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今週のTop Tier VCニュース!#29(2022/8/15週)

WeWork共同創業者Adam Neumannの新たなスタートアップ"Flow"が再びVC業界をざわつかせた1週間でした…
「事業開始前に$1Bの評価額で$350Mをa16zから調達!?」
今週はいくつか大型の資金調達案件がありましたが、株式のみでなくDebtも活用した資金調達手法がみられました。VCによるスタートアップの価値算定が厳しくなってきている影響だと考えられますが(Adam Neumannは別物)、創業者陣の株式持分比率の低下を避けつつ、当面の経営に必要な運転資金を確保する必要があるスタートアップにとっては、今後の資金調達環境が未だ不透明であるため慎重な資金計画の策定が求めらる状況が続いています。

今週の投資先ハイライト

■ 米国トラック運送業界を近代化するFinTech決済プラットフォーム"AtoB"がSeries Bで$155Mを調達

主な投資家

  • General Catalyst

  • Bloomberg Veta

概要

AtoBは、Elad GilとGeneral Catalystがリードし、Collaborative Fund, Contrary Capital, XYZ Venture Capital, Leadout Capitalが参加したSeries Bで株式およびDebtとCAC financingの合計で$155Mを調達しました。個人投資家としてEric Schmidt(元Google会長), AngelList創業者, DoorDash創業者, Coinvase創業者, Instacart CEOなども参加しています。 今回の投資により、AtoBの債券と株式の調達総額は$230Mに達しました。

AtoBの決済プラットフォームは、手数料無料のフリートカード、即時口座振替給与、銀行口座や貯蓄ツールへのアクセスなど、画期的な商品群をフリート社会に初めて提供します。

アメリカの車両金融システムは崩壊しています。トラック運転手や車両オーナーは、規制が不十分で搾取的な燃料カードに依存しています。燃料カードはネットワークが限られており、手数料も法外に高く、メンテナンスのための低コストの資金を利用することができません。トラック運送事業者全体の92%が6台以下、97%が20台以下のトラックを運行しており、これらの事業者の大半は小規模です。

AtoB独自の燃料分析システムは、業界が直面する2つの大きな課題である燃料の盗難と燃料効率向上の機会を発見し、同時にフリートが排出ガスを削減し、よりクリーンな燃料と電気自動車への移行をサポートします。

「AtoBは、イノベーションが必要な領域で、驚くほど大きなマーケットで事業を展開しています。運輸業界に特化した最新の物流・決済スタックを構築することは、グローバルなサプライチェーンを改善する上で解決すべき重要な課題です」と、General CatalystのマネージングパートナーであるHemat Taneja氏は述べています。


■ 世界初の膝用植込み型衝撃吸収材(ISA)を開発する"Moximed"がSeries Cで$40Mを調達

主な投資家

  • New Enterprise Associates (NEA)

概要

Moximedは、Advent Life Sciencesがリードし、New Enterprise Associates (NEA), Future Fund, Vertex Healthcareなどが参加したSeries Cで株式およびDebtの合計で$40Mを調達した。DebtはRunway Growth Capitalが提供。

変形性膝関節症(OA)患者の標準治療を改善することを使命とする医療機器企業であるMoximedは、軽度から中等度の変形性膝関節症の人々が膝関節を維持しながら活動的な生活を送ることを支援するために、臨床的に確立された疾患関節への荷重軽減の利点を活用してMISHA Knee Systemを設計しました。MISHA Knee Systemは、外来手術で植え込まれ、一部の患者では痛みの緩和、機能の改善、膝関節全置換術の必要性を遅らせる可能性が示されています。Moximedが最近完了したCalypsoal試験の結果は、2022年9月22日にボストンの整形外科サミット(OSET) で発表される予定です。

