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ビンテージカー

 最近ビンテージカー、ヒストリックカーのあるいはクラシックカーなどの売買トラブルの話を良く聞く。これらそれぞれの呼び方と定義はあいまいだが、平たく言うと歴史的にあるいは希少性で価値のある高級中古車と思えば良い。
 中古車とは言うものの、数年前1500万円で買ったクルマが現在8000万円するというようなこともあり、クルマが好きな人とは別に、まったくクルマに興味がない投機目的でクルマを買う人も最近増え、手ぐすね引いた業者や、売り主と買い手を仲介するバイヤーと呼ばれる海千山千の人たちが活躍または暗躍しているのである。
 おいらはクルマ好きで、ただただ良いクルマが欲しいという方のアドバイザーや車両鑑定をやったことがあるが、バイヤーは良い方もいれば、まあほとんど犯罪まがいの商売をしている方も多いということなのだ。
 ご自分、またはスタッフに車両鑑定の知識がない場合は海外の著名オークションで買えばそのリスクは一定程度減る。高額なクルマを専門に扱うようなオークションは入札資格があり最低数億円の残高証明が必要になる場合もある。そしてそこで売買する物は相場よりも高めの最低落札価格が設定されており、落札した場合もオークションに支払う手数料も含めると割高と言わねばならない。それでも、とんでもない偽物や価値のない物を掴まされる可能性は低いため、人気は高い。
 個人バイヤーを相手にする場合はハイリスクハイリターンであるが、専門知識が豊富な方、またはそういうスタッフがいる方は正に掘り出し物を探すことができる。
 最近は特に60〜70年代の名車をたくさん持っているヨーロッパの富豪が年老いて、あるいは亡くなってコレクションが放出されることがよくあり、状態の良いクルマが時々出てくる。こういった場合、仲介するのが個人バイヤーが多く、そういうバイヤーを複数知っていれば、市場に出る前に在庫リストとだいたいの価格がわかる。
 クルマの写真とシャシナンバーが記載された書類を見て、期限付きで買うかどうか判断しなければならない場合が多いが、現地に行けばもちろん現車をみることはできる。
 一般にコレクターの持っていた固体は保存状態が良く書類などもしっかりしており安心だが、優良でないバイヤーが仲介した場合、法外な価格を吹っかけられたり、不人気車をセットで抱き合わせ販売されたり、酷い場合には手付金と言う名の車両価格の半分を持っていなくなってしまうこともある。
 こういうバイヤーに騙されないためには、輸出入の専門的知識を持つスタッフあるいは商社と組んでキャッシュオンデリバリーが確実に実行される方法をとる必要がある。
 また、古い希少車の場合、本当にその固体かの証明が難しくなる場合もある。事故で再生不可能なほど損傷したクルマの一部からそのクルマを再現し売っている例さえあるのだ。
つまり本来固体を証明すシャシーナンバーさえ信用できない場合もあるのだ。実際、同じシャシーナンバーがふたつ存在するクルマも過去にはあった。だから、その固体の鑑定をするのは本当に専門知識が必要なのである。
 それと良くあるのは現地で良い状態のクルマでも、日本に持って来たとたん車両全体から一気に錆が出る場合がある。日本の高温多湿は車両保管上最も劣悪な環境なのである。
 だから日本でクルマのコレクションルームを作る場合は空調はもちろん、室内でエンジンをかけることに備えた排気システムを装備している方が多い。もちろん日本国内でもそういったクルマを扱う業者、バイヤーはたくさんいる。実は最近トラブルを良く聞くのはこうした国内の業者やバイヤーなのだ。
 例えば車両価格の高騰を知らないオーナーに今が売り時と相場の半分の値で買い漁りに行く業者もいれば、不動産で言うところの事故物件を頻繁に取り扱う業者もいる。事故等で大きく損傷した車両をきちっと直さずに外観だけ何とか直して商品とする業者もいる。
 でも何と言っても金銭トラブルが多い。ここでも車両売買に関してはキャッシュオンデリバリー(車両だけでなく書類と譲渡証明など一式と現金の交換)が基本である。
 最近聞いた例ではナンバーを取得して納車と言う条件なのにいつまでたってもナンバーがつかないという例。このクルマ、レーシングカーなので保安装置はともかく車検に合格する書類が足らず、用意できる見込みがないというもの。安請け合いした業者は金は受け取ってあとは仮ナンバーで乗ってください。道交法上ナンバーはとれません。と主張。ナンバー取得は口約束で契約書はないと言う。
 実はナンバーを取得して解決する方法がないわけではないのであるが、おいらは関係ないので高みの見物なのである。

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