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今週のTop Tier VCニュース!#72(2023/7/3週)

7月4日(火)がアメリカの独立記念日(祝日)であったためか、今週はVCによる投資活動はあまり活発ではなかったようです。情報ソースの一つとして利用しているStrictly VCのメーリングリスト(新規投資案件リストの掲載あり)が7/1〜7/17(2週間強)で配信停止になっているため、投資案件の情報をうまくキャッチアップできていないというのもあるかもしれませんが(無料とはいえ毎日配信を2週間休みにするって 笑)
今週ピックアップした投資案件はいずれもGenerative AI/LLMのど真ん中ではありませんが、Health Tech(身体スキャナ)やEdTech(学習アプリ)の領域でも「AIを活用したソリューションの向上/差別化」が謳い文句の一つとなっており、AIを活用することが必須の時代となっていることが感じれれます。
日本の大企業のうち何社がAIを自社サービスや社内システムで"本格的"に活用しているのでしょう? 日本企業がこのようなスタートアップとオープンイノベーションによる連携に取り組むことで、日本でのAI活用が更に推進されるのではないでしょうか。



今週の投資先ハイライト

AIを搭載した身体スキャナーを開発する"Neko Health"がSeries Aで€60Mを調達

主な投資家

  • General Catalyst

  • Atomico

概要

Neko Healthは、Lakestarがリードし、AtomicoとGeneral Catalystが参加したSeries Aで€60M($65M)を調達した。

スウェーデンのストックホルムに本社を置き、AIを搭載した身体スキャナーと医師・技術者チームを売りにするNeko Health(日本語の「猫」にちなんで命名された)は、一般的な病気を検出できるAIに裏打ちされた全身スキャナーを構築する目的で、Spotifyの共同創業者兼CEOのDaniel Ekによって2018年に設立されました。同社は2月にストックホルムにクリニックを開設し、ステルスモードから脱却しました。

「医療費は暴騰しています。私たちは、予防医療がこの傾向を逆転させる鍵になると信じています。今日の医師には、予防に専念するための十分な時間や資源がありません。そのため、多くの健康問題が深刻になるまで気づかれず、多くの痛みを引き起こし、医療制度に大きな負担をかけているのです。」と同社のCEOは説明しています。

スキャン撮影の費用は1回€250($271)であり、同社によれば、サービス開始と同時に1,000回以上のスキャンを実施するほどの人気となりました。顧客の約80%が、12ヶ月後のフォローアップ検査の料金を前払いしています。

同社によれば、スキャンにかかる時間は約10分で、70個以上のセンサーを使い、5,000万点のデータポイントと15ギガバイト以上のデータを数分で収集し、極めて小さな皮膚の変化を検出できるといいます。その後、顧客は医師によるコンサルテーションを受け、即座に結果とアドバイスを受けることができます。

「当社には看護師、医師、専門家がいます。皮膚画像を確認するためだけに皮膚科医を雇っています。医師が常駐しており、何かあれば適格な医学的判断を下すことができます」と述べています。

この技術は、予防措置の一環として、病気の早期発見に使われることを意図しています。同社によると、このシステムは高度なAIを使用しており、スキャナーのセンサーからのデータに基づいて基礎疾患を検出するのに役立つといいます。このシステムが使用するアルゴリズムは、皮膚の状態、心血管疾患のリスク、心臓の状態、代謝の問題、糖尿病などの問題を予測するのにも役立ちます。

Neko Healthの創業者たちは、AIアルゴリズムや、医師が推奨するための予測にどのような見識を持つかについて、多くの詳細を語りませんでした。同社によると、現在、システムとその基礎となるシステムを改善するために4つの臨床研究が行われているといいます。

現在、この身体スキャン技術はスウェーデンの1カ所でしか利用できないが、今回の資金調達により、Neko Healthはヨーロッパ各地にクリニックを開設する意向です。拡大中の顧客のアクセスを保証するため、キャンセル待ちリストが用意されています。



Generative AIを活用した学習アプリを開発するEdTechの"Kinnu"がSeedで$6.5Mを調達

主な投資家

  • Spark Capital

  • LocalGlobe

概要

Kinnuは、LocalGlobeとCavalry Venturesがリードし、Spark Capital、Jigsaw、およびエンジェル投資家が参加したSeedで$6.5Mを調達した。

