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『おかえりモネ』 楽曲解説 3


3枚目のテーマは、「山」。


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1.   あらたま(歌:太田美帆、小松陽子、根本理恵、森ゆに)
Aratama

坂本美雨さんが歌ってくれた『天と手』にコーラスをつけていただいたのですが、そのコーラス部分のみを切り取って曲にしました。
美雨さんの歌声を見守るように自由に歌っていただきました。


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2.   生にゆだねる
Believe in Life

『環』のピアノ・バージョンは幾つかあるのですが、そのひとつです。
ピアノは弾くたびに変わってしまうので、録音していないと何を弾いたか覚えていません。その時その時のいただきものです。

百音があたらしいことを学んで、体験して、少しずつ目覚めていくイメージ。


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3.   駆ける
Kakeru

タイトル通り、若い力が駆け出していく衝動。
ケルトっぽい曲です。

ヴァイオリンがとにかく多重録音で、難しい旋律の連続なのですが、押鐘貴之さんが何度も挑戦して弾き切ってくださいました。駆けてます。



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4.   みやしろ
Miyashiro

最初は弦楽器の優雅な曲でした。城の主人感。
脚本だけを頼りに、サヤカさんの暮らしを想像して作ったのですが、徐々に家の資料が届きだして、ちょっと違ったなと…。

しばらくボツになっていたのですが、おじいちゃんの龍己さんの映像が届いて、金管で演奏すれば漁師っぽい曲になるかもと復活しました。

龍己さんはチャーミングな優しさとユーモアがあって、とにかくかっこいいです。

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5.   いろせ
Irose

マリンバの曲です。
百音が、山の暮らしに馴染んでいく様子や、人との豊かな交わりを優しく包み込むイメージです。
瑞々しい初夏の雰囲気もあります。

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6.   とてもすてき
How Nice

特に頼まれていたお題ではありませんが、嬉しい気持ちの曲を作ってみました。
いろいろな角度から曲を作りながら、百音という人を描こうとしていました。
役者さんが演じるのとも違うと思いますが、こうして音楽を作るのも、役を演じているようなものかもと感じます。役に命を吹き込んでいくような。

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7.   山と空のあわい
Harmony between Mountain and Sky

登米編は、空と山が気持ちいいシーンが多かったので、外のシーンに使えるような曲を作りました。
仮タイトルは「キッカケ」。
いわゆる状況曲なのですが、普段はもう少し複雑な意味合いを考えて曲を作るので、とても楽しかったです。
お父さんの耕治が川沿いを歩いているシーンを見ながら作ったのですが、いかにも持て余している感じで、人にも景色にも余白があって、いいなあと。

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8.   あめはれわたり
Sunny Rain

この曲は、かなり初期にできた曲です。
『青空うたえば』のマンドリン・バージョン。
登米の皆さんの、あの楽しい感じをそのまま。
キツツキやリスなどの小動物が、トコトットット。

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9.   楽
Raku

登米の音楽をどうするか探りながらつくった曲です。日本の田舎を表現するのにこれまで様々な音楽が使われてきましたが、モネの世界には、中間的な音楽が合うのではと、日本を外から見たような少しオリエンタルな雰囲気になりました。


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10.   元気マーチ
Genki March

仙台のJazzフェスティバルの話を聞かせてもらったからか、宮城には楽しい音楽が溢れているイメージがありました。ブラスバンドのみなさんが演奏しながら街を練り歩いている感じです。

登米の元気さは脚本からも十分に伝わってきました。

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11.   風乗り
Wind Rider

仮タイトルは「あすなろ ライト」。
『あすなろ』の軽やかな日常バージョンです。

中学生の頃、押入れに父のガットギターを見つけて、ちょこちょこ練習してみましたが、うまく弾けずピアノに逃げてました。
今でもきちんと弾けませんが、久しぶりに触ってみると、こういう曲になりました。

岡田ピローさんが弾き直してくれ、とても軽快な曲になりました。

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12.   空いっぱいに泳ぐ雲(歌:大野颯太,  種田につこ)
Swimming Clouds in the Whole Sky

ドラマで、どの曲がどのように使われるかは、僕には全く知らされません。
どの曲もいい使われ方してるなあと喜んでいたのですが、この曲が流れた時は心底びっくりしました。

百音と菅波先生の、ここぞというシーンに、なぜかよく使われています。
そういう曲じゃないぞ〜、とドラマで流れるたびに思っていましたが、何度目かですっかりなれました。
はい、これは彼らの曲です。

3拍子の曲で、パーカッションにインドのタブラを使っています。
そこに子どもたちがよくわからない言葉を歌っています。
変わってるけど、だんだん馴染んでいく、絶妙な組み合わせ、うん、やはり百音と菅波の曲です。

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13.   水の精
Water Spirit

仮タイトルは「研究」。

妹の未知が一人こもって牡蠣の研究している姿をイメージして奏でました。

このドラマには自然をよく観察する人がたくさん登場します。
自然と共に生きている人たち。

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14.   海霧
Sea Fog

ドラマ序盤、新次が登場するシーンに合わせて奏でました。
いつまでも晴れない海の霧のように、厚く覆いかぶさった拭えない心。


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15.   のさり
Nosari

次の『えにし』という曲のチェロ・バージョン。

仮タイトルは「役目」。

それぞれの人が、それぞれの役目を背負って生きています。
別の生き方もあったかもしれませんが、運命なのか、自分で決めたのか、誰かに決められたのか。
役目が人生の足かせになることもありますが、人をよりよく生かしてもいきます。

