皆既日食フェスティバル「Texas Eclipse 2024」参加レポート・私感
2024年4月8日、メキシコからアメリカを広く横切りカナダにまで到達する皆既日食。それに合わせ、テキサスで開催された皆既日食フェスティバル「Texas Eclipse 2024」に参加してきました。
写真は以下のリンクにアルバムとして載せているので、是非見てもらえたら嬉しいです。
このフェスで、4月8日の日食当日の朝に天候の問題によって以降のプログラムが全てキャンセルになり、会場からの退避勧告が出るという事態が起きました。この事について、ネット上で様々な意見や噂が飛び交い、興味を持っている人も多いと思いますので、自分なりのレポートをしたいと思います。
そもそも今回、出発の結構前から現地の天気予報は芳しくなく、1週間ぐらい前から日食当日の天気は80%〜100%雨で推移していました。
ですので、自分はアメリカに向かう前から皆既日食が見れない可能性も有り得る。と思っていました。そして、もしそうなったとしても、見れない皆既日食もまた貴重な経験になるに違いない。とも考えていました。
これは、2035年の日本での皆既日食を見据えて、取材を一つの目的として参加した、自分の特殊な事情によるものです。
しかし、もちろん、いち参加者としては皆既日食は観たい。
観れなかったら悲しいし、残念すぎる。
でもフェスティバルは盛り沢山なコンテンツでいっぱいだし、雨が降っても踊り倒そう。遊び倒そう。
そのために雨の準備も抜かりなくしておこう。
そんな意識で参加したフェスティバルでした。
そして、自分たちは4月2日に成田を出発。同日夜にヒューストン到着。
空港近くで一泊して、4月3日の夜にレンタカーで会場へと向かったのでした。
会場到着に関して、自分たちはタイミングが良かったのか至ってスムーズにチェックイン。翌4日はテント周りの環境を整えつつ落ち着いて過ごし、いよいよ4月5日からフェスティバルがスタート。
そこから7日までのことは、、、今回のレポートでは敢えて飛ばします。
アルバムの写真を見て感じてもらえればと思います。
ちなみに、天気予報はフェス会期中に日々改善していき、雨が100%だった7日も結局夕方にパラリと降っただけ。
「これなら8日は多少は雲が出でも、日食全く観れないほどの土砂降りにはならないだろう。」
そんな確信がありました。
そして、4月7日の夜は少し早くテントに戻り、翌8日の13時34分にやってくる皆既日食に備えました。
食事を済ませてテントで休んでいたら、木々の切れ目から、メインステージの方で見たことのない規模のドローンショーが始まって度肝を抜かれました。ドローンショーがあることは知っていましたが、フェスが始まって以来ずっと電波の状況が悪くて、プログラムの確認ができなかったのでした。
フロアに戻りたかったけれど、ぐっと我慢して、きっと翌日もやってくれるに違いない。そう思って寝袋に潜り込みました。
翌朝、皆既日食の当日。
朝起きてスタッフの食堂の方に向かうと少し電波が入り、オフィシャルアプリのアップデートを確認することができました。
そこで見たのがアルバムにも載せた「Weather Cancellation」のテキストでした。
最初は状況を飲み込めず、テントに戻り同行している友人のAJ(テキサス出身)に内容を確認してもらいます。
そして、天候の問題によって以降のプログラムが全てキャンセルになった。ということを理解しました。
要するに
「雷や雹を伴う嵐がやってくるから、皆既日食までは場内に滞在することを許容するけれど、早く荷物をまとめて会場を離れるように。」
そんな内容でした。
自分たちは、トランスステージに出演するアーティストが集まるスタッフキャンプサイトに滞在していましたが、多くのアーティストたちが皆既日食を前に会場を去っていきました。
