コーディデンプスについて追記&そこから考える富山のチームカラー

先日の記事で触れたコーディ・デンプスについて追記したいことがある。

前回の記事ではスタッツの内容、数字がマブンガと似通っていることから大味な選手なのではないかと思っていた。

マブンガ
MIN 28.0 14.7pt 3FG31.7% FG42.4% FT64.0% 5.2Reb 6.1Ast 0.6St 3.2To

デンプス
MIN 29.3 15.3pt 3FG35.6% FG44.3% FT65.1% 4.0Reb 2.4Ast 1.2St 2.6To

前回の記事のスタッツ比較

しかし、フォロワー様に紹介頂いたフルゲームの映像を見てみた結果、色々と印象が変わったのでここに追記する。
また、そこから見える今シーズンの富山のチームカラーを考えていきたい。


デンプスについて


①アシストは多くないが、TOをそこそこやってる理由

まずはアシストが多くないのにターンオーバーをそこそこやっている点について。

マブンガが平均6.1Ast、3.2Toであるのに対し、デンプスは2.4Ast、2.6Toとなっている。

これがセルフィッシュな気質があってアシストパスの試投数が少ないのか?パスは出しているが味方のフィニッシュ力が無いのかがハイライトではわからなかったが、結論はどちらかと言えば後者寄りだ。

というのも、イスラエルリーグは総じてチームDFの練度が高いリーグなのだ。

スイッチミスやローテーションミスといったDFエラーはほとんどなく、オフェンスの多くの仕掛けには完璧な対応がされる。
DFが綺麗に崩されること、あっけなく点を許すことは非常に稀だ。

そして、デンプスはこの中でクリエイト役を担っている。

しかし2対2からクリエイトしたアシストパスは3人目のDFに当然のように対応される。
そのためデンプスからパスを受け取った選手はシュートに至らない。
デンプスからパスを受け取った選手がさらにもう一つパスをしてようやくシュートに至るかどうか、というレベルだ。

昨シーズン、Bリーグで何度も見たマブンガとBJのツーメンゲームからそのままフィニッシュというようなイージーバスケットが滅多に起こらないのがデンプスのいたリーグだ。

つまり、デンプスはTOのリスクが伴うファーストクリエイトを担っているのだが、しかしスタッツ上のアシスト数が得にくい立場にあったということだ。


ちなみにこういったアシストパスに至る1つ前のパスをセカンダリーアシストという。
ズレのきっかけとなるパスを出した事実上のアシストパスとして、NBAではこの指標も評価対象として集計されている。

 ゴールにつながったラストパスである従来のアシスト以外にも、「セカンダリーアシスト」や「スクリーンアシスト」は、NBAが公式に数値化している。

「セカンダリーアシスト」とは、得点につながったパス(=アシスト)の、ひとつ前のパスのこと。サッカーでも、「ゴールスコアラーの2つ前にボールを触った選手を見よ」というのがスカウトマンたちの鉄則となっているようだが、場合によってはアシストよりもチャンスメイクに重要な影響を及ぼすと言われるのが、このセカンダリーアシストだ。

引用元:https://thedigestweb.com/basketball/detail/id=52410

恐らくイスラエルリーグでセカンダリーアシストが集計されていたならばデンプスは結構良い数字を残していたのではないだろうか。

②実は大味ではなく硬派な選手

また、彼は球離れがかなり良い。
隣にノーマークがいれば大人しく、アンセルフィッシュにエクストラパスを出す。

(そうならざるを得ないほどリーグのDF強度が高いとも言えるが)彼を含め、チームのパッシングゲームはとても綺麗だ。

さらに堅いDFから得た貴重なフリーのキャッチ&スリーは確率が高い。
24秒間ズレを作れずタフショットを打たざるを得ないポゼッションが多いため、スタッツの3P%は大きく目立つ数字ではないが(十分優秀な数字ではある)ノーマークのチャンスは確実に決めるタイプだ。

ファーストクリエイトを任されるだけの能力を持ちながらもチームオフェンスに徹する。

この特性は富山のロスターと非常に相性が良いはずである。

富山はクリエイターよりもシューターやフィニッシャーを多く揃えている。
彼がクリエイトを担いつつ、アンセルフィッシュにベテランシューター達へと配球できるなら。
相手にとって的が絞り辛く、シュートアテンプトの平準化されたバスケットを展開できるのではないだろうか。

しかし…

1Qで獲得したフリースローを2本連続で外す場面があり、外した1投目から2投目の修正内容を見ても、FTは今のところ数字通りの印象である。(65.1%)

③実はSGであること

最後に彼のポジションについて。

実は彼がハポエル・ベエル・シェバで担っていた役割は純粋なSGである。

たまにボール運びもやっているのだが、基本的には先にフロントコートまで上がり、PGからウイングでボールを受けたり、コーナーでステイする場面が多い。

さらにインサイドのスクリーンを使いながら逆サイドのウイングへとスイングする動きも多く、それらのプレーは純正のSGそのものだ。

そしてこれらを踏まえ、今シーズンの富山のチームカラーを考えていきたい。

デンプス獲得から見えるチームカラー


①浜口HCはPGを不要と考えている?