『のさり』という言葉は、熊本の天草地方の方言で、「全ての境遇は、天からの授かりもの」。

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16.   えにし
Enishi

サヤカさんが、先祖から引き継いだ山の主であることを全うしようとしている生き方を自分ごととして奏でてみました。

このドラマでは、何かを先祖から引き継ぐというのはどういうことなのかが、いろんな側面から描かれています。

僕の実家は寺で、いまは祖父が住職なのですが、この先、僕が住職をする人生もあるのだろうかと思いが過ぎることがあります。

もし僕が寺を継いでいたら本気でやっていることを、いま音楽でやっていると思って生きています。


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17.   幸福な呼吸
Blissful Breath

登場人物のそれぞれが持っている表の音楽はだいぶ揃ってきたので、ちょっとした裏の表情を描こうとしていました。
物語から離れたところで、ほっとした日常。

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18. うたたね
Utatane

百音と菅波の長いバスの旅を見ながら作った曲です。
ドラマでは別の曲が使われました。

菅波の独特の雰囲気をどうやって音で表そうか、ただ不思議な曲を作るのも違うなと考えた末、たどり着いたのが、インドでした。
賑やかなインドではなく、昔ながらの田舎のインド。

古いインド映画が好きで時々観るのですが、懐かしくて素朴な音の世界を描こうと思いました。
ここでもリズムはタブラを使っています。

僕なりの初々しい百音と菅波の音楽です。

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19.   蛍雪
Keisetsu

『蛍雪』とは、蛍の明かりや雪の明かりで勉学に励むこと。

ピアノのみだった『満ち欠けるわたし』の合奏バージョンで、アレンジは足本憲治さんにお願いしました。

百音と菅波先生が毎日勉強しているイメージです。

大人になっても、時を忘れて何かを学ぶのはとても楽しいです。

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20.   貝合わせ
Kai Awase

お題に「二重奏」と書かれていて、そういえば、二重奏を意識して作ったことはないなと、はじめて挑戦してみました。

ヴァイオリンとクラリネットを選んでみました。

ふたつの楽器、ふたつの旋律で、時にリードしたり、支えたり、絡みあったり。

副旋律が、ただの支えにならないように、むしろ副旋律こそ表情豊かに物語るように心がけました。


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21.   海から山への贈りもの
Gift for the Mountain from The Sea 

坂本圭さんのオカリナが気持ちいいです。

仮タイトルは「優しさと孤独 深呼吸」。

山の空気に包まれて、深く深く息をする。

僕も山に住んでいますが、生活している里と、普段人が入らない山には、境界線があります。
山に入っていくと、やはり空気がまったく変わります。
頭であれこれ考えていたものが、すっと流されていって、躰があたらしく入れ替わります。

山と海はつながっていると、このドラマで何度も教えてくれますが、海も同じように、どっぷり浸かるだけで、生まれたままの心が蘇ってきます。

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22.   あなたの愛や夢や冒険
Your Love, Dream and Adventure

『来光』のストリンングス・バージョンです。
加藤久貴さんからこの素晴らしい編曲が届いた時、ほんとうにびっくりしました。
加藤さんもこの編曲をされた時、奥様が妊娠されていて、まさにまさに、音から命の喜びを感じます。

また、録音ミックスをしてくれた柳谷智章さんも同じく第一章の仕事を終えた直後にお子さんが産まれました。
そして、我が家にも。
同じ現場に3人もあたらしい命がやってきてくれて、それで、『おかえりモネ』はこういう音楽なんだと思います。

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23.   この世界はよいところ(歌:高木正勝)
This World is


僕は8年ほど前から小さな村に住んでいるのですが、その間に亡くなられた方が何人かいて、生前も仲良くさせてもらったのですが、亡くなってからも、ふとした時に現れて、一言二言、心でお話をします。

この曲が生まれた日は、夏の陽射しが気持ちよくて、ピアノを弾いていたら、隣に住んでいたエッちゃんが現れたので、そのまま録音をはじめました。
曲を奏でていると、エッちゃんが「わたしはのうなって、こっちの世界におるけれど、よいところやで。でも、あんたの生きとる世界はもっとよいところや。楽しみや〜、楽しむんやで〜」と言ってくれました。
「いい曲やね、ありがとう〜」と演奏し終わった後、手を合わせました。

しばらくして、息子が生まれました。
ぐずってなかなか寝てくれない時、この曲を口ずさむと、じっと僕の顔を見つめて聞いてくれ、うつらうつら、落ち着いて寝てくれました。僕たちの子守唄になりました。

僕も子どもたちに「あなたたちの未来は明るい」「この世界はよいところ」と言えるように生きたいです。


(これで、第1集の3枚の解説はおしまいです。
長文、お付き合いいただきまして、ありがとうございました。

10月発売予定の第2集も3枚組。
音楽の内容もぐんと広がります。
解説を書いてみようと思いますので、また読んでみてください。
よろしくお願いいたします。)

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