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電気自動車

 自動車の歴史上、電気自動車が登場するのはガソリンエンジンの自動車よりも早い。そればかりか自動車黎明期は、ガソリンエンジンなどの内燃機関、蒸気機関と主導権争いをした動力源である。エジソンが研究した電気自動車より、ヘンリー・フォードの作ったガソリンエンジン車が航続距離と言う問題でアメリカと言う広い国土にマッチしていた。
 こんなことから、自動車は内燃機関がメインとなった。一方蒸気機関は鉄道や船舶で独自の発達をする。電気自動車は一部の限られたエリアのコミューター的存在としては生き残ったが、忘れ去られた存在であった。ところが近代社会において大気汚染、化石燃料の埋蔵量限界が叫ばれてから、仁和賀にスポットが当たるようになった。さらには地球温暖化(これも一説に過ぎない)や全く陳腐なSDGsなんかがマスコミに盛んに取り上げられ電気自動車はこれからの主流となる車みたいな扱いである。
 電気自動車にとって最重要なのはバッテリーである。今日の電気自動車の性能評価はバッテリーの開発競争である。バッテリーの開発競争は近年さらに激化し、年数十パーセントの成長産業と言われる電気自動車開発は欧米、日本を始め中国でも盛んに行われている。中国では大気汚染が酷くそのため国からの補助金や優遇制度が盛んであり、正に国をあげて電気自動車開発に取り組んでおり、日本を始め海外からの企業参加も盛んである。
 アメリカでも電気自動車開発は盛んで、高性能スポーツカーも登場している。もちろん日本でも電気自動車は年々増加傾向にあり各メーカーは開発部門にそれ専用の部署を設けるほどで、いろいろな素材を使っての高効率バッテリーの開発にしのぎを削っている。
 ただし電気自動車には、低騒音であるが故の交通上の問題もある。後ろから走って来てたクルマに気がつかず、思わぬ事故に巻き込まれることも実はたくさん起きている。つまり音がしない電気自動車は危険なのである。
 しかも良く言われることだが、電気自動車は排出ガスゼロでではない。充電する電機は火力発電(原発が止まっている日本は特に)による電力を使うのである。また、中国で電気自動車を盛んに作るのは主に排出ガス対策と言われるが、最も化石燃料を消費し、大気を汚染しているのはかの国に他ならない。しかも化石燃料の埋蔵量は過去はあと数十年と言われていたにもかかわらず、現代の科学的探査と最新の発掘技術により、あと数百〜数千年は枯渇しない、というのが現代の常識となっている。
 電気自動車に使うかどうかは別として電力は現代の社会には必要不可欠で、家庭も会社も工場もすべてがこれなしでは成り立たない。電力での交通機関でいえば、電車である。これは架線から電力を取り入れて動くので電気自動車のような高性能バッテリーは必要ない。それでも省電力のためにいろいろな高効率制御が開発・導入されており、最も効率の良い輸送手段である。電気自動車もトロリーバスのような架線集電なら効率よくなるのだろうがそうもいくまい。
 結論から言うと電気自動車は、環境に優しくもなく逆に音がしない分危険な乗り物である。現代の電気自動車は自動車産業の維持に伴う刹那的な産物であ理、メーカーの環境にやさしいというコマーシャルに賛同した自動車ユーザーの関心が電気自動車に向き、世の中のために良いことをしていると電気自動車を買ってくれている間のリリーフに過ぎない。つまり化石燃料を直接消費する普通のガソリン&ディーゼル自動車の座を電気自動車が取って代わることは今の所考えられないのである。
 こうした化石燃料動力の自動車が少なく見積もってもあと数百年は走行可能なのだから、別に電気自動車がなくても実は何の問題もない。それは大局的に見ればそのときその時代に作られた商品であり、厳しく言えばその時代の流行に乗っているだけの商品なのである。
 それでは、燃料電池車はどうだろう。理論的には空気中の酸素と水素タンクの水素を燃焼して電力を作りその電力で走る電気自動車である。またこれとは別にこの水素燃焼システムで電力を作らずに直接動力とするのが水素自動車だ。いずれにしろ水素燃焼で排出するのは水だけということになる。これこそ究極の地球環境にやさしいクルマのように見える。だが、工業的に水素を生産する過程で、二酸化炭素が出たり大量に電力を使ったりするため、これも地球環境にやさしいとはまったく言えない。
 結局地球環境にやさしいというのは、化石燃料の消費と大気の汚染をどこまで少なくすることが出来るのかということで、それはけしてゼロにすることは出来ない。火力発電以外の原子力、水力、風力、地熱などで100%電力を作ることが出来ることが一番の地球環境にやさしいということになるのだが、その道のりはまだ遠い。
 人類にとってあまりメリットのないしかもエネルギー効率の極めて悪い電気自動車などはすぐやめて、低公害低燃費のガソリン、ディーゼルエンジン車をメインとするのが結局のところ一番地球環境に良いのである。

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