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川崎が富山と相性の悪い理由

1月4日の試合前時点。
富山と川崎の成績は

富山、10勝16敗で勝率0.385。
川崎、23勝3敗で勝率0.885。

この2チームは中地区の1位と2位ではあるものの、勝率に大きな差がある。

にも関わらず、今シーズンの川崎対富山の対戦成績はここまで1勝1敗としていた。
10/16の1試合目では69-73。
12/25の2試合目では98-90(延長)。

2試合とも競っており、勝率8割台のチームと3割台のチームの試合内容とは思えなかった。

富山グラウジーズは今シーズン怪我人が多く、不振続きだが、なぜか川崎戦になると調子を取り戻したように好ゲームをする。

これは偶然ではないと考え、
今回は川崎が富山と相性が悪い理由について考えをまとめてみた。

目次

 1、富山の特徴 -ビッグラインナップによる長所と短所-
 2、
富山の特徴 vs 篠山選手の特徴
 3、1月4日。過去の2試合から一転、川崎が圧勝した理由
 4、1月5日。今度は富山が32点差で勝った理由
 5、なぜいま川崎の記事なのか?

1、富山の特徴
-ビッグラインナップによる長所と短所
-

富山の選手達は身長が高い。
宇都、葛原、前田、船生、菅澤のガード/フォワード陣の身長は皆190cm前後であり、阿部選手に関しても180cm80kgとBリーグのPGとしては小さくない。

身長の高さはバスケットにおいて大きな武器だ。
リーチが長ければ相手のシュートやパスを邪魔できる守備範囲が広くなる。

しかし当然弱点もある。
それは「長身選手は平面の動きが弱くなる」というもの。

これは長身選手には足が遅く、フットワークが鈍い選手が多い傾向があるという事だけではない。

体験するとわかるが、足がある選手でも対峙した選手が自分より低く、膝下を抜いてくるようなドライブはどうしても止めにくくなる。

ドリブラーの体が低ければDFは体を入れづらくなるし、ボールも肩の位置から遠くなるのでスチールも難しくなる。

さらにこの弱点はスクリーンを絡めるとより色濃く表面化する。

なぜならばスクリーンの最善の対処である、「ファイトーバー」は体が大きいほどやりにくいからだ。

ドリブラーとスクリナーのすき間に身体を入れる動作は体が大きく、かといってこじ開けられるようなフィジカルがない選手ほど苦手な行為となる。

宇都選手は長身かつスピードを兼ね備えた希な選手であるが、彼とて小柄な選手に抜かれやすくなるのは例外ではない。

そして彼は過去の試合でもハイピックを絡めたドライブを小柄な選手にやられている。

ハイピックからのドライブに関しては沖縄の岸本や並里、千葉の冨樫、滋賀の斉藤といった小柄なスラッシャー達にかなりやられているのだ。

まずここまでをまとめると、富山の特徴はビッグラインナップ。
その長短は各々の守備範囲は広い為、対峙したプレイヤーのパスとシュートへの対応は得意だが、スクリーンを絡めたドライブへの対応は不得意というもの。

では、さらにこの特徴を紐解いていく。
ハイピックからドライブを仕掛けられることが富山の長身選手達は苦手だ。
それがリングへ一直線にレイアップまで持っていかれるとなると、平面の動きでの対応がより求められる為、より富山のアウトサイド陣は苦労する。

更に苦手なのがこのペイント内へボールを運んだ後、ある程度DFを収縮させてからスリーポイントラインの外へボールをキックアウトするプレーだ。

ボールを大きく移動させることによって
富山の強みである個々の広い守備範囲内での勝負を避けることができ、且つ弱みである平面の動きの対処をさせることができる。

これをまとめると富山は、ボールがペイント内(特にゴール下)へ速く移動し、そこから3Pラインの外へと大きく動くオフェンスが苦手なのである。

逆を言うと、ゆっくりとした1on1や2on2、ミドルレンジやローポストを主戦場とするようなプレーヤーに対しては彼らの守備範囲の広さが物を言う形となり、比較的防ぎやすいオフェンスと言える。

ゆえに富山が苦手なチームは

・ハイピックから果敢にリングへアタックする系PG
(沖縄の岸本や並里、千葉の冨樫、新潟の五十嵐、滋賀の斉藤など)
・ピュアシューター
(京都の松井、沖縄の田代、滋賀の狩野、三河の金丸や川村など)
・スリーの得意な外国籍選手
(滋賀のブラッキンズやウォーカー、新潟のハミルトンなど)

これらのタイプの選手をバランス良く揃え、ハイピックを多用するチームという事になる。
(つまり11月上旬に富山の被3P数が増え、負けが混んだのは沖縄と滋賀のチームカラーとの相性によるものという事がわかる。)


2、富山の特徴 vs 篠山選手の相性

川崎によく見られるオプションに篠山選手起点のハイピックがある。
そして、篠山選手のハイピックは先程上げた小柄なスラッシャー達とは決定的に異なる点がある。

篠山選手はファジーカス選手などのスクリーンを使い、DFが来なければミドルシュートやフローターで、来ればパスを捌くというスピードに頼らない後出しジャンケンなプレーをするという点だ。