浜口HCはPGを不要と考えている節がある。

ここでいうPGとは ”ボール運び・ゲームメイク・パスに特化する代わりにサイズやDF力や得点能力がやや落ちる選手” という意味である。
("PG不要"というよりも"司令塔だからと言って得点能力やサイズに関して優遇しない"という表現の方が正確かもしれない)

昨シーズンではマブンガやラモス、時には水戸にボール運びをさせ、ロスターの4人のPGを使わない場面が散見された。

そして今シーズンの富山のPGはデンプスと浦野の2人のみ。
実は下記リンクのエクストラパス様がまとめているB1の24チームのロスター表では”PG”という表記が2名しかいないのは富山だけである。

さらに、前述のとおりデンプスはあくまで“ボール運びもできるSG”だ。
そうなると富山の純正PGは新人の浦野一人だけである。

恐らく浜口HCの考えの根底にあるのは

・司令塔専門のPGよりも攻撃力とサイズのあるSGを入れることで攻撃枚数を増やす
・ボール運びの部分はハンドリングのあるSGがすればいい
・ゲームメイクの部分は全員でオフェンスシステムを理解すれば代替可能

といったところではないかと思う。

②今シーズンも富山は異彩を放つチームなのか


その考え方でいくなら。
今シーズンはSGがボールを運び、オールドスクールなツインタワーバスケを展開し、かと思えばカウンターでベテランシューター達が外から射貫くようなバスケットになるのかもしれない。

ボールさえ運べてしまえばあとはBJ・スミス・サンバ・小野の強力なインサイドを中心としたシステマチックなオフェンスを行うだけ。
ならば司令塔枠に攻撃力とサイズのあるSGを入れても問題ない。

彼らのポストにボールが入ればDFは必ず形を崩す。
このズレのきっかけさえできれば富山のメンバーは躍動する。

運んだ後もSGが厳しいDFを受けるのなら、BJやスミスにトップでボールを預けても構わない。
センターがトップでボールを所持した状態からインサイドを攻める形を富山は複数持っている。

そして、それらを成功させるだけの下積みが今の富山にはある。
内容重視で1シーズン我慢してきた選手が8人残っており、今シーズンはチームの始動も早いからだ。
(そう考えると案外、唯一のピュアPGである浦野よりも野崎が出場する時間帯が長くなる可能性もある。)

当然、ガードの大型化によって野崎やデンプスが相手のPGにポストアップを仕掛け、逆にサンバやBJがスリーを射抜くオプションもある。
(スミスもあるかもしれない)

「PGを置かない」
「例年に比べると地味かもしれない」
「オフェンスはオールドスクールなポストアップが中心」
「だけどボールがよく回るしなんか強い」

もしかしたら今シーズンはそんな富山になるのかもしれない。


個人的な注目選手(おまけ)


最後に個人的に特に注目している2選手に触れておきたい。
(もちろん全選手に注目はしているが)

飴谷由毅

昨シーズンの展望記事に続き、2度目の紹介である。
実質プロ3年目となる今シーズンは彼としてもそろそろ結果を出したいところだ。

さらにラモス・マブンガ・宇都が移籍したことで彼のシュートアテンプトは昨シーズンよりも必要になってくるだろう。

グラウジーズ公式が上げていた動画のようなアグレッシブなオフェンスと得点力に期待したい。

↑彼は手足が長い。そのため、ジャブステップの姿勢からシュートモーションへと体勢を変えた際、ボールの移動距離が他の190cmクラスの選手より長いのだと思う。
それによって上田、野崎、小野は間合いを見誤り、シュートを打たれていると思われる。

②野崎由幸

前述の内容から実は今シーズンのグラウジーズの中で超重要人物なのではないかと予想している。

帰化選手のサンバがスタメンでない場合、彼がスタートのPGを務める可能性は高い。
(もしかしたら開幕スターターもあり得るかも?)

記者会見ではPG経験は無いと話していたが、昨シーズンのプレーを見ると結構できそうではあった。
彼が経験の無いボール運びを行いつつ、持ち前のシュート力で相手に脅威を与えられるかどうかはかなり重要なポイントである。

また、グラウジーズ公式twitterでは彼がBJのダンクやスミスとKJのシュートフォームを真似する動画がアップされており、結構似ていてブースターをザワつかせている。

彼は未経験のものでも見様見真似でそれなりにできてしまう器用なタイプなのかもしれない。



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