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レジャーシート

ひとりでいることは平気なはずなのに、涙が出そうになった。
保育園に通い初めの頃、みんながグループを作っていくのに、自分だけひとりでぽつんとレジャーシートに座っていた。

保育園に通うまで、ずっと一人で遊んでいた。
たまに姉や弟とも遊んだけど基本的にはひとりで積み木をしたり、トーマスを走らせるために線路をつなげたり、ブロックを組み立てるのが好きだった。

だから、「今日からあんたも保育園やで」と言われたときには、泣き叫んで、初日は一日中泣いて過ごしていたのを覚えている。

涙の向こう側で、ぼんやり砂場で遊んでいる人たちを見ていた。すでにご近所で知り合いの子たちが多く、そこには「内輪ノリ」というものがすでに形成されていた。それを察知してしまって、自分は仲間はずれだと勝手に判断してしまった。

それからしばらく経っても、なかなか馴染むことができなかった。

みかんの好きな男の子がいた。
いつもお弁当の時には、みかんを食べていた。
その子が初めて自分に「一緒にだべよーや」
と声をかけてくれたことを思い出す。

レジャーシートから地面の硬さが伝わってきて、それにも増して自分は緊張していた。
でも「一緒に」と声をかけてもらって、友達と一緒にご飯を食べながらだと、それほど気にならなかった。

楽しさよりもむしろ安心感が大きかった。
馴染めている。恥ずかしくないぞ。
いつもより美味しく感じるお弁当。

何故こんなことを今思い出すのだろうか。
在宅勤務のパソコンの横に茶碗が並ぶ一人暮らし。

SNSを覗くと金木犀の香りで思い出が蘇る人が沢山いるみたいだ。
この秋、自分のように孤独感が記憶の蓋を開けた人はどのくらいいただろうか。

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