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「災害に強い」という慢心「は」捨てる

佐久は災害に強い。確かにめったに災害はない。
台風が来ても、いつもは大体それてしまう。活断層もないと言われていて地震被害もない。そして、浅間山が噴火しても群馬側がやばくてこっちは大丈夫。佐久地域に昔から住んでいる人たちでこう思っている人は多いと思います。僕も正直こう思っていました。

でも、今回の台風19号では、しっかりと被災してしまったわけです。
僕の住む地域の千曲川も、家が流され、氾濫ぎりぎりだったと思います。
もう少し雨が続いていたらと考えると・・・。本当に恐ろしいことになっていたはずです。

現在復旧真っただ中だから、こういった記事をUPするのは気が引ける部分もあるのですが、時間がたつと忘れてしまいそうだから、自分への戒めも込めて、時系列に綴っておきたいと思います。

2019.10.11朝台風前日

翌日にうちやまコミュニティ農園のイベントがあり、中止は確定でしたが、念のため天気の確認で、ヤフー天気やウェザーニュースを見ました。降水量に違和感。降り始めから12日の夜までの累計の雨量が300mm近いのです。しかも、1時間あたり20~30mmという、(僕の中では)この地域ではあまり見ない降水量が長く続く予報でした。農園やり始めて過去よりはよく天気予報を見るようになりましたが、この数字には怖さを覚えました。

とりあえず、自宅の危険性はどうなのかと佐久市が提供しているハザードマップを見ることにしました。マップを見る限り、水害はなさそうでした。

この時点で、実際どれくらいの雨だったらこうなるのか、という疑問がでてくるわけです。そして、ハザードマップには「各流域で100年に1回降ると考えられている大雨の規模を想定」と書かれています。

気の短い僕は、このあたりでイライラしてきたのを覚えています。

「各流域で100年に1回降ると考えられている大雨の規模」を想定って、どれくらいなの?

検索したら気象庁に「100年に1回の大雨は何mmくらい?」というページがありました。佐久はデータとして記載されていませんでしたが、長野「121mm」松本「153mm」と書いてあります。佐久は日照率全国トップクラスですので、それを踏まえると、多分上記数値より少ないと思われるわけです。でも、長野や松本の基準を参考にしても、今回の雨ははるかに超えていて、本当にやばいのではないかと頭をよぎります。

今となってはここでもう少し大騒ぎしておけばよかったと思うのですが、
こうやってデータを見るのは初めてだったし、普段に耳にしない言葉がたくさん使われていて、僕の「見方」はあっているのかという疑問もわいて来るわけで。

そして、ここで、佐久に住んでいる人間の慢心が出てくるわけです。
きっといつものように、台風がそれて、翌日は「やっぱり大丈夫だった」と思っているに違いない。

その日がっつり仕事だったから、そろそろ出かけなければいけなくて、台風について調べるのはいったんやめて、出かける準備をしました。
でも、やっぱり違和感があったから、自信なさげにフェイスブックには「これ大丈夫かな?」と降水量予報のページの画像を張り付けておきました。

2019.10.11昼

仕事場に到着。移動中も何となく台風のことでモヤモヤしていました。PC立ち上げると朝上げておいた投稿に何人かが返信をしてくれています。その中でお隣同じ佐久地域の方からのコメントに「佐久地域でこの雨量はあんまり見たことがない」とのこと。やっぱり、そうですよね・・・と僕も再び思い、不安が増すわけです。仕事の合間合間で、佐久地域の水害のことなどを検索してしまいます。そういえば、過去の大水害で「戌の満水」というのがあったなと思いだして検索。この地域の風習で、8月1日にお墓参りに行くのは、この災害で多くの人たちの命が奪われたからです。

さて、僕の気になっているのは、「今回の降水量がどれほど影響を与えるか」です。ですので、どれくらい降ったかが知りたかったのだけど、僕の検索能力では、かつ仕事の合間だったので時間もかけられずだったので、具体的な降水量はわかりませんでした。

