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「島根県信用保証協会の経営支援は凄い」で終わらないためにどうするか

先日、下記のセミナーに参加してきました。
[東京&WEB]中小企業の社長はどんな支援を求めているのか? | セミナーのご案内 | CRC 企業再建・承継コンサルタント協同組合 経済産業省認可団体

目当ては、島根県信用保証協会の小野拳さんの講演でした。
島根県信用保証協会は、全国の信用保証協会の中でも、踏み込んだ経営支援をしているという評判が高かったので、生で聞ける(しかも無料)ということで大変ありがたかったです。

信用保証協会の役割は、ざっくりした説明としては「中小企業が金融機関から借入が円滑にできない場合に、保証をすることで信用力を補う」というものです。中小企業金融は高リスクであるため、プロパー融資では金利とコスト(貸倒リスクと審査工数)が見合わなくなったこともあり、金融機関は最初に保証協会付融資を検討する、というケースが少なくありません。

信用保証協会側も、書面と保証を希望する金融機関からの情報で審査をすることが多く、中小企業と直接相対することは少ないのが平均的なイメージです。銀行は保証協会に危ないと知りつつも案件を回す、ということも少なくありません。

当然、保証した債権が焦げ付いた際には信用保証協会が責任を負いますから、金融機関にもプロパーを出せ、とか金額はココまでだ、という話になります。

責任をなすり合っているうちに、中小企業がいつの間にか置き去りにされてしまいます。理想論ではありますが、借り手の会社にとって最もよい資金調達をする、というのが本来の金融であるべきです。

島根県信用保証協会の場合は、全く違うスタイルを採っています。
担当者が直接、中小企業の現場に行き、経営者や経理担当と話し、経営課題の解決を図っていきます。経営改善計画の策定サポートや、外部専門家と連携した伴走支援まで行っています。

改善の見込みがある時点で資金を実行してしまう(小野さんは「打つ(撃つ?)」と仰っていました)というのも、聞いたことのない支援方法でした。

これらだけでも驚きですが、担当者の方々を早期に戦力化していること、組織として経営支援を後押ししていることが、島根県信用保証協会の取組みの最も凄いところだと考えます。

法人向けの融資や経営支援というのは、非常に奥が深いもので、私の勤務先では、とりあえず一人前になるためにはやはり3年、複雑な案件を捌くには10年近くの経験が必要と言われています。

さらに、経営支援というのは、金融機関では評価されにくいものです。手間がかかる割に融資を伸ばすことに直結しないために、数字に拘る役席(管理職のこと)が居ると、どんどん疎かになります。私の場合は、政府系金融機関に居るのに経営支援をするな、と言われることには全く納得がいかず、評価をある意味無視して仕事をしていましたが、全員にそんな思想は求めようもありません。

難しいのに、やっても評価されないことを率先してやる人はやはり少ないため、金融機関には経営支援ノウハウの蓄積が十分ではありません。一方で、島根県信用保証協会の場合は、紹介される成功事例の担当者が、1年2カ月目、2年2カ月目と若い!私は1年目から2年目にかけて、人間扱いされた記憶がありません。

島根県信用保証協会では、中小企業診断士の養成課程に毎年派遣する等、人材育成の制度も整っているようですが、担当者に挑戦させる・担当者を育成する「風土」があることが、最大の強みであるということが理解できました。

私も個人としては、島根県信用保証協会に劣らない、相当な経営改善の事例を蓄積しているという自負があります。ただ、私は組織を動かすことはできていません。でも、島根県信用保証協会でできるのであれば「我々でもできる」はずなのです。「あそこは(ウチとは違って)すごい」ではなく、「あそこは(ウチがやりたいことを先にやっていて)すごい」という気持ちで事例を研究することが第一歩であると感じました。

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