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映画『ナワリヌイ』多くの人に今観てもらいたいと心から思う

多くの人にこの映画を観てもらいたい。この映画を観終わった時、真っ先にそう思った。

「もし殺されるとしたら、ロシアの人々にどんなメッセージを残す?」とナワリヌイ氏が聞かれるシーンからこの映画は始まる。悔しくもこの言葉は、今の私たちにとってとても大きな意味を持ってしまった。

彼は2020年にロシア政府の何者かから毒を混入されて殺されそうになった。
それは彼がプーチン政権を批判したためだろう。
彼は何度も警察に取り押さえられた。それでも彼は国民の前に立ち続けた。
彼は毒殺未遂の後、ロシアに戻ろうとした。周りの人が止めても戻るという意志は曲げなかった。
彼は他者のために自分の意志を曲げない人であった。だからこそ彼は亡くなってしまったのかもしれない。
この現実を目の当たりにした私たちは、何を感じるだろうか。そこにこの先の未来が懸かっているように思う。

また、作中で印象的なシーンは彼が家族と過ごすシーンである。緊張感のあるシーンが続く中で、家族のシーンはとても暖かく感じる。それは、彼がごく一般的な父親に見えるからだ。ロバやポニーに餌をあげに行くシーン、娘にTikTokを撮ってもらっているシーン、家族写真、ミッキーのスーツケースなどが特に印象的である。彼は特別な存在ではなく、私たちと同じ人間なんだということが伝えられていたように思う。
だからこそ、作中の彼の言葉がより説得力を持つ。

そして、ロシア政府の言論統制の残虐さも痛感する。「ナワリヌイ」という言葉自体がメディアで報じられず、反プーチン派の活動者が逮捕されるシーンは作中で多く登場する。また、ナワリヌイ氏はドラッグをしていた、アメリカのスパイであったという虚偽の情報がメディアで報じられる。ロシア政府は意図的にメディアをコントロールしていると言えるだろう。そのため、政府の実状を国民は認識していない人も多いと考えられる。
本作を視聴して、本当の意味での「民主主義」を実現するためには「言論の自由」と「知る権利」、「選挙権」が正しく機能する必要があると再認識した。「言論の自由」と「知る権利」により、国民が実状と多種多様な意見を知る。そのことで自分自身の意見を深める。「選挙権」により、自分の意見を反映した政党もしくは議員に投票し社会を変える。この3つが合わさった時、社会がより良く変わっていくように思った。
それと同時に、日本は果たしてこの3つの権利を本当に持てていると言えるのだろうか。そして、私たち1人1人がその権利を行使できているのだろうか。今一度私たちは考えなければならない。

最後に、本作から映画の強さも感じた。彼が過去に何をしていたのか、ロシア国内でどういう扱いをされていたのかは記事などで認識していた。しかし、この映画を視聴し、ロシア国内で起こっている問題の深刻さを痛感した。映像であることで、私の中での深刻さの程度は大きく変わった。
現在もロシア政府の体制は大きく変わっておらず、今年の3月に開催される大統領選挙を受けても大きく変わらないだろう。ただ、この映画を観ることでその深刻さは伝わると思う。
世界で何が起きているのかを注視するためにも、この映画は多くの人に観られるべきだと思う。

そして、この映画から世界が大きく変わっていくことを願いたい。それは彼の願いでもあったと思う。

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