あれこれ調べていくうちに、こんなデータや

こんな資料に出くわしました。

モヤモヤしていたものが確信に近いもの変わってきます。今回の雨、比較できるデータがある過去より、やばいじゃん、と。

そういえば、佐久市は警笛鳴らしてるのかな?とおもって検索。これが確か14時くらい。ツイッターが得意な柳田市長がこんなお昼くらいにツイートをしていました。あぁでも、市長いまいないのかぁ・・・。

市のHPを見たりすると、冠水しそうな道路の通行止め決めたり、どう備えておくべきか、などがお知らせとしてUPされていました。

朝から、降水量にモヤモヤしている僕としては、もうちょっと騒いだ方がいいんじゃないかな(僕がもっと騒げばよかったんだけど)と思う自分もいましたが、仕事も終わっていなかったのもあって、仕事に集中していくのでした。

2019.10.11夕方~夜

仕事場からの帰路。僕の運営するコワーキングイイトコの外にあるものとか、念のためしまっておいた方がいいなと思い、イイトコに向かうことに。向かい始めたところでメンバーから「下駄箱とか危なそうなものは屋内に対比しておきました~、準備ばっちり!!」と連絡。マジすか、こちらからお願いしたわけじゃないのに、自主的に・・・。しかも、念には念を入れ、大雨すぎたら少し浸水する可能性がある1階の倉庫入り口に土嚢まで積んでくれたとのこと。ほんとに涙が出るほど感謝でした。メンバーの皆さん本当にありがとうございました。

ということで、いざというときに備えて、少し買い出しをして自宅に戻りました。

相方と、今日の僕の違和感や台風のことなどを話します。外は嵐の前の静けさというような、穏やかな天気でした。もやもや考えていても仕方ないので、いつも通り眠ることにしました。

2019.10.12日中台風当日

朝起きると、弱めですが雨が降っています。相変わらずヤフー天気やウェザーニュースの予報もびっくりするくらいの降水量予報。もう今日は家を出ないと決めて、台風に備えます。ただ、備えるといっても特に知識があったわけでもなく、予報では風は強くなかったので、雨だけならば自宅は大丈夫という安心(慢心か?)もあったため、家から出ない、というだけで、リアルタイムに川の水位や累加雨量がわかる知人から教えてもらったサイトを眺めているくらいでした。

そして、普段ツイッターはあまり使わないのですが、柳田佐久市長がいち早くツイッター上で「#台風19号佐久市」というハッシュタグで投稿し始めます。

それに呼応して、「おいでよ佐久2号」さんという、一見怪しいですが(中身はちゃんとした人です)献身的に情報を集約して発信してくれるアカウントも現れました。(なんと、発信しすぎたのか、アカウントを凍結されてしまい、現在おいでよ佐久2号(仮)で発信しています。上記リンクは今の(仮)のもの)

こういう時、ツイッターの即時性と集約性は本当に有効だと思いました。状況や市の対応、警報などの発令や避難先などの情報が次々と上がってきます。このツイッターに助けられた人は結構いたのではないでしょうか。僕自身、身内などとのやり取りにかなり活用させていただきました。

テレビでも放送してくれているのですが、佐久のことについてピンポイントな情報ではなく、かつ同じことを繰り返しているだけなので、正直緊急性が求められるときには役に立たたないですね・・・。

お昼過ぎから雨脚が特に強くなってきました。まるで夕立のような雨が、ずっと降り続けます。不安が大きくなりますが、できることといえば、ヤフーの河川水位情報や累加雨量のリアルタイム情報をみたり、上述ツイッターを見ることぐらいです。ヤフー天気にアクセスが集中しているのか、だんだん河川情報が固まるようになってきて、気象庁の洪水情報にきりかえをしました。

河川の危険度を表す色が、みるみる紫になっていきます。そしてついに、危険度のMAXの暗い紫色が現れ始め、僕自身覚悟を決め始めます。微力だけど、まだ知らずにいる人がいれば届いてほしいと、僕もつぶやきます。