変形性関節症(OA)は、一般的な疾患で、米国では3200万人以上の成人が罹患しており、2040年までには7000万人が罹患すると予測されています。膝関節症は、関節の軟骨と半月板という天然の衝撃吸収材が、日々の活動から関節を保護できなくなることで発症し、慢性的な痛みや活動制限の原因となります。軽度から中等度の膝関節症の患者様の多くは、健康で働き盛りであり、多忙な日々を過ごされています。このような患者さんにとって、膝関節全置換術は末期症状に対する末期治療であるため、消極的な選択肢となっています。しかし、末期疾患のないOA患者様は、膝や活動レベル、生活の質を維持するための選択肢を求めています。

「変形性関節症(OA)を持つ社会人は、保存療法と最終的な人工関節置換術の間に位置する解決策を待ち望んでいました。Moximedは、MISHA Knee Systemによって膝関節症治療におけるこのギャップを埋める可能性があり、何百万人ものアメリカ人のための治療パラダイムを変えるMoximedの努力をさらに支援できることを嬉しく思います。」Advent Life Sciences社のGPであり医学博士のShahzad Malik氏は述べています


■ 2型糖尿病治療薬「Revita DMR」の開発を進める"Frackyl"がSeries Eで$55Mを調達

主な投資家

  • Bessemer Venture Partners

  • General Catalyst

  • True Ventures

  • GV

概要

Fractyl Laboratories Inc. (Fractly Health)は、新規投資家のTaiwania Capital Management Corporationがリードし、Bessemer Venture Partners, General Catalyst, True Ventures, GVなどが参加したSeries Eの1st closeで$55Mを調達した。

今回の資金調達で得た資金は、2型糖尿病(T2D)患者の治療を目的としたRevita DMR(十二指腸粘膜表面置換術)の重要な臨床試験であるRevita T2Diに充当される予定です。Revita T2Diは、血糖コントロールとインスリン必要量に対するFractlyのRevita DMR治療の効果を検証することを目的としています。本試験の主要評価項目は、術後24週目にインスリンを必要としない目標血糖コントロール(HbA1c 7%以下)を達成できた患者さんの割合で、Revita DMRと偽薬群を比較します。副次評価項目として、血糖値、肝機能、心血管系の各エンドポイントに対するRevita DMRの影響を評価します。

Revita DMR治療は、腸生物学における画期的な洞察を活用し、インスリン抵抗性を含む主要な代謝経路をリセットし、代謝性疾患を回復させることを目的としています。この治療法は、熱を利用して上部腸の粘膜(十二指腸粘膜)を再表面化する、低侵襲の外来内視鏡手術で、同日実施されます。

3大陸の20以上の施設で300人近くの患者が参加した臨床試験のデータから、Revitaによる1回の治療で、2型糖尿病と脂肪肝の両方に長期的な改善をもたらし、2型糖尿病患者がさらなる投薬量の増加を回避できることが実証されています。Revita DMRは、これまでの臨床試験において、長期的な有害事象がなく、安全性と忍容性が確認されています。

2016年4月、Revita DMRシステムは欧州連合(EU)においてCEマークを取得しました。2020年3月には、Revita DMRのCEマークラベルが、当初の経口薬でコントロール不良の2型糖尿病患者に対するラベルから、T2D患者に対するインスリン離脱、T2D患者におけるNAFLD/NASHの改善、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の患者に対するインスリン感受性の改善などに拡張されました。米国では、Revitaは米国食品医薬品局(FDA)により治験薬としてのみ承認されています。その他の地域では、Revita DMRシステムは治験用として使用できる可能性があります。


■ リモート・コーディング・スクールの"Microverse"がSeries Aで$4Mを追加調達

主な投資家

  • General Catalyst

  • Northzone Ventures

概要

Microverseは、$12.5Mを調達したSeries Aの追加調達ラウンドで、Northzone, General Catalyst, All Iron Venturesに加えて新規投資家としてTrue Equityから新たに$4Mを調達し、評価額は2倍になりました。

バルセロナに拠点を置くMicroverseは、世界中の生徒が遠隔地での分散型授業で成功できるよう支援するコーディングスクールで、学生は授業料を前払いすることなく、就職が決まってから費用を返済するという所得分配契約(Income share agreement)を各国で運用している世界で唯一のスクールです。

