エミリーと15の約束 二次創作小説(#BirthdaySHELF)
「だから、無理だって言ってるだろ」
壊れてないものをどうやって直せる。俺は一枚のレコードを目の前の爺さんに押し返す。
「頼む。この通りだ。もう一度妻の声を聞きたいだけなんだ」
爺さんが躊躇いもなく両手を地面に置く。煉瓦が敷き詰められた大広場。雪こそ積もっていないが、冬の寒さは昼間でも耐え難い。
かれこれ二時間だ。レコードの掛け方を教えるだけのはずだった。レコードにはカビも傷もなく完璧で、プレーヤーも年代ものだけど現役。ただ針を落としてもレコードは回るだけで何の音も部屋を満たさ