫だけでなく、声掛けをして励ましてくれた助産師さん、分娩後の縫合や胎盤剥離までケアしてくれた産婦人科医さん、看護師さんたちがいたから、私は頑張ることができた。
一人で頑張らずにいられた、というこの安心感は本当に得難いものです。

でも。そうではない出産をする女性も、やはり存在します。
レイプを受けて妊娠してしまい、堕胎をできることすら知らずに臨月を迎えてしまった女性。性風俗で客に本番行為(性交渉)を強いられ、堕胎費用が捻出できずに産まざるを得ないところへ追い詰められた女性。産婦人科医の友人の話では、このようなケースの中には学生も混ざっているということです。

2)日本における児童虐待の実態

実は、日本においては嬰児殺の件数は1970年代をピークに減少しています。70年代当時、0歳児の他殺による事件数(認知件数)は年間200件もありました。しかし、こちらの記事によれば2017年時点で認知件数は11件まで減少しています。(もっとも、11件に減少したからといって0ではないということは留意しておかなければなりませんが。)

しかし、それとは別のデータもあります。

ビックイシューのこちらの記事を見ると、年々児童虐待の相談件数・事件数は増えており、児童虐待を原因として死に至るケースで最も多いのは「0歳0月0日」の赤ちゃんのケースであるとのこと。そして、その加害者になるのは、9割がその子どもの母だという事実が掲載されています。

つまり、この母たちは、先に私が挙げた例のように望まない妊娠をし、たった一人で子を産んで、そして子どもを「殺害」せざるを得なかったのではないか。そんなふうに思うのです。

経産婦で、自分で望んで子を授かり、万全のサポート体制の下で出産した私であっても、お産それ自体はかなり痛くて辛かった。
しかも、たまたまわが子はきちんと頭が下になって生まれてくれたのでよかったのですが、逆子や横位など帝王切開でなければ赤ちゃんにも母体にも危険の高いお産もあります。
それを思うと、彼女たちがたった一人で出産に「臨まなければならなかった」のは、どれだけ心細く、辛く、恐ろしい体験であったでしょうか。また、自らの手でそんな辛い思いをして産み落とした子どもの命を奪うことが、のちの彼女たちの人生にどんな影響を与えてしまうのか、私には想像することすら辛く、痛ましく感じます。

先に挙げたビックイシューの記事には、その解決策として愛知方式と呼ばれる赤ちゃんの特別養子縁組や赤ちゃんポストの取り組みをあげています。産まざるを得ないところへ追い込まれた女性とその子どもを救うために、これらの取り組みが寄与する部分はとても大きいと思います。

しかし、産む選択をとる前に彼女たちに手を差し伸べられる場所がなかったか。すがる場所、駆け込んでいける場所がなかったか、と思うのです。
産まずに済むなら、彼女たちが受ける傷は心理的にも物理的にも、もっと軽くなるのではないでしょうか。

3)若者が身近に、気軽に相談できる場所=ユースクリニックという選択

たとえば、ユースクリニックという場所があります。
スウェーデンの取り組みが有名ですが、少しずつ日本にもユースクリニックを開設する病院・薬局などが増えてきました。


「ユースクリニックでは、小さすぎる・重要でない質問なんてありません。
全ての若者が当然の権利として無料で訪れることができる場所です。
対応スタッフの性別も選択できます」
これは、スウェーデンの『ユースクリニック』の公式サイトに掲載されている文章である。なんとも心強く励まされる一文ではないだろうか。
このユースクリニックは、スウェーデンにある医療機関で、 助産師、看護師、臨床心理士、産婦人科医などが待機し、対象年齢約13歳から25歳の若者が無料で訪れることのできる、「若者のためだけにあるクリニック」のことだ。スウェーデン全土に約250カ所を超える数が存在し、避妊具の提供や性感染症、妊娠に関するケアはもちろん、それ以外にも家庭や学校での悩み相談、アルコールとの付き合い方や摂食障害など、若者が抱えやすいこころ、からだの問題に幅広く対応している。


私が以前支援していたある女性は、高校生の時に援助交際が原因で望まない妊娠をし、若くしてシングルマザーになりました。ピルの存在は知っていたけれど、高いしドラックストアなどで買えない(ピルの処方は医師の処方箋が必要)であるため、敬遠していたそうです。
また、性交渉のあと72時間以内に服用すれば8割の妊娠を阻止できるノルレボ錠の存在は知りませんでした。


「こういうのあると知ってたら飲んだ?」と聞いたら、「飲んだと思う。でも、病院に行くのは怖かったから、行かなくて結局飲まなかったかも」と彼女は答えました。

つまり、薬の存在を知っていても知らなくても、「病院」に行かなければならないのなら、彼女たちにその薬は届かないのです。

なぜ、病院は怖いのか。
「大人には絶対叱られる」「なんでそんなことになったのって怒られる」。
かつて支援した別な女性が言っていた言葉です。彼女もまた、望まない妊娠による中絶の経験がありました。

大人しかいない産婦人科では、子どもの姿は目立ちます。
ただでさえ、最近の産婦人科は不妊治療を併科している場所も多く、出産年齢自体も高年齢化しているために「大人」ばかりがいる場所になりつつあります。婦人科であればまだ入りやすいのかもしれませんが、いずれにしても制服を着て出入りしたり、制服を着るような年齢の少女たちが気軽に訪れることができるかと言ったら、おそらくそうではないでしょう。

だからこそ、「若者専用」のユースクリニックが必要なのです。
親には言えない悩みも相談できたり、性の正しい知識を教えてもらえる場所。保健室のような、性のシェルターになりうる場所がもっともっと必要なのではないでしょうか。
もちろん、正しい性教育を受ける機会を増加する(公教育で行う)ことも必要ですが、それだけでは望まない妊娠を100%予防できるわけではありません。

妊娠は本当に嬉しくも辛い時間を過ごします。
望んで妊娠してさえ、悪阻はあるし、体型は変化するし、ホルモンバランスも崩れます。そしてお産ともなれば、文字通り痛みの極地のような陣痛を経験しなければならない。
そこに適切な医師や看護師たちの介入がなければ、母子ともに死と紙一重の世界です。
だからこそ、望まない妊娠であれば防げた方がいいし、防げなかったのなら適切に堕胎するなり、産む選択をするならば母親がわが子の命を遺棄することだけは避けたい。

今はそのための具体的な方法を私は持っていませんが、そのためにできることを、手探りでも探したいな、と思います。


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