多くのコーディング・スクールとは異なり、MicroverseはPeer-to-Peerの学習モデルを採用しており、学生は「メンター」と呼ばれるコースでさらに進んだ先輩から学ぶことになります。

同社が2021年6月にSeries Aを調達した際、Microverse創業者は本モデルによって専任の教師を雇う必要がないため、コースがスケーラブルになると主張しましたが、品質管理の問題が生じる可能性があることは認めています。

Microverseは、途上国の学生を対象にしたコースを提供しており、90%の学生が修了後6ヶ月以内にリモートで就職し、Deloitte、HSBC、Microsoftといった企業で仕事をしているといいます。また、同社によると、昨年は、本プログラムへの応募者が毎月1万人から3万人に増加したということです。

世界的な技術者不足を背景に、「オフショア」開発者を雇用する企業は今後1年間で70%増加するとされています。

今後、規模を拡大する中で、ピアツーピアの学習モデルの質を維持できるかどうかが大きな課題となりそうです。


■ AIゲームとEsportsの"Regression Games"がSeedで$4.2Mを調達

主な投資家

  • New Enterprise Associates(NEA)

  • Andressen Horowitz(a16z)

概要

Regression Gamesは、New Enterprise Associates(NEA)がリードし、Andreesen Horowitz(a16z), BBQ Capital, Roosh Venturesおよび様々なエンジェル投資家が参加したSeedで$4.2Mを調達した。

AIゲームとesportsを手がけるRegression Gamesは、AIゲームとesportsを誰もがアクセスでき、楽しめるようにするためのプラットフォームとエコシステムを構築しています。このプラットフォームでは、プレイヤーはキャラクターを制御するコードやAIを書き、リアルタイムで戦略をデバッグし、トーナメントで賞金やリーダーボードでの上位を競い、友人と協力して最高のボットを作ることができるようになります。Regression Gamesのユーザーは、コントローラーやマウスとキーボードを利用する従来のゲームプレイではなく、アルゴリズムや機械学習モデルをプログラムして他者と戦います。このAIプラットフォームは、既存のゲームやRegression Gamesが開発したオリジナルゲームの両方と統合できるようにする予定です。世界中で32億人以上のゲーマーがおり、米国の大学では175のesportプログラムがあり、米国の高校の47%以上がコンピューターサイエンスを教えていることから、このゲームとコーディングの交差点は今後数年間で成長することが予想されます。2028年までに、ビデオゲーム産業は$435B以上の価値があると推定され、また2030年までに4500万人のコーダーが生まれると推定されています。

同社は、MITの卒業生であり、AIを活用した自動化企業Instabaseの初期のエンジニアであるAaron Vontell氏によって設立された。Aaronは過去数年間、大規模な機械学習モデルのパワーを活用するために、非技術者向けのローコード・ノーコードシステムに取り組んできました。Instabase以前は、MITで毎年開催されるAIゲームコンテストBattlecodeの開発に携わりました。このコンテストでは、世界中の大学生が仮想ボットを作り、ビデオゲームで競い合います。

Regression Gamesは、今後数ヶ月の間に、AIプラットフォームでプレイヤーとのプライベートアルファテストとトーナメントを開催する予定です。

■ アニメーション映画会社の"Spire Animation Studios"が資金調達(金額非開示)

主な投資家

  • New Enterprise Associates(NEA)

  • Temasek

  • Epic Games

概要

Spire Animation Studiosは、シンガポールの投資会社Temasekとと投資会社Ericsenzが参加した新たな資金調達ラウンドを終了したことを発表した。同スタジオは、本ラウンドで調達した金額を公表していませんが、資金調達総額は、今回の資金調達ラウンドを経て、$40M以上に達しました。

アニメーション映画会社のSpire Animation Studiosは、メタバースの可能性を秘めた新しい種類のアニメーションを制作することを目的としています。同スタジオはまた、インタラクティブなプラットフォーム向けに没入型の世界をデザインすることも計画しています。既存のストーリーをベースに、ユーザーが真正面から関与できるようにしたいと考えています。