そこへファジーカスのDFが対応(スイッチ等)してくればフリーになったファジーカスのフローターでフィニッシュの形になるし、
コーナーの3人目のDFが対応してくればコーナーへキックアウトをしてシューターに打たせる。

つまり、篠山選手がシュートorパスをセレクトする位置はハイポスト付近なのである。


並里や冨樫のプレーの場合、スクリーンを使った後にそのまま宇都達を置き去りにしてリングまで駆け抜けるため追いつけない。

彼らのレイアップを防ぐ為に3線ポジションのレオやオルトンがおびき出され、キックアウトは悠々ゴール下からアウトサイドへと行われる。
そのためボールの移動が大きく、その後の処理にも平面的な動きが必要となる。

対して篠山選手はスクリーンの後のドライブがゆっくりな為、富山の長身選手達は後ろから覆い被さるようにシュートやパスへ手を引っ掛けることが出来る。
さらに、キックアウトはハイポスト付近から行われるので、ボールの移動は比較的小さい。
こうなると富山の長身選手達の守備範囲の広さがものをいう。

篠山選手のピック&ロールからのミドルレンジでのプレーは絶妙だが、しかしその上手さは富山的にはそこまで脅威とはならないのである。

3、富山と接戦になった過去の2試合から一転、川崎が圧勝した理由

そして、1月4日。
これまでとは打って変わり、勝率通りのような点差で川崎は富山に圧勝した。

実はこれは偶然ではない。

富山がこれまでやられた小型スラッシャーのように、この試合でハイピックから果敢にリングへアタックしていたPGがいた。

藤井祐眞。

この日、川崎のワイドオープンの3Pは大抵が彼のドライブきっかけだ。
まさしく滋賀や沖縄のような富山が苦手とする、ボールが大きく動くオフェンスを彼は繰り出していた。
15点差から川崎が逆転した12月25日の試合でもそうだ。
4Qに篠山選手が4Fで下がり、藤井選手がリングに果敢にアタックをし始めてから流れが変わった。


富山と接戦をした過去の2試合から一転して、川崎が圧勝した理由。

それは篠山選手が離脱し、正PGが藤井選手に変わり、尚且つ彼に好き放題やられてしまった点にある。
富山にとっては、篠山選手以上に藤井選手のスタイルは苦手なものであり、実は先発藤井の川崎は相性が悪いのである。

つまり富山はスラッシャーのP&Rに対してゴール下まで行かせないことが鍵となる。
そして、この結論がそのまま翌日の試合の答えになる。

4、4戦目に今度は富山が32点差で勝った理由

これは富山が川崎のガード陣にP&Rへ入る前からプレッシャーを掛けていたことが大きい。
2シーズン前に富山にいた橋本尚明選手(現横浜)が時折見せていたDFに近い。

そして、その中でも異次元のDFをしていた選手がいた。

水戸健史。

最初に富山の選手達は皆長身で小柄なスラッシャーには弱いと話したが、彼だけは例外だ。
スタッツこそ突出はしないが、川崎のオフェンスを沈黙させたのは彼のDFによる所が大きい。

その理由を説明していく。

彼はキープレイヤーの藤井とマッチアップをしてはいなかったが、辻選手やその他のウイングの選手達へオフボールのディナイをかなり強固にしていた。
それにより、川崎のP&Rの選択肢が減ったのである。
(しかも彼は得点もFG4/5で11点を記録している!)

川崎のようなチームは各プレイヤーが順番にオフェンスを成功させる事が理想だ。その方が多彩に見え、抑えどころを絞るのが難しくなるし、チームも勢いづく。
しかし水戸選手によってそもそもの選択肢が1つ減ったとなると、残った他の選手のP&Rの対応に専念すればいい。

結果、1Qにドリブラーがペネトレイトしたシチュエーションは藤井の2回のみ。
(もちろん阿部選手のプレッシャー効果もある)
そこからキックアウトした熊谷のオープンスリーは2回とも外れた。

これによって、川崎の得点は1Qで13点に留まった。その内訳は藤井5点、ファジーカス8点であり、辻と熊谷の両ウイングが沈黙していた事がわかる。(その間に富山は31得点)

それ以降も、藤井や青木がP&Rからペイントタッチできる場面は少なく、手前のハイポスト付近でコーナーに捌こうとすると富山のDFの手に引っかかってしまっていた。


5、なぜいま川崎の記事なのか?

この記事を上げた3月11日現在、Bリーグは中断している。
そして中断明けの次節の相手は三遠ネオフェニックスだ。
では何故ここで川崎の記事を上げたのか?

勘の良い人は記事の前半で気付いたかも知れない。
現在もっともホットな三遠の選手が富山の苦手なタイプに当てはまるからだ。

河村勇輝

これまで挙げた富山の苦手な攻撃を体現してくるのが彼だ。
三遠は未だ4勝と苦戦しているが、もしも彼に好きなようにプレーされるようなことがあれば富山は苦戦を強いられることになるだろう。

ゆえに富山は彼のハイピック → リングまで一直線 → キックアウト
というプレーを防ぐ事が重要になってくる。

富山は河村選手に対し、どういう対応をするのか?
ポジション通り宇都選手がマークするのか?
対人DFに優れる葛原選手や水戸選手を彼にぶつけるのか?
もしくは特殊なシフトを用意するのか?

次節はこのあたりに注目していくと面白いかもしれない。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
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