しかし、自分たちは自前のレンタカーもあったので、会場で皆既日食を観て、翌日まで会場に残ることを決めました。
結果、、、
皆既日食はバッチリ観ることができました。
日食当日は、嵐はおろか、当分雨すら降りそうもない薄い雲が流れる空が広がっていました。
その後、当日は何も起きなかったのですが、、、、
しかし、翌朝の4月9日には雷を伴ってかなりの雨が降りました。
雹が降るほどのものではなかったものの、会場の土地はサボテンが生える砂漠のような場所で、急に降った雨は濁流となってキャンプサイトを流れていました。
そして、会場には日本では考えられないほど大きなキャンピングカーが多数あったので、それらを牽引し会場を離れようとする人たちの多くがぬかるみにハマってスタックしていました。
そこでやっと私たちも、主催者がなぜ退避勧告を出さねばならなかったのか? 実感として理解することができたのでした。
もし、あのまま会場内に多くの車が残り、身動き取れなくなったら、大変な混乱が引き起こされる。
去年のバーニングマンでも、砂漠なのに豪雨が直撃し、泥沼化して死者も出たそうです。
最終的に、雨は9日の朝のうちだけで終わり、
自分たちは9日の午後14時ごろに会場を出ました。
しかし帰り道ではまた豪雨に巻き込まれ、高速道路で30m先も見えないような状態に。。。
日本でも数年前に音楽イベントで落雷があり、人が死んだという事件がありました。そんなことを思い出しながら、改めて、今回のフェス中止は致し方なかったことなんだろう。と街への道を進みました。
友人のレンタカーがゴルフボール大の雹にやられて窓ガラスが割れてしまったと、後のストーリーで見ました。
その後、フェスのオフィシャルの方から以下のステイトメントが出されました。
SNSでは批判や様々な噂が飛び交っていましたが、
自分はステイトメントに書かれていたことは概ね事実で、主催者としてはベストは尽くしたのだと思います。
Googleでの翻訳でも十分に理解できるはずですので、是非一読の上、自分のレポートを読んでもらいたいです。
この件に関して、
「イベントに保険がかかっているから、中止にした方が儲かる。」
というようなことを言う人も居ましたが、それは事実ではないと思います。
中止にして保険で儲かるなんてことは到底考えられない規模のイベントでした。
中止にするのは損害を最小限に抑えるためだと考えるのが妥当でしょう。
主催者としても、もちろん続けたかっただろうけれど、
もし続けてしまったら二度とイベントが出来ないような負債を負ってしまうことになってしまう。
そういう判断だったのだと思います。
一方で、一般の参加者の立場で考えれば
「金を返せ!!」という気持ちになってしまうのも理解できます。
実際、日本からの友人が有料のオートキャンプのサイトを買ったら、フェス会場まで徒歩で1時間もかかって、移動に片道1人15ドルのタクシーを使った。
という話も聞きました。
もちろん、食事代、飲み物代も高いです。
それだけお金を払って来ているのだから、ギリギリまで頑張って欲しい。
もっと頑張れたんじゃないか? 出来たんじゃないか?
そう考えるのも当然だと思います。
これらのことを総合的に考えると、そもそもあの会場を選んでしまったこと自体が失敗だったのではないか。
と自分は思ってしまいました。
もっとフラットで、もっと開けた場所。
雨が降っても泥沼化しない場所は無かったものなのか??
何も知らない、勝手すぎる意見でしかないのですが。。。
麻薬犬を使った車内検査に、アルコールをはじめとする持ち物検査。
あのくらい商業的なフェスティバルとしてやるならば、あんなにワイルドな場所じゃなくても良かったような。。。
思い浮かんかだ言葉は
「砂上の楼閣」
砂の上に4万人のオーディエンスと数千人のスタッフ・アーティストで、とんでもないものを創り上げてしまった。
会場の裏側には私たちが想像する以上のリスクが潜んでいたのではないか??