このアニメーションスタジオは今年初め、Epic Gamesがリードし、Connect Venturesが参加した資金調達ラウンドで$20Mを調達しました。Connect Venturesは、Seed, Series AのようなEarly-stage向けに投資する目的でNew Enterprise Associates(NEA)とCreative Artists Agency(CAA)によって設立されたVCです。

Epic Gamesとの提携により、同社はEpicのゲーム制作ソフトウェアであるUnreal Engineにフルアクセスできるようになりました。Epicとの提携は、同社が高品質のアニメーションを制作すると同時に、メタバース向けの世界と経験を構築するのにも役立ちます。

Spire Animation Studiosは、Brad Lewis (Ratatouille; How to Train Your Dragon: The Hidden World) と業界起業家のP.J. Gunsagarによって共同設立されました。現在、90人以上のスタッフがメタバースに対応した長編アニメーションの制作に取り組んでいます。


■ 欧州のERPソフトウェアリーダーの"Forterro"がBatteryから大型資金調達

主な投資家

  • Battery Ventures

  • Partners Group

概要

Battery Venturesが産業用中堅企業向けのERPソフトウェアを提供する欧州のプロバイダーであるForterroへの再投資を発表し、Forterroの重要な少数株主となりました。Batteryは、Forterroを欧州の多国籍ソフトウェアプロバイダーに育て上げ、その後、大手プライベートマーケット会社であるPartner Groupに今年初めに€1Bで売却した経緯があります。

Batteryは、Partners Group所有下でForterroが成長するためのビジョンを追求する中で、引き続きその規模拡大の支援に積極的に関与していく予定です。

Batteryは、10年間の経営期間中、Forterroの経営陣と協力し、同社を中小規模の製造業や流通業向けの欧州ERP分野で多国籍のリーダー企業に育て上げました。Batteryのオーナーシップの下、Forterroはフランス、ドイツ、ポーランド、スウェーデン、スイス、英国を含む6カ国で14件の買収を完了し、年間経常収益を10倍以上に伸ばしました。


投資環境

● 2022Q2: Global Private Markets Fundraising Report

  • 上半期の民間資金調達額は$639B(約86兆円)で、ほぼ昨年の数字に匹敵するペースでした

  • PEによる資金調達額は前四半期から46%増加し、$137Bに達したが、エグジット環境の悪化によりLPへの資金還流が減少し、今後のコミットメントに支障をきたす可能性があります

  • 不透明なエグジット環境とポートフォリオの時価評価により、VCファンドのリターンも圧迫されており、年内の新規資金調達は停滞する可能性があります

  • 実物資産は$44Bを超え、前四半期より若干減少しましたが、2022年には2021年の記録だけでなく、2008年までの年間合計を上回る可能性があります

  • Dry Powerは減少傾向にあり、6月30日現在で2020年の最高値から13%減の$3,209B(約430兆円)となっており、この傾向はプライベートエクイティでより顕著に表れてます(VCのDry Powerは$562.4B)


● 2022Q2: European VC Valuations Report

  • 上場ハイテク企業の株価下落や暗い市場見通しにもかかわらず、欧州のベンチャー企業の評価額は上半期に昨年を上回るペースで推移しています

  • 欧州のVCディールメーキングは、上半期には無数の逆風にもかかわらず好調を維持し、評価額の上昇を支えてきましたが、下半期は景気後退の影響を十分に受けて、欧州スタートアップの評価額も低下する可能性があります

  • 欧州のEarly-Stageの評価額は、公開市場のボラティリティから比較的隔離されており、現在、2021年比で34.1%の上昇を記録しています

  • ダウンラウンドの数はわずかに増加し、上半期に完了したラウンドの15.4%となりました

  • 欧州のユニコーンの総評価額合計は34.8%増加しましたが、これは主に第1四半期における強力なディールメーキングによるものです

  • IPO市場の低迷により、VCが出資しているスタートアップの上場時企業評価額の中央値は2021年から56.8%減少しました

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