あらゆるものは通り過ぎる。|2024,Week30.
何をやってもうまくいかないとか、思っていることがぜんぶ裏目に出るとか。そういうことってありますよね。僕の場合、ぜんぶがダメってことはなかなか無いけど、思惑がちょっとズレるとかは割と良くあります。
例えば、僕は仕事でキャッチコピーを書くことが多いんだけど、自分が100%「いい!」と思ったものはあまり評価されない。それよりも80%くらいのところにある「悪く無いよね」というもののほうが人からのウケが良かったりする。あとは誰かと出かけるときも僕がチョイスする場所や物に限って当日休みだったり、思わぬ出来事で予定がドタドタとズレてしまったり。以前も友人に「〇〇さん発案のものって、ちょっとズレてますよね」と言われてハッとしたこともある。薄々自分でも分かっていたことを、見抜かれたような気がして。
でも、そういうのって言い訳するわけじゃないけれど不可抗力というか、自分自身ではどうにもできないから難しい。ズレてしまう理由がわかれば、それなりに対処できそうなものだけれど、身に覚えがないから。良かれと思ってしたことや、こうだろう!と思ったことが裏目に出てしまう。そういう星の元に生まれたのだと思うのも一つの手だろうけれども。
レイニーデイ イン・ニューヨーク(2019)
ウディ・アレンが監督を務めた『レイニーデイインニューヨーク』という映画も、まさにそんなような思惑のすれ違いを描いた作品です。学生新聞の取材で、田舎からニューヨークにやってくることになったギャツビーとアシュレー。特にギャツビーは、もともとニューヨークの生まれで、ランチはどこどこで、ディナーはどこどこで…と、綿密にプランを立てる。しかし、思わぬハプニングで結局、プランは果たされぬまま、雨のニューヨークを彷徨う…。映画を観ながら「わかる、わかるよ」とつい、呟いてしまいそうになるような、そんな映画だった。
特に印象的だったのは、ギャツビーが霧雨の降る、灰色のニューヨークを背景に、ピアノ弾きながら歌うチェット・ベイカーの「Everything Happens To Me」のシーン。
主人公のギャツビーはニューヨーク生まれの生粋の都会っ子。今は都会から外れた田舎の大学で学んでいるものの、いわゆる人生のモラトリアムの真っ最中で、やたら小難しいウンチクや思想に耽っては、ギャンブルで小金を稼ぐような日々を過ごしている。特に何かに熱中しているわけでも、かといって徹底的に堕落しているわけでもない、いわゆる「ありきたりな若者」。アシュレーはギャツビーを「Quaint(風変わり)」だと作中で話すけど、確かにぴったりな表現だと思う。
こういっちゃなんだけど、自分とギャツビーは重なる部分もまあまあある。ギャンブルは一度もやったことがないし(正確には一度だけそれに近いことをしたという経験はあるが)、あくまで内面的な部分というだけだが。それでも冒頭に書いたように、何をやっても裏目に出てしまうようなことが割とよくある。
だからなのか、ギャツビーが歌う「Everything happens to me」には、彼なりの葛藤や苛立ち、それでいてこの歌が持つ響きに惚れ切って、ある種、この状況を楽しんでいるかのような。二律背反をものともしない雰囲気を感じることができて、僕はかなりこのシーンが好きです。
梅雨が明け、強い日差しが戻ってくる。
今年は平年より梅雨が短かったようだけど、その分、一度に降る雨の量が多かった。だからか、いつもよりも「雨」ということを意識した2024年だったと思う。印象的な雨が振る映画はいくつかあると思うけど、その中でも僕は、この『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』が今のところ、お気に入りかな。
でも、そんな梅雨が明けて暑い夏がやってきましたね。僕にしても今年の夏は28回目ということで、さてさて今年の後半戦は、どんなことが起こるのでしょうね?そして、過ぎ去っていくのでしょうね?
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