Generative AIを使用して成人学習者向けコンテンツを作成する教育テクノロジーのKinnuは、2021年に設立されロンドンを拠点としています。同社のミッションは、すべての人に何でも学べる力を与えることです。そのために、Generative AIを搭載した学習エンジンを開発し、教育コンテンツから資産価値の集中をリバランスすることを目指しています。

その代わりに、学習者が知識を習得し、保持できるようにするテクノロジーに重点を置いています。このテクノロジーは、AI以降の世界における教育は、何を、どのように、そしてなぜ学ぶのかという問いをユーザーに突きつけるという考えに基づいています。Kinnuは、従来の画一的なカリキュラムはすぐに過去のものになると考えています。

Kinnuのプラットフォームは、コンテンツ作成への3つのアプローチの1つとしてGenerative AIを使用しています。まず、人間の専門家がコースの概要や経路を作成します。それをOpenAIのChatGPTと同じようなKinnuの大規模な言語モデルに入力し、各コースの主旨を特定し、関連する復習問題を多肢選択式など様々な形式で作成します。Kinnuは、これらのAIを活用した教育コースをモバイル・アプリケーションから利用できるようにします。

Kinnuの共同創業者で最高経営責任者は、知識習得のペースを加速させることに焦点を当てたAIを活用した学習には大きなチャンスがあると考えており、次の通りコメントしています。

「10年前、オンライン学習がブームになったのは、コンテンツへのアクセスが民主化されたからです。次のフロンティアは、量子力学やチョーサーからイディオムやソフトスキルまで、学習者自身のペースや能力に合わせた学習方法のメカニズムへのアクセスを民主化することです。これが私たちをワクワクさせるのです」



投資環境

米国の新興VCによる資金調達額は過去7年で最低レベル

  • 米国の新興ベンチャーキャピタルの年間資金調達額が7年ぶりに$20Bを下回る勢いで低迷しています

  • スタートアップのエコシステムにとって、新興ベンチャーキャピタルによる資金調達の減少は、大都市圏以外でのスタートアップによる資金調達が減少し、革新的な企業を求めるニッチ投資家が減少することを意味します

  • 新興ベンチャーキャピタルは、経験豊富な大手ベンチャーキャピタルと連携することスタートアップのスカウティングを支援/補助する役割があることでも知られているため、この傾向は結果的に、新興ベンチャーファンドによる資金調達の苦境が続けば、VCエコシステムが縮小し、イノベーションとディールメイキングが制限されるリスクがあります

  • 新興ベンチャーキャピタルのファンドサイズは、2023年には平均$41.7Mに減少しており、2022年の半分以下のサイズとなっています



2023年上半期のユニコーン誕生数は2017上半期以来の低水準

  • 2023年上半期のユニコーンの誕生数はわずか44社で、2017年上半期以来の低水準となった(アクティブなユニコーン数は1,323社)

  • ITが王者で、2023年に誕生するユニコーン全体の約41%を占める

  • 注目すべき例としては、ChatGPTを運営するOpenAIや、プログラマーがAIと協力してソフトウェアを構築できるReplitなどが挙げられる

  • 2023年に誕生するユニコーンの半数近くは北米に拠点を置いており、米国だけで20社が誕生している。アジアは14社で2位



米国の女性創業者スタートアップへのVC資金提供は減少の一途

  • 2021年と2022年前半は、女性創業者のスタートアップに対する米国VCの投資にとって異常値であったことが、今年に入って半年が経過し、次第に明らかになってきている(筆者注:全体的な傾向も同じなので、女性創業者スタートアップに限定した話ではない)

  • 少なくとも一人の女性創業者を擁するスタートアップは、2023年に1,537件のディールで$13.4Bを調達したが、これは2020年下半期以来の低いディール額であり、2018年下半期以来、最も少ないディール数となった

  • 注目すべき案件としては、AI研究企業Anthropicの$450MのSeries C、遺伝子編集スタートアップMetagenomiの$275MのSeries Bなどがある

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