怖くない話

夜中の1時を回った頃
そろそろ寝ようとベットに横になった
すると「ぽんっ、、、ぽんっ、、、」と
音が聴こえてきた

高く一定のリズムを刻むその音はまるで
木魚を叩いているような、、、そんな音に聞こえた、、、

しかし家の周辺に寺は無く
マンションと工場ばかり
こんな場所で誰が木魚なんて叩くというのだろうか、、、しかも、こんな夜中に、、、

ふとそんな疑念が頭に浮かぶと
怖くて睡眠どころでは無くなってしまった

この時僕はまだ、気付いていなかった
お風呂場の水道から水がタレ洗面器の上に落ちている音だという事を、、、
そう、蛇口の締めが甘かったのだ

もう一度言おう
僕はまだ水の音だと気づいていない

暗い部屋で寝ていると心が恐怖に支配されていく
とりあえず電気を付けよう
そして音楽でも聴いて気分を変えよう

しばらくたち、もう一度耳を凝らしてみる
しかし、まだあの木魚の音はなっているのであった
当たり前である、勝手に蛇口が閉まるわけはない

さっきまでは気付いていなかったが、遠いと思っていたその音は僕のすぐ近くでなっているのだ

というか、お風呂場でなっているのだ
反響もあいまって、なかなかの怖さを演出している

しかし、まさか自分の家でなっているとは気づかない

外の廊下で鳴っているのだろうと思っている
そして、完全に幽霊の仕業だとも思っている

具体的にいうと
青白い肌で白目をむいた坊主が木魚を鳴らしながら廊下を徘徊してると思っている。

怖すぎる

仕事的に想像力はある方だと自負している
が、その想像力がまさか自分に牙を向ける事があろうとは夢にも思ってはいなかった

そして、恐怖を煽るような奇跡が起こった
停電である、、、
これはマジで怖すぎる
なぜなら、さっきまで外にいた坊主が、部屋に入ってくるフラグが立ったのだから
スマフォのライトを付けて、恐怖を耐え忍ぶ
木魚の音が大きくなり近づいてくるのを感じた


そんなわけない、、、


水道は風呂場から動かない、、、

思い込みとは恐ろしいものである

しかし、一度考え出したらそう思ってしまうものだ


そして、坊主が部屋に入ってくる事はなく電気が付いた。

まだ油断は出来ない
音がなり止んだわけでは無い
相変わらずヤツが外にいる

だがもしこの音が木魚ではなく
別のモノが原因だとしたら、安心して寝れるのではないだろうか

僕は正体をつきとめるために立ち上がった

おそるおそる玄関に向かっていく

音がだんだん大きくなる

皆さんもお気づきだろう
風呂場は玄関を入ってすぐ右に設置された間取りでなのである

玄関まで来て初めて気づく、
外ではない、、、風呂場で音がなっているのだと、、、


パニックである


坊主が入ってきてしまったのだ


しかも、風呂場に

画としてはかなり攻めた演出だ
風呂場で坊主が木魚を叩き続けているのだから
コアなファンが多いインディーズパンクバンドのTシャツに描かれていそうな画である

しかしここまで来たら引く事はできない
まずは真っ暗な風呂場の電気を付けなければ

意を決してスイッチを押した

風呂場のすりガラスに真っ白の影が映し出される

タオルである

当然だ、毎日そこにかけている

そして、恐る恐る扉を開けると

そこには坊主はなどは居なく
ただ水が垂れているだけだった。

そして、時計を見ると時刻は2時を過ぎていた

人生でもっとも無駄な1時間である



しかし人生に無駄な事は何一つないと思い
多くの人にこの不思議な体験を伝えるべく
ここに書き記す事にした

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