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【俳句鑑賞】しののめの薄氷は踏み砕くもの 雅人

しののめ=東雲。夜明け、明け方のこと。薄氷は俳句の季語では「うすらい」と呼ぶ。これをスムーズに読める人は俳人の疑い大いにあり。言葉の通り、早春の季語である。

夜明けの光を受け、自分の歩く道の先に小さな水たまりが。見れば、その一部は凍っている。暦の上では春だが、ここそこにまだ冬の名残が感じられる。ことに早朝はまだ「冬」と言ってもいいほどだ。そんな中、行き先にある水たまりの氷を踏んで砕いた。

踏むだけでなく、砕くという言葉を加えているところに主人公の強い意志を感じる。今日は何かを決断する日なのだろうか。この時期、これから春に向けておこる変化に思い悩む人も多かろう。

同時に、何かを決断する時は何かを捨てることも意味することが多い。冬の名残の氷をばきっと踏みしめて、新しい春の世界へと力強く踏み出す。そんな人々へ送る応援の俳句のように私は感じる。学生だけでなく、大人も、みんなそうだ。サラリーマンへの応援歌にもなりうる。

東雲をひらがな表記にしているところに作者の優しさも感じ取ることができる。前進するものの背中を少し押すような。何かを決断するときに思い出したい一句となった。

薄氷に子を見送りてなすがまま masajyo


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