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新型コロナで変わる仕事と生活

1.中国依存からの脱却

 2020年、新型コロナウイルスの蔓延により、「世界の工場」である中国の機能が停止した。人の移動、モノの輸出入が止まり、中国のサプライチェーンが途切れたために、世界の生産に悪影響を与えた。
 グローバルソーシング、グローバルサプライチェーンは、リスクが高いことが世界的に証明されたのだ。
 また、環境意識の高まりから、大量生産大量販売が大量廃棄につながることが危惧されている。コストダウンよりも廃棄物を減らすことが優先されれば、大量生産よりも必要な量だけを生産するという流れが出てくるだろう。
 また、グローバルな物流はエネルギーの無駄遣いであるという認識から、地産地消が奨励され、コストの低い新興国から先進国に生産機能を戻す動きも出てきている。AI、センサー技術、ロボット技術等を組み合わせることで、工場の無人化ができれば、先進国の人件費の高さや労働力不足の問題は解決するのだ。
 海外生産をするにしても、できれば、それを輸出するだけでなく、生産国で販売することが望ましい。人件費の低い地域で生産するという視点ではなく、現地で販売するために現地生産を行うという考えが必要なのだ。そうなれば、必然的に生産地も分散されるし、物流費も減るだろう。
 このオペレーションを実現するには、「自社だけが利益をあげればいい」という経営ではなく、現地で人材を育成し、顧客を創造するというコミュニケーション戦略が重要になる。
 こうした流れにより、中国への過度な依存は次第に緩和されるだろう。
  
2.ハンドクラフトと地域ファクトリーの可能性

 既に、紳士スーツはオーダーメイドが好調である。オーダーメイドが増えれば、必然的に国内生産が増え、また、衣料廃棄も減少する。
 オーダーメイドには、二つの方向がある。第一はハイテクのロボティクス工場によるオーダーメイドだ。
 第二は、ハンドクラフトによるオーダーメイドである。
 前者は大企業が主役になるだろうし、後者は個人が主役になるだろう。私はハンドクラフトに可能性を感じている。
 高齢者が増えれば、自宅でできる仕事へのニーズも高まる。町会や婦人会などの地域コミュニティと連携し、公民館等で手芸、手編みニットや洋裁を教え、それが発展すれば、新たな地域ファクトリーに育つ可能性もある。
 問題は原材料の仕入れと販売だが、どちらも専門家とのコラボレーションで解決するだろう。

3.リモートワークによる業務改善

 新型コロナウイルスは、働き方も変えた。満員電車に乗ったり、オフィスに集まることは感染につながる。
 一部のICT企業では、全面的にリモートワークを導入した。今後は、他の企業でもリモートワークが主流になるのではないか。
 リモートワークは、感染予防だけでなく、様々なメリットがある。全ての作業をクラウド上で行うためには、業務フロー、役割分担、決済等の明確なルール化が必要になる。これにより、業務が見える化し、無駄がなくなる。 もし、マネジメントをAI等が行えるようになれば、組織のフラット化や業務の効率化、中間管理職の削減、人間関係に関するトラブルの減少にもつながり、結果的に社員の定着率アップも期待できそうだ。
 また、同一労働同一賃金を実現するにも、リモートワークは有効である。仕事をする「フリ」をするだけの社員は淘汰されるだろう。
 同時に、オフィスの経費、社員の交通費等も削減できるので、その分、給与に反映させれば、優秀な人材の獲得にもつながる。
 こんなにメリットがあるのに、リモートワークに消極的な企業も多いのは残念だ。毀損社員の既得権を優先するか、それとも業務改善を優先するか。その姿勢が問われているとも言えよう。

4.eラーニングによる在宅学習

 人は集団になるとイジメを始める。学校も会社も同様である。いじめにより、どれだけの人材が成長を阻害されただろうか。
 これを解決するだけでも、国力があがるはずだ。
 これまでの学校の授業は、全員に同じ内容を一律に教えるものだった。得意な科目を伸ばすのではなく、全科目に及第点を取ることを目指したために、画一的な人材ばかりとなり、個性が十分に伸ばされなかった。
 かつての工場労働者を育成するならば、協調性優先の詰め込み教育で良かったのだろう。命令には素直にしたがい、協調性を重視しながら、指示通りの作業を行う。そんな人材を育成するプログラムである。
 しかし、時代は変わった。現代のビジネスパーソンは、自分で考え、行動する力が求められている。平均的な得点よりも、得意な分野を伸ばす教育が必要なのだ。
 それには、学校で集合教育を行うよりも、個別指導が望ましい。それを可能にするのが、タブレットや動画を活用したeラーニングである。
 eラーニングならば、いつでもどこでも勉強できる。学生の期間だけでなく、社会人になった後でも、生涯学習が可能になるのだ。
 もちろん、学校の全てを否定するのではなく、クラフメートとの交流や、イベント等も有効だろう。
 しかし、現在の学校のシステムはあまりにも非効率的であり、教師の属人的な資質に依存している。また、イジメ問題のリスクは無視できないほどに大きい。
 中国では、新型コロナウイルスで学校を休む代わりに、eラーニングを普及させようとしている。日本も見習いたいものだ。
 
5.新たな地域産業開発

 ビジネスのグローバル化には、三種類ある。第一は、生産だけを海外に移転し、国内で販売するビジネス。海外生産のコストが低いので、安く作って安く売るために海外生産しているケースが多い。多くのアパレル製品はここに分類される。
 第二は、海外で生産し、世界市場で販売するビジネス。自動車が代表的だが、紡績、合繊メーカー等もここに含まれる。無国籍な商品、どこの国でもニーズがある商品である。
 第三は、国内で生産し、世界に販売しているビジネス。日本製の包丁や日本酒などがここに含まれる。この分野は日本の技術や伝統、文化が基本になっている。日本好きな海外の人がそれを購入しているのだ。ある意味では、オタク向けビジネスといってもいいだろう。
 これまでの地場産業は、問屋に支配されてきた。自社オリジナル製品ではなく、相手先のブランド、相手先の企画で商品を加工、組み立てしていた。従って、簡単に海外工場に仕事が流れたのである。
 今後求められるのは、地域の文化、デザイン等を活かし、世界に売れるオリジナル製品である。インバウンド相手なら、観光と連携し、海外市場を狙うのなら、その地域の文化と共に商品を伝えなければならない。
 日本の企業が、この第三のビジネスモデルを目指せば、中国生産から国内生産への流れができるだろう。*

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