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高配当株の落とし穴

高配当株、初心者やわたしのようなリタイア近い人、リタイアした人は大好きですよね。一年に2回とか4回とか決まった時期にチャリンチャリンとお金が振り込まれるのは“生活費”として助かる、という感覚もあるのでしょう。しかしながら高配当株を保有し続け、その配当金を長期にわたって享受することを戦略にかかげる初心者が陥りやすいパターンがあります。

株価がズルズルと下げ続けてしまう状況で損切りできないケースです。配当金が年5%もらえる銘柄を100で買ったとしましょう(とりあえず税金は無視します)。これがあれよあれよという間に70まで下がってしまいました。「株価は下がってしまったけど毎年配当金がもらえるからいい。それに6年経てば損益トントン(5×6年+70=100)になるし」と自らを正当化します。

6年は長すぎますし、もっとクリティカルな問題として株価が下がっているわけですから減配、つまり配当金そのものが減らされる可能性大です。そうなったら当初の戦略も吹っ飛んでしまいます。株価も下がるわ配当金も減るわでもはや最悪の状態です。直近ではJTやキャノン、メガバンク、総合商社株が当てはまります。キャノンはついに減配もしました。

反対にたとえば最初に株価が10%下がったら損切りしようと決めておけば損失は10で済むのです。それにその間に配当金が一度でも入金されれば損失は5でとどまります。そしてここが一番大切ですが損切りしたことによって資金が戻り新たな投資チャンスが生まれるのです。配当金があるからいいやと塩漬けを決め込んでいる間に損切りしたら生まれたであろうチャンスをどんどん失っていくのです。上の例で言うと損切りすれば、6年間の投資チャンスが生まれるということになります。リタイアした人はともかく若い人が絶対やってはいけないことです。

高配当銘柄が好きな方が陥る罠としてもう一つ。無理してタコ足配当する銘柄を買ってしまうことです。タコは自分の足を食べてしまうことがあります。それになぞらえて業績が伸びていないのに、ということは本当は配当の原資がないのに配当金を出す、ということが行われる銘柄のことをいいます。

数年前にグローバル・ソブリン・オープン、通称グロソブという投資信託が爆発的に売れました。一時期は6兆円もの資金を集める人気商品でした。いわゆる「毎月分配型投資信託」といわれるもので文字通り毎月チャリンチャリンとお小遣いが入るという感覚が主に高齢者の心を鷲掴みにしたのです。このグロソブも一時期はタコ足配当に陥っているのです。このような銘柄の中には突然解散となり、戻ってくるお金も元本を大きく下回る、というものもあります。投資する前はよく商品の内容を理解し、投資後も監視を続け、当初の目論見と違ったらすぐに売却する、くらいのスタンスで臨みたいものです。 

一方、高配当株の理想的な姿とはどんなものでしょう。以前の記事で香港株を紹介しましたが、香港の代表的なREIT銘柄であるLINK REITがその理想です。2005年に初値が11.8香港ドルでした。現在は70香港ドルくらいまで成長しています。ざっくり6倍ですね。さらに分配金の利回りは4~6%あります。2020年までLINK REITをもっていたらどれだけの利益になったか計算してみましょう。株価は6倍。分配金は小さく見積もり、4%だっとします。最初に100投資していたとすると、分配金だけで280を超えます(株価が単純に右肩上がりだったと仮定)。株価の上昇と合わせて15年で10倍近くになったことになります。老後の年金はこういう銘柄でまわしたいものです。

かくいうわたしも実はJT株をNISAで500株保有しています。リーマンショック以降、高配当株の雄として右肩上がりで、一時は5,000円近くまで株価は上がりました。しかしながらその後下落を続け、現在は2,000円くらいになっています。わたしは2,300円くらいのときに買い始め、最近も2,100円くらいで買い増ししました。そうなんです、上で偉そうに述べたこと、できていないのです。「ピークの半分の株価まで落ちたのだから下値は堅いだろう」という安易な判断の結果です。

それでも今は7%近くの配当利回りです。155円×500株≒75,000円が受け取れます。株主優待で食品ももらえます。目先の配当に目がくらんだ状態です。株価が1,800円くらいまで下がったときに損切りできるか、偉そうに言った自分が試されます。

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