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どうしようもない大学生のどうしようもない寮生活

 某出版社のESで「私だけの小さな喜び」というテーマで作文を書いた。その後のプロセスで落とされたのでここで供養したい。南無。今回の文章は短い。字数制限は偉大だ。Viva 字数制限。

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 築60年になろうとする寮の小さな窓から見えるのは、小さな庭とその奥にある小さな雑木林。固いベッドを這い出すころには、窓辺にしか日の光が射し込まないほど太陽は高いところにある。寮で誰かを捕まえたら定食目指してペダルを漕ぐ。寮生御用達の寿司屋のお得なランチ。魚が食べたくて寿司屋に来たはずなのに気づくと唐揚げ定食を頼んでいる。食後のコーヒーで一服。体育施設に空きがあったらバスケやテニス。空いてなければ筋トレ。シャワーを浴びた後もだらだらと喋っていると、空腹で外の暗さに気づく。お昼も外食したんだけどな…と思いつつも誘われたラーメンは断れない。寝る前に3戦だけのスマブラがいつの間にか日を跨いでいる。ボードゲームをやることも。カタン、モノポリー、将棋に麻雀。いずれにしても日付は変わる。自動販売機を口実に、散歩しながら人生相談。部屋に戻って明かりを消したら寝落ちするまで真面目に議論…のはずが、詭弁で遊んだり眠気に負けて支離滅裂になったりする。

  文章にすると「どうしようもない」大学生活だったなと感じる。それでも大学生活をもう一度やり直すなら同じように過ごす。当時も、夜になると生産性の無い一日を過ごしてしまったと嘆いていた。ただ、それを口にするぼくたちは笑っていた。特別なことは何もしていない。同じようなことの繰り返し。それでも、ぼくにとっては美しい時間だった。振り返って過ぎ去った青春を美化しているだけではないと思う。いつか懐かしくなるこの瞬間に存在している幸せを、これでもか!と噛み締めるように過ごしてきた。未来永劫この瞬間を繰り返すことになっても構わないと思った。「時よ止まれ、汝は美しい」誰にも聞こえないように口ずさんだ。「私だけの小さな喜び」というテーマを見て、寮で過ごしたあのどうしようもない日常をどうしても書きたくなった。

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