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頭蓋骨の左側

大変恥ずかしい話がのだが、先日サッカーをしている時に転んで頭を打った。誰かと接触したわけでなく自分で勝手に転んだ。相手のカウンターに備えて、バックステップで自陣に下がろうとした時に足が滑ってもつれ、そのまま後頭部から倒れ込んだ。

「ミドルシュートのボールを止めたと思った」
地面と頭がぶつかって、そんな音が鳴ったらしい。

らしい。というのは本人である自分は頭をぶつけた瞬間意識が遠のいてしまい、その直後の記憶がないからだった。意識を失ったのは初めての経験で、よく"周りの声が遠くなる"などという言われ方をするが本当にそうだった。その時の自分も水の中に入ったみたいにみんなの声が遠くなり、意識を失うと言うよりは眠くて目が開けられなくなった感じで視界を失った。
意識はすぐに戻った。転んだ恥ずかしさからすぐに立ち上がって大丈夫だというアピールをしたかったのだが、足がふらついて思ように立ち上がれなかった。支えてもらい立ち上がると、ピッチからは退いてタイムキーパーをしていた。ずっとぼーっとしていたし、呂律が若干回らないこともあって、何か後遺症が出たらどうしようと思い怖くなる。そしてアドレナリンが引っ込むのと引き換えに、夜中どんどん痛みは増していった。

結局次の日病院で検査をしてもらうと脳に出血もなく、頚椎も無事ということで特に処置もなく経過観察となった。痛みは少しずつ和らいでいる。

少し時間が経つと後頭部の左側にたんこぶができていた。
その段になって「ああ、ここを打って気を失ったんだ」と患部を理解することができた。それまでは頭の内側が全体的に痛かったので、はっきりとどこを打ったのかはわかっていなかった。

偶然だが最近読んだ『スマホ脳』という本の中に、大昔人間の半数が10才までに亡くなっていた時代がある。その死因は別の人間に殺されること。という内容が書いてあった。そして人間の残虐性の証拠として、発見された多くの頭蓋骨の左側には激しい損傷があったらしい。右利きの人間に殴られるとそこに傷が生まれるという。

今回自分が怪我をしたのはまさにその位置だった。大昔からずっと致命傷になってきた箇所で、長い遺伝子の旅の中でもしかしたら頭蓋骨の左側は少し強化されているのかもしれない。不注意で運動不足のカッコ悪い自分は、その人間の殺し合いの歴史に今回幸運にも守ってもらったのかな。などと根拠のない妄想をしてみたりした。

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