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【感想】NHK特番『笑いの正体』第2弾とIPPON女子グランプリ

女芸人
冒頭で千原ジュニアも言っていたように、この言葉がメディアで堂々と使われるのは時代的に今が最後かもしれない。
(個人的な感覚で「女芸人」には少し抵抗があるので、以降は「女性芸人」という表記を用います)

2017年にTHE Wが始まって以降、芸人の性別を意識する機会が増えた(ような気がする)
当時は「そもそも芸人として人を笑わせる能力に性差があるのか?出場者の性別を限定した大会にどれほどの意義や価値があるのか?」という声も決して少なくなかったと記憶。

2020年9月にはアメトーークが先陣を切る形で女性芸人の時代の変化を特集。
変わってきた部分とまだまだ変わらない部分があるという着地。

ナイツ塙のYouTubeで放送作家の飯塚大悟も、お笑い業界は男性社会なのでネタ見せでも「女性を活かしたネタをやれ」と言われがちと述べている。

確かに男性芸人が「男であることを活かした」ネタを作れとは言われなさそうだし、M-1などの賞レースやネタ番組を思い返してもそういうネタばかりというわけではない。
(そもそも男を活かしたネタって何だろう?)

そんな折、昨年の女子メンタルに続いて松本人志が壮大な思考実験とでもいうべき企画を敢行した。
それがIPPON女子グランプリ。
「女性は大喜利が苦手なのか?」という煽り文句はやや物議を醸したし、他にも詰めの甘さは見られたものの面白い部分も多いにあった。

男性芸人が考案したというお題は前述の「女性を活かした」回答を出しやすいものに囚われている感はあったし、でも女性芸人の回答がその範疇に収まっていたわけでもない。

スタッフも全く無自覚というわけではなく、色々苦慮したんだろうなとは思う。

この放送翌週の『西川あやの おいでよ!クリエイティ部』でXXCLUB大島育宙も「全推しは出来ないけど…面白かったよね?でもお二人(共演者の西川あやの・永井玲衣)どう思いますか?」というスタンスで取り上げていた。

大島育宙が非常に分かりやすく論点を整理したのを受けての哲学者の永井玲衣のコメントが興味深かった。

笑いっていうのは習慣なわけじゃないですか。
これまで見てきたものによって私たちは笑わされる。
で、見てきたものっていうのは男性中心的なものなわけですよね。
そこで女性が出た時に、やっぱり女性のお笑いって笑えないよね、実力不足だよねって言っちゃう気持ちはもちろん分かるんです。
だってそれを見てきてないから。
異質なものとして受け入れられない。
だからこそカテゴリーで括る必要があって、テレビ業界も視聴者もそれに慣れる練習をしなきゃいけないっていうのがある一方で、カテゴリーは不要であり必要であるっていう凄い絶妙な状態にある。

そんなIPPON女子グランプリの話題が1週間かけて早くも落ち着きかけた頃にNHKで特番『笑いの正体』の第2弾が放送された。
テーマは奇しくも「女芸人という生き方」

配慮はしつつも割と真正面からボールを投げたフジテレビに対してNHKはその辺りはやや慎重。
まずは上沼恵美子が独壇場というべき喋りで完全な男社会の中で生き抜いてきた生き様を語る。

そこから年代を結構飛ばして大久保佳代子。
話題はやはり『めちゃイケ』

どっかで笑いは男のものってちょっと思ってるとこがあるんですよね。
(中略)
スタッフも男が多いし、メイン的な役割をするのはナイナイはじめ男性が多い。そしたらそこに入れられた女性芸人は隙間の役割をちゃんとこなすのが仕事かなと思ってました。

光浦も似たことを言っていた。
『めちゃイケ』でよくテンポが遅いとスタッフ(やはり総監督の片岡飛鳥?)から怒られていたそう。

(第1回THE Wのとき少しだけバズったので個人的にも思い出深いツイート)

ここで次に友近を持ってくるグラデーションの付け方が面白い。

そもそも女性芸人・男性芸人って分けた考え方をしたことが無かったので、デビュー当時から。
混じって面白い人が勝つ世界だと思ってたので。

渡辺直美もゆりやんレトリィバァも女性というジェンダーを意識させる話は特に無し。
2人ともネタにファッションに自分を貫いている。

逆にAマッソ加納はモヤモヤを吐露。

女子アナウンサーの方とかに基本噛み付く存在として当てられることはありますね。
女は女の敵という古い固定観念みたいなのがあると思いますね。
あとMCの方は男性が多いので、まだ「女の子が喋ってるから聞いてあげよう」って変に気を遣われてるなって時はあります。

女性芸人が増えてきた今、勝ち残るための戦略は?

女という意味でキャラクターになってたものが、こんだけ数がいるなら自分個人のオリジナルの需要を生まないといけない。

ラストの横澤夏子のトークは男性の育休取得に及び、もはや女性芸人の枠を飛び越える。
(もちろん非常に切実なテーマであり、あくまで芸人に限った悩みではないよねという意味です)

IPPON女子グランプリが視聴者に植えた種を整理してくれるような内容だった。
世代で区切るのも乱暴ではあるが、若い世代ほど女性芸人だから女性であることを活かした笑いを取ろうという意識は薄まっているように思った。
ただ、同時にそれに視聴者の意識を含めた環境が完全に追い付いているわけでもない。

長期的には女性芸人という括りの意味合いは薄まっていくのかなと。
色々考えたくなるテーマである。

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