15時。河川が氾濫寸前、氾濫したという情報がツイッターに上がってきます。本当に災害が起こってしまっている、、、この佐久で・・・。しかし、この段階になってしまえば、もう何もできないといってもいいのだと思います。人間は自然に対しては無力です。ただただ茫然と入ってくる情報を固唾を飲んで見守りながら、知り合いが困ってそうな投稿をしていたらそこにコメントをするくらいです。相方は、誰かが避難してくるかもしれないから、と、掃除を始めます。あ、そうくるか。それいいねと、何もできない僕は思います。

滑津川や片貝川などの様子(#台風19号佐久市 から抜粋)


16時。あたりはだんだん薄暗くなってきています。累加雨量をみると、平地のでも200mmを超えてきています。

山の方はというと、累計で400mmです。

そういえば千曲川はどうか、、、佐久地域の3か所で氾濫危険水位を思いっきり超えてます。

しかも、雨のピークはこれからです。絶望感。。。

自宅周辺で、まだ営業しているお店や事業所を見ると「頼むからもう帰って台風に備えて!!」と心の中でモヤモヤします。実際この時間だと避難勧告が出ている地区もあったわけです。なんだか本当にモヤモヤしました。ほんと営業してる場合じゃないって・・・。モヤモヤ。

あと、この緊急時に、避難所はここで安全なのか?とか、何を避難所に持っていったらいいのか?とかリツイートしている人たちがいて・・・。ほんとモヤモヤ。


さて、こんな最悪な状況で夜を迎えてしまいます。何もできません。風はあまり強くない予報でしたが、かなり強い風が吹いています。何もできません。祈ることしかできません。

そしてついに、佐久地域よりも下流の上田地域や長野地域で千曲川が氾濫してしまいます。その後は、テレビで報道されているとおりです。佐久地域、千曲川が氾濫しなかったのがせめてもの救いですが、あとほんの少しで氾濫だったと思います。

さすがに、この状況。寝ようと思っても寝れません。

22時をすぎた頃、風はまだありますが、雨が弱まってきます。

23時なると、雨がやみ月が見えてきました。やっと台風が通りすぎてくれました。あとは被害が大きくならないことを祈るのみです。

天気が落ち着き、月が見えて少し安堵感。僕は何にもしていないのだけど、なんだかどっと疲れが出てきます。この間も市長はじめ職員のみなさま、消防の皆様など寝ずに対応してくれていて、本当に頭が下がります。本当にありがとうございます。

2019.10.13台風翌日

多分寝たのは夜中の2時くらいだったと思うのですが朝6時過ぎには目が覚めます。天気は晴れていて、風も穏やかになっているので、イイトコの状況を確かめようと自転車で向かいます。車でとも思いましたが、昨夜道路が陥没してそこに落ちてしまい、行方不明になられている方がいるのを見て、直感的に車は避けました。自転車のほうが違和感を感じやすいと思ったからです。

いたるところに昨夜の爪痕が見受けられました。

また、ツイッターにも様々な被害が掲載されてきます。

本当に信じられない状況が飛び込んできます。

そして、停電や断水も起こっていて、復旧の見通しがなかなかつきません。

浸水の影響で、下水処理センターが機能せず節水の呼びかけも起こっています。

※記事を書いている2019.10.14現在

つい先週「災害が少ない佐久の強みを活かそう」と地域外の人たちと話していたのですが、、、その佐久で、今回はこのような災害が起きてしまいました。

ただ、現在も市長が先頭に立って復旧活動をしていますが、ものすごいスピードで対応していると思います。「#台風19号佐久市」のハッシュタグもだんだんと浸透してきていているのか、情報が集まってきていますし、逆に情報をここで得て行動に移している人もいるのではないかと思います。翌日には災害ボランティアセンターの呼びかけを市長自ら行い、2日後には床上浸水した地区にボランティアがかけつけ、復旧のお手伝いをしています。

イイトコも微力ですが、停電で仕事に支障をきたしている方向けに、ドロップイン無料で対応しています。

災害は起こってしまいましたが、今回の出来事を教訓として市民みんなが学んで具体的な行動に移せば、ソフトの意味でも災害に強い佐久になれると思いました。実際、佐久は災害には強いのは事実ですから。

