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始まりの始まり

スタンプを作り始めたきっかけは、昔ロンドンのAAスクール出身の方の建築ゼミの補佐をしながらそのゼミを受講していた時に建築を通してのデザインを学び、建築図面の空間表現としての人の表現が、建築家によって建物と同じぐらい個性的であることに興味を持ち、人のスケールスタンプを製作、ホームーページに掲載していたところ、オランダでデザイン事務所に勤務していたことにメールで「こちらを購入したい」という連絡をもらったのがきっかけでした、そのスタンプは日本を出国した時に、私物はほとんど当時一軒家を同居していたシェアメイトたちにたくしていた為に手元にはなく、それならばと、試しに一つ作ってみようと思い、画材や、木材やなどをめぐり材料を揃え、一つ製作してみたところ、それがとても面白く、もう一つ、もう一つと、作っていき、毎日の日課になっていきました。

日常生活の中で、気になるものを拾ったり見つけたり、それをよる小一時間ぐらいで彫る、周りのものから始め、身の回りにスタンプが溢れてきてから、友人や同僚のためにスタンプを彫るようになりました。その一つ一つの物語をウェブサイトにあげ、記録として残していきました。

スタンプを友人知人、同僚に掘り続ける中で「なぜみな同じような事を話すのか?」と疑問に思うようになりました、大切なものや、嫌いなもの、人の嗜好はその内容は違えど本質的には変わらず、スタンプの図案もそれら家族や趣味の構図を調整する事に疑問を感じ、その人らしさを表現するものとはなんなのか?とぼんやりと疑問に思っていた頃、たまたま友人が心理学者のお客さんを連れてきました。彼女が「人はエッセンスをもっていて、そのエッセンスを本人が理解する事で、自他共に利益を得ることができる」という話をしてくれ、即座に、それをスタンプに表現することができれば、と着想しました。

その頃は、オランダのデン・ハーグという「ヨーロッパ一大きい村」と呼ばれる、司法とビジネスとアートと音楽の街に住んでました。デザイン会社を辞め、自分でスタートしたばかりでまだそんな事を知る由もなかったのですが、とにかく仕事場と自宅の往復の日々、仕事場の外に知り合いは全くいませんでした。当時は街の繁華街にある、大きな一軒家を改装したアパートメントの一室を借りて、家族で住んでました。入り口に大きな吹き抜けのロビーがあり、鹿の頭が壁にかかっていて床は大理石といういかにもヨーロッパという建物、まだスタジオはなく、歩いて10分ほどのMienというカフェをスタジオがわりに使ってたところ、オーナーが「なんかつくってるんだろ?展示でもしてみるか?」って声をかけてくれ、ちょうど、エッセンスを描く事を考えていたところだったのでこれはいい機会と「Nice to stamp you」というタイトルを思いつき、人と出会うことと、その人のエッセンスを形にすること、を目的に展示をすることになりました。

Nice to stamp you は、インタビューを通してその人のエッセンスを描き出し、対象者にスタンプとしてお渡しする、壁には白い紙が貼られ、出来上がったスタンプをそこに押していくことで展示が進行してく、壁にはコンセプトと、スケジュール表が貼ってあり、希望者は好きな時間に名前を書き込む、値段は対象者が決定することができる。というシンプルなもの。

仲間にスタンプを作っていた時は、短時間の話し合いの中で生まれるものを形にしていたのですが、エッセンスはより深くその人を掘り下げる必要があるかと思い、広義の質問を四つ作り、マインドマップという形式を使うことにしました。
エッセンスを形にする、果たしてそんなことができるのか全くわからず、とにかくプロジェクトはスタート、壁に貼られたスケジュールを見に行く日課が誕生しました。

オーナーの友人や家族、そしてその仲間たち、展示期間中にきてくれ、今思えば、インタビューを申し出てくれた人たちは、地元に根ざすその場所を大切に思う、地元の人たちでした。インタビューを最初始めた時、デザイナーの時代の癖というか、話を聞きながら、問題解決を急ぐあせりの気持ちから、話されていることから、関連した解決案を考えている自分に気がつき、それでは、目の前の人の話を聞いていない、とうことに気がつき、とにかく話を聞こう、と決心、すると、スケッチッブックになんとなく書き込んでいる記号のような、ふとしたイメージがやってくることに気がつきました。

そのイメージは、考えて出てきたものではなく、頭というよりも胸のあたりでイメージするもので、電話しながらぼんやりとペンを遊ばせながら書いているようなものでした、何回かインタビューを繰り返す中で、そのイメージに関連して対象者に質問を投げかけると、僕自身はなんでこんな事を聞くんだろう(なんでこんなイメージなんだろう?)と思うのですが、意外にもその質問が対象者にとってマトを得ているようで、それによってイメージの全貌が見えていきました。

展示は、カフェのオーナーから聞いたという友人、お客さんから始まり、インタビューを受けた人が、面白かったからと、また別の人を紹介して、という流れが続き、展示期間が終わってからもこの「nice to stamp you」は続いていき、スケジュールを壁に貼ることが日課になり、口コミでデン・ハーグ以外の町からも人がやってくることが増えてきました。

そんな中、オランダのスピリチュアル系の雑誌「Happinez」の編集者からインタビューしたいという連絡をもらい、自宅でインタビューをしてくれました、その時、スタジオスペースで写真をとって掲載したいということだったので、ちょうど知り合って家族ぐるみでお付き合いしてたアーティストのNishikoさんのスタジオがあるビリータウンというアーティストが運営する空間を見に行ったところだったので、彼女のスペースを数日撮影で借りれないか?と相談したところ、快く了解してもらい、僕の仕事道具を運び込み設置、スタイリスト、カメラマン、編集者で1日が借りでの撮影を行い、無事に雑誌が出版されることとなりました。

雑誌が出版されてからの反響はとても大きく、問い合わせのメールが毎日何通も届くようになりました。壁に貼ったスケジュールは意味をなさず、日時を指定してカフェで会う、インタビューをしてスタンプを翌日カフェに届ける、ということが日課になりました。雑誌がスピリチュアル系という事もあり、心理学者、物理学者、アーティストなど様々な方達をインタビューさせてもらい、必ずといっていいほど、インタビューの後に助言やヒント、彼らの業界とこのインタビューの関連について話をしてくれました。

全ての人がとても興味深いのですが、その中で人組だけ紹介したい人がいます、タマスとインカというスロバキア人のカップルで、タマスは当時アムステルダムのVBATという、僕が最初に働いたブランドデザインの会社でインターンしているところを、僕がフリーランスしているときに出会い、インタビューを受けにハーグに来てくれました、そのとき一緒にいたのが彼女でブックデザインの勉強をしているインカでした、帰り際に彼女が、「スタンプの図案がまとまって来たら、本を作ってあげる」と言い残し、数ヶ月後、大学と専門機関に話をつけて、本を作るというインターン課題を取り付けて、デン・ハーグまでやってきてくれました。

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