実際、アーティストの友人たちの多くが、会場に到着したはいいが、用意された宿泊場所に辿り着けず丸一日彷徨った。などという話も多く聞きました。
連携と情報共有の決定的な不足。混乱。
それらのことはつまり、オーガナイズの根本的な準備不足を意味すると思います。準備不足とは想定不足です。
「あの壮大なドローンショーを観て、それほどの予算があるのなら、もっとアーティストケアに予算とエネルギーを割くべきじゃなかったのか?」
「そう考えて複雑な気持ちになった。」
参加した友人でアーティストの一人が、そんな正直な気持ちを教えてくれました。
自分は元々アーティストからスタートして、オーガナイズの側でも仕事をしてきた人間なので、両方の立場の心情や事情がよくわかります。
そもそも「オーガナイズ」とは理想と現実の折り合いを着ける仕事です。
いつもその間にあり、現実を前に胸に秘めつつも、理想はいつも遥か遠くにあります。
特に野外。そして数年に一度のビッグプロジェクトともなれば、その困難さは想像を絶します。
冒頭で触れた通り、
自分は今回、2035年の日本での皆既日食を見据えて、取材を一つの目的として参加しました。
取材とは、ニュースというよりもプロダクションとオーガナイズの裏側を見ることで、
日本の皆既日食では、何が可能で、何が不可能なのか? ということを見極めたいと考えていました。
実際、体験したもの、観てきたものは想像を超えていて、
前回2017年のオレゴンよりも更に進化していました。
しかし、それでも自然の力には勝てない。
そして想定と準備が不十分だと、このような事態に陥ってしまう。
厳しい現実を見ました。
しかし、そうした厳しい現実も含めて、
本当に貴重な体験をさせてもらいました。
アメリカは日本とは全く違う世界でした。
フェスティバルと皆既日食を通して見ることで、それをより鮮明に見通すことができた気がします。
何が違うって、、、
そもそも道の幅が違う。笑
道の幅が違うから車の大きさが違う。
車の大きさが違うから、運べる物の大きさが違う。
運べる物の大きさが違うってことによって
「こんなことも出来るでしょ?」
っていう思考の枠組みまで違ってしまう。
フェスが終わった後、私たち夫婦はヒューストンの宇宙センターを訪れました。皆既日食の後に訪れる場所としては最適な場所だったと思います。
アメリカではどのようにして、あのような夢の世界が創り上げられるのか?
では、、、
日本で創ることができる、日本ならではの夢の世界とはどんなものなのか??
理想と現実の間で、これからも考え、行動し続けようと心に誓いました。
次の皆既日食は、2年後の2026年08月12日。
北極圏からグリーンランド、アイスランドを通ってスペインに至ります。
今回の「Texas Eclipse 2024」を主催したGlobal Eclipse Gatheringのチームは北スペインでのフェスティバル開催を予定しているそうです。
一方、自分自身は2017年と今回の2回フェスでの皆既日食を体験したので、次回はフェスに参加せずに、純粋に皆既日食だけを見に行くのも良いかもしれないと考えています。
現地で生活している一般の人々や、社会全体。そして、あくまでも天体ショーとして皆既日食を観にくる人々が、どんな体験をしているのか? というのを見るためです。
最後に、、、「Texas Eclipse 2024」に日本から参加した皆さん。
オンラインでのミーティングの2回目を開催できずでした。
ごめんなさい。
個人的な事情で時間を作ることができませんでした。
それぞれ、大変なこともあったと思いますし、
本当に残念ではありましたが、
みなさんが皆既日食をしっかり観れて、忘れられない体験になっていることと思います。
いつかどこかで会った時は、今回の話を一晩中語り合いたいです。
そして、2035年に向けて、みんなで最高のムーブメントを作って行けたらいいなと思います。
長いレポートになりましたが、お付き合いありがとうございました。🌎🌛🌞
Dana、コジローはじめオーガナイズで参加したみなさんも、おつかれさまでした!!
本当にありがとう!!❤️❤️❤️
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