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エスプレッソマシンのガスケット交換

こんにちは。

さて今回はエスプレッソマシン、当店で使用しているLINEA-MINIのガスケットを交換したお話です。本稿では、エスプレッソマシンを使った経験があってぼくと同じお悩みがある人を想定読者として書いていますからベーシックな部分の説明はあまり入れません。

過去に書いたお話はこちらで → LINEA-MINIの抽出圧力低下とスチーム系不具合の対応

リンク先の記事ではエスプレッソマシンの基礎的なこともかるめに書きましたので、必要のある方は参照なさってください。





さて、今回の件です。

時期は記録していないのですが、2023年に入ってすこし経ったころ、LINEA-MINIのグループヘッドにポルタフィルターを締め込んだときの締め込み具合が、いつものポジションよりも奥に(右に)なった日がありました。これはグループヘッドの奥に嵌め込まれているゴム製のガスケットが劣化していることが考えられる事象です(これとは異なるケースも考えられますが)。とはいえ、それを認識した日に突然エスプレッソ抽出に悪影響を及ぼすことはありませんから様子見をすることにして、その後もしばらくそのまま使い続けました。

しかし、同年10月に入ったある日、営業終了後にグループヘッドの洗浄を行なうべくポルタフィルターに装着したブラインドフィルターに洗浄剤を入れてグループヘッドにセット、そしてパドルハンドルをBREWにしたところ、なんと驚き、ポルタフィルターから洗浄液が漏れ出しました。ガスケットが劣化したことでガスケットとブラインドフィルターの圧着部に隙間ができてしまったのでしょう、いよいよガスケットの使用に限界がきたことが分かりました。

そこで今回取り寄せたのが、シリコーン製のガスケットです。

ぼく自身もシリコーン製のガスケットを使うのは今回が初めてでした。2017年ごろから販売されている物でしたが、前回のガスケット交換は別の事象でLINEA-MINIのメンテナンスを業者の方に行なってもらった際に同時に交換してもらったもので、従来からのゴム製でした。今回は、本件以外にLINEA-MINIに特段のメンテナンス事案はありませんでしたので自分でガスケット交換を行なうこととしてパーツのみ取り寄せました。

結論からお伝えしますと、シリコーン製のガスケットはお勧めです!

さっそく交換作業を紹介していきます。

交換作業に必要な物。
・シリコーン製ガスケット
・鉤爪状の工具(使用中のガスケットを取り外すために使います)
・食品機械用グリス(交換する新ガスケットに使います)
・ドライバー(シャワースクリーンを取り外すのに使いますが、通常の清掃時に取り外していると思いますのでお手元にあるいつもの物で大丈夫です)

これがシリコーン製ガスケット。まず目を引くのはこの派手な色。いままでが黒色だったので急になんなの?! という違和感が大きかったのですが実用的な意味がありました。

ガスケットにはオモテとウラがあります。ガスケット内径のほうでテーパー状に盛り上がっている形の面が、オモテです。フィルターバスケットのふちが接触する側です。

フラットなほうがウラ面。グループヘッドの奥に嵌め込むほうです。

交換作業を開始します。なお、作業を始める前にマシンの電源を落としてグループヘッドの熱を充分に下げてから作業することをお勧めします。さて、シャワースクリーンを取り外します。

ちなみに、シャワースクリーンを固定しているネジはただのネジではありませんので絶対に紛失しないようにしてください。エスプレッソ抽出をするためのお湯がこのネジの中を通っていきます。専用の特殊なネジなのです。

シャワースクリーンを取り外した状態のグループヘッドです。中央に見えるねじきり溝がさきほどのネジが入るところで、この直上にコーヒーボイラーがあり、この穴を通してエスプレッソ抽出用のお湯が出てきます。今回交換するゴム製のガスケットは周縁部に近いほうの大きな黒い円形の部分です。

さっそく、交換用に設けられている溝に鉤爪型の工具を差し入れてゴム製ガスケットを取り外します。

ゴム製ガスケットの一部が外れました。それなりに強い力が必要ですがグループヘッドは頑丈ですから怖がらずに思い切ってやりましょう。ただし、力の入れすぎで思わぬ怪我をしたりせぬよう、また無用にマシンを傷めないように留意して思い切り。

ゴム製ガスケットを取り外しました。疲労して硬化したゴム製のガスケットは取り外す過程で3分割に。お疲れさま。

こちらがガスケットを取り外した状態のグループヘッド。

いい機会なのでしっかり掃除。

いよいよシリコーン製ガスケットを取り付けます。まずは食品機械用のグリスを塗布します。

ガスケットを嵌め込みやすくするためのものですから、食品機械用のグリスは薄く塗ればOKです。

ガスケットのフラットな面を奥にしてグループヘッドに嵌め込んでいきます。テーパー状に盛り上がった部分のある面には食品機械用グリスは塗りません。

ガスケットを指である程度嵌め込んだら、清潔な工具を使ってしっかり奥まで押し込みます。

完了です。ガスケット交換作業は交換後の抽出確認まで含めても30分ほどでした。

このシリコーン製ガスケットを使っていてもっともメリットを感じているのは清掃のときです。ガスケットのこの派手な色が反射してグループヘッドの内側が明るくなり、清掃時に汚れが落ちたことが分かりやすくなりました。ゴム製の黒いガスケットを使っていたときは内側が薄暗く汚れが落ちたかどうかがいまひとつ判別できていなかったために、交換を終えたいまから思えば無駄に多くブラッシングをしていましたから、これが解消されたことで早く明瞭に清掃を終えることができるようになりました。

それから肝心の抽出については問題ありません。エスプレッソの味はもちろん、抽出圧の数値も含めて従来と一切変わりませんでした。

ただ、少々難儀している点は、グループヘッドにポルタフィルターを締め込んだ時の角度が大きく右にズレたままなことです。マシンの筐体に対してポルタフィルターのハンドルが直角のポジションにあったとすると、そこから30度くらいは右へ回さないとキッチリ締め込んだ感覚が得られません。2016年にLINEA-MINIを新品で使い始めたころは10−15度ほどで締め込んでいた記憶がありますので、ガスケット交換することでこの感覚が戻ることを期待していましたがそれは適いませんでした。エスプレッソ抽出をはじめ業務遂行時に支障はないのですが、30度も右へ締め込んでいると当然スパウトのポジションもそれなりに角度がつきますから少々使いにくさを覚えているところではあります。この点はシリコーン製のガスケットだからなのかは検証できませんが、販売店の担当の人には伝えましたので製品改良の一助になればうれしいです。

もう一点。将来、シリコーン製のガスケットが劣化してくるとどのような症状が出るようになるのかを販売店の人に教えてもらいました。ゴム製のときと同じで、ガスケットとフィルターバスケットの圧着部の隙間から湯が漏れてくるとのこと。ただ、硬化するゴム製とは違ってシリコーン製は変形するイメージだそうで、ポルタフィルターを締め込んだ時の締め込み状態がそのまま少しずつクセがついて隙間ができる感じになるとレポートをいただきました。ゴム製のものに比べると耐久性は上がっているとも聞きました。

総合すると、シリコーン製ガスケットはゴム製に比べてメリットが多いですから、次にガスケット交換される場合はシリコーン製をお勧めします!(了)

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