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合理的な友人の話

私の高校時代の友人の話です。

彼は母親しかおらず、妹二人の三人兄妹でした。

家計を支えるためなのか、高級レストランでアルバイトをしていて、とても高校生とは思えない時給をもらっていたようです。

住まいは市営住宅でしたが、立派なステレオを持っていて、レコードもポンポン買っていました。
彼はリッチでしたね。

さかのぼって……
彼と知り合ったのは高校2年の時。
同じクラスになって、なぜか仲良くなりました。
理由はよくわかりませんが、同じようにアルバイトに精を出す私に、同じ匂いを感じたのかもしれません。

私も高校生にしては小金持ちでした。
お互いにバイトのない日は必ず放課後に喫茶店に寄って、長時間話し込みました。
食べ盛りだったので、まあまあ高い喫茶店で、名物のロールパンをたらふく食べていた記憶が鮮明に残っています。
高校生にとっては結構な浪費です。

さて、そんな彼から衝撃の告白を受けたのは、2年も終わりを迎えようとする頃でした。

「1年間休学してアメリカに留学する」とのこと。

どうやらその費用を貯めるためにアルバイトをしていたようです。
浪費しても有り余るぐらいに働いていたわけです。

そして、大学は学費の安い国立に絶対合格すること。
学費をすべて奨学金とアルバイトでまかなうこと。
卒業後は奨学金を返さなくてもいいように教員になること。
などと人生設計を話してくれました。

留学中の1年間は何度かエアメールのやり取りをしていました。
今みたいにSNSなんて存在しない時代。
正真正銘紙の手紙です。

約1年後。
1年先に卒業した私は、晴れて第一志望の大学に合格しました。

その後に彼から連絡を受けました。
実は少し前に帰国していたこと。
受験が終わるまで連絡を控えていたことを後に聞きました。

再会後の1年間は数回会っただけでした。
私も受験生の彼を遊びに誘うほど愚かではなかったのでしょうね。

そしてまた約1年後。
彼から無事国立の外国語大学に合格したと連絡がありました。

学校の先生を目指していた彼ですから、当然英語系の学部なのだと思い込んでいました。
しかし本人から聞いたのは「ヒンディー語学科」

また、びっくりです。

曰く、返さなくてもいいタイプの奨学金を受けるためには、常に成績上位でなければならない。
だから偏差値が低めの学科を狙ったらしい。

大学時代は深夜にファミレスでよく会いました。
くだらない話をして、これぞ大学生って感じでのお付き合いでしたね。

で、まあ4年生になると就職の話になりますよね。

また彼から仰天のお話が。

「近畿では教員の競争率が高すぎるから、北海道に行く」

って!

聞いた私は、「ええ~っ!?」て感じです。

その後北海道で教員を始めた彼とは、1回しか会っていません。
いまでもFacebookで、彼が撮影した写真を時々見ます。

生きていることは間違いない。
しかし、いったい北海道のどこにいることやら。

教員は続けているのだろうか?
いつも大自然の写真ばかりです。

今思えば、高校時代の放課後も、大学時代の深夜ファミレスも、いずれ離れることになる私との友情を大切に思ってくれていたのだなと。

最後に彼との思い出を一つ。

高校2年の時に校内で性格診断テストっぽいものがありました。

「おい、見ろや!」と嬉しそうに見せてくれた彼の結果。

棒グラフの中に一本だけ目立つ部分が!
「合理性」だけが鬼のように突き抜けていました。

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