ということで、今回の僕の学びや気づきを最後にまとめて終わりにしたいと思います。

①もう「100年に一度」みたいな曖昧な言葉を使わない

僕の中では今回の教訓として、今回のように1日で累加雨量が平地で150mmを超えるような予報が出ている時点で「超警戒モード」を発令して、危ないよーとつぶやき続けるか、近い人たち人とはしっかり共有したいと思いました。

いろんな前提条件やケースがあって一概に言えないのと、(憶測がふくまれますが&言い方悪いですが)言い切ってしまうとモンスター市民にクレームつけられるから言い切らないのだと思いますが、基準値は言い切ってしまおう。いいじゃないですか、みんなの命を守るためです。行政も市民も関係なく、この基準を超えたらみんなで用心しようと。で、空振りだったら、よかったね、ですませばよいと思います。

②自分の住む場所には自分で責任を持つ

上の方で、ぼそっと言ってしまったのだけど、、、もう氾濫するぜ!という緊急事態。だからこそ市長も避難を呼びかけてるわけだけど、そのツイートに、ここ安全なの?的なリツイートは危険と思ってしまった次第です。僕自身もそうですが、もっと自分の住む場には自分自身が責任を持つべきだと思います。最低限、ハザードマップは頭に入れておかなきゃならないし、いざというときどういう行動をとるべきか考えておかなければならないと思います。これ当たり前だからこそ、当たり前にやれている地域は強いと思いました。佐久市は今回贅沢すぎるくらい情報の発信ができていたと思います。だからこそ、その足を引っ張るようなことはせず、緊急時に考えて行動できるようになっていなければならないと思います。

③ツイッターは活用する

今回のハッシュタグには助けられた人がきっといたと思います。デマやふざけた投稿はうざいですが、でも、情報の一覧性と適時性にはツイッターが強いと感じました。お年寄りは難しくても、使える世代はぜひ情報を共有してあげたいところです。みんなで共有すると行動が早くなると思います。無理に発信する必要は全然ないとおもいます。ただ見られる状態だけ作っておけば、市長はじめ適切に発信している方の情報が得られて行動に移せます。これは大きいことだと思います。

あと、個人的にグーグルマップにツイッターで挙がった情報をプロットしてくれている人がいました。

これすごいな。

④地域外にもつながりを作っておく

これは、移働しながらずっと思っていたこと。いざというときに頼れる人は多い方が良いと思っています。最悪、しばらく身を寄せられる場所が他にいくつかあると思えるだけで安心感は変わってきます。
また、コワーキングを運営する身として思うところもあります。今回は佐久が被災してしまったのですが、逆の方が大いにありえます。ここは模索していきたいと思いました。

⑤「災害に強い」という慢心「は」捨てる

そして最後は、タイトルの【「災害に強い」という慢心「は」捨てる】です。僕は、少し慢心していたと思います。たまたま今回翌日にイベント主催がなければ、しっかり情報見ていなかったかもしれず、河川が氾濫したあたりから、やばい!と思って行動していたと思います。

実際、今回もそういった方が結構いたんじゃないかと思っています。避難勧告が出始めた時間帯は夕方に差し掛かっていました。その時間帯から暗くなる時間までに避難しないとまずかったはずです。今回夜になってから避難している人もいたと思います。氾濫も起こっていたし、助かったのがラッキーだったという人もいるかもしれません。実際風が強くなりはじめた夜8時頃には市長から、今からの避難は逆に危険2階や山の反対側部屋に移動してください、とツイートがありました。

佐久は災害に強いという慢心は捨てなければならないと思います。事前に準備もできるし初動が遅れることなく、確実だと思われます。

あえて、慢心「は」としたのは、佐久はほかの地域に比べて災害は少ないのは確かだと思います。今回風については、自然環境に守られているせいか、ほかの地域に比べれて全然強くなかったはずです。あと今回市長のリーダーシップは素晴らしいと思いました。だからこそ、慢心を捨て、しっかり備える意識が持てれば、本当の意味で災害に強い地域になれると思った次第です。

以上今回の学びです。また気づいたら追記していきます。とはいうものの、まだまだ被災のさなかなので、僕も僕のできることをしたいと思います。


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