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ピンポイントに知識を得るのはむしろ効率が悪い

昨日、垣内さんの『デジタルマーケティングの定石』をおススメするツイートをしました。


ですが、なんでおススメなのかの理由が伝わってなさそうだなー、と思ったので、noteで解説した方がいいかなと。

というわけで、検索で知りたいことをピンポイントに知る、というかたちで知識を得るばかりだと、応用が効かないので、むしろ学習効率が悪いよ、という話を書きたいと思います。


ヒトは効率的に理解を深めるために、パターン認識を使います。

仕事でのパターン認識の基本形は、

状況 × 打ち手 = 結果

Aという状況でXをやってみたら、うまくいった。
味を占めて、Bという状況でもXをやってみたけど、今度はうまくいかなかった。

やがて、Bという状況ではYという打ち手だとうまくいく、とわかる。

すると、AとBのどんな違いが、効果が出る打ち手の違い(XとYの違い)につながるのかが見えてくる。

つまり、打ち手(XやY)だけを知ってても意味がなくて、どういう状況でXという打ち手が効果的なのか、それはAという状況のどんな特徴と結びついているのかを知っておくことで、使える知識になります


突然ですが、これを読んでる皆さんが英語の勉強で使った辞書は、電子辞書でしたか?紙の辞書でしたか?

私はいいオッサンなので、当然にして紙の辞書でした。よく「紙の辞書の方が良い」みたいな言説を聞きますが、あれ、意外と本当かもしれないなと思うようになりました。

私も最近は電子辞書を使いますが、検索してピンポイントに意味だけを調べていくと、周辺知識が頭に入らないんですよね。周辺知識というのは、動詞を調べたら、ついでに名詞形とか形容詞形もチラ見するとか、語源や語幹を知るとか、接頭辞・接尾辞を知るとか、そういうやつです。

これを繰り返していると、「あ、この単語の語幹は、あっちの単語と一緒なのか。たしかに意味が近いもんな」といった形で理解が深まります。すると、未知の単語でも語幹をヒントに「こんな感じの意味か?」と応用が効くようになります。

例えば、port は運ぶという意味のラテン語 portare が語源。なので、内に運ぶは import だし、外に運ぶは export になる。荷物を運ぶ人は porter だし、荷物が運ばれてくる港は port(harbourじゃない)。ついでに、インターネットからデータが運ばれてくる口はLANポートだし(最近見ないね)、データを移植することをポーティングと呼んだりもしますね(クラウドだと使わない言葉だね)。

知りたいことをピンポイントに知る(import=輸入)だけじゃなく、周辺知識(語源はport=運ぶ、対義語はexport)を知っておくと、パターンがわかるので、応用が効きやすくなります。transport を知らなくても、きっと「なんか運ぶ系」の意味だよね、と。


これは仕事でも同じで、知りたいことだけピンポイントで知るを繰り返していると、短期的には効率が良さそうに見えて、実はパターン認識ができない(むちゃくちゃ時間がかかる)ので、実はものすごく学習効率が悪いってことです。

B2Bのマーケティングだけ知ってるよりも、B2Cのマーケティングも知ることで、B2Bマーケについての理解が深まるのです。シンプルなヒエラルキー型組織で働くだけでなく、マトリクス組織でも働くことで、ヒエラルキー型組織の特徴がわかるのです。現場経験だけでなく、本社・スタッフ経験をすることで、現場でうまくやる方法がわかったりします。


ここでようやく、冒頭の『デジタルマーケティングの定石』がなぜおススメなのかという話に戻るのですが(長いよ)、、

この本は、さまざまな業界・業態のパターンを網羅してるんですね。自分の業界での定石だけでなく、他業界の定石も知ることができます。もうわかりますよね、それらを知ることでパターンがわかる。だから、応用が効くんです。

たぶん、デジタルマーケティングの「打ち手」は短期間でどんどん変わっていくと思います。だから、打ち手だけを覚えていくのは効率が悪い。それよりも、状況のパターン、状況分析の視点を身につける方が効率が良い。そうすれば、ひとつひとつの打ち手(最新の技術やスキル)を追いかけなくても「きっとこういうタイプの打ち手が効くはずで、そういうのが世の中にあるはず」と考えられるようになります。ここまで来れば、代理店なりチームメンバーなりの専門家に聞くことができるし、適切な提案をもらえるようになります。

体系的に知識を得ることのメリットは、最終的には自分が知らないことでも、専門家から詳しい話を引き出せることにあるのかなと。


振り返ってみると、体系的に学んだことはかなり長期にわたって活用できています。その理由は、応用が効くからだと思うんです。体系的に学ぶということは、いわば強制的に周辺知識を学ばされるということで、興味がある分野だけじゃなく、興味がない分野についても学ぶことになります。

そのときは「興味ねー」「関係ねー」「やる気ねー」と思っていても、他分野・異分野を知っておくから、応用が効くのです。なぜなら、Aしか知らなければ、Aの特徴はわからないけど、AとBを知ることでAの特徴、Aのユニークなポイント、Bとの違いがはじめて理解できるからです。

Bを知ることでAとの違いがわかれば、Cが出てきたときにAと似てるのかBと似てるのか、はたまたまったく違うのか、なんらかの視点を持つことができます。これは、Aだけしか知らないと、持てない視点です。

これこそが私が #カタノリ を推奨してる理由です

環境がどんどん変化し、技術もどんどん変わっていく世の中では、ピンポイントの知識よりも、むしろこうした「状況を正しく把握する力」、そこから「結果につながる打ち手を想像する力(仮説を立てる力)」の方がはるかに大事です。


そんなわけで、検索で知りたいことをピンポイントに知るばかりだと、むしろ学習効率が悪いんよね。新しい状況に直面すると、応用が効かなくて大変だよね。ときどき体系的に(強制的に)学ぶのって大事だし、むしろ長期的にはその方が効率的だったりするよね。ということをあらためて認識したのでした。

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