企業の役員賠償責任保険:近年活発化する訴訟と高まるリスクへの対応


近年、企業の役員に対する訴訟が活発化しており、役員賠償責任保険(D&O保険)への需要が高まっています。この記事では、D&O保険のマーケット状況、歴史、そして近年注目されるサイバーリスクへの対応について解説します。

1. 活発化する訴訟と高まるリスク

近年のD&O保険市場は、以下の要因により活発化しています。

  • コーポレートガバナンス強化への意識向上: コーポレートガバナンスコードの導入や株主の権利意識の高まりにより、役員に対する責任が厳格化されています。

  • 企業買収・M&Aの増加: M&Aに伴う訴訟リスクへの対策としてD&O保険の需要が高まっています。

  • 情報開示規制の強化: 情報開示規制の強化により、役員の判断がより厳しく問われるようになっています。

  • ESG経営への関心高まり: ESG経営への関心高まりとともに、環境・社会・ガバナンスに関する訴訟リスクも増加しています。

2. D&O保険の歴史と現状

D&O保険は1930年代にアメリカで誕生し、その後欧米諸国で普及しました。日本では1980年代に導入され、当時はChubb社やAIG社など外資系の保険会社を筆頭にマーケットを引っ張ってきました。しかし、近年では日系保険会社もマーケットに参加してきて、訴訟リスクの高まりつつある日系企業の中で市場規模が拡大しています。

2023年度のD&O保険の国内保険料収入は約1,800億円と推定されており、今後も年平均成長率5%程度で成長していくと予測されています。

3. サイバーリスクへの対応

近年、サイバー攻撃による情報漏洩やデータ損失などのリスクがますます高まっています。D&O保険では、従来の役員賠償責任に加えて、サイバーリスクに関連する損害賠償責任も補償する商品が提供されています。

サイバーリスク補償には、以下のような内容が含まれます。

  • サイバー攻撃による損害賠償責任

  • 情報漏洩による損害賠償責任

  • データ損失による損害賠償責任

  • サイバー攻撃を受けた際の対応費用

4. D&O保険を選ぶ際のポイント

D&O保険を選ぶ際には、以下のポイントに注意が必要です。

  • 補償内容:必要な補償内容が網羅されているか

  • 保険料:保険料に見合った補償内容か

  • 保険会社:財務健全性やサービス体制

  • 付帯サービス:リスクマネジメント支援サービスなど

5. まとめ

D&O保険は、役員個人の財産を守るだけでなく、企業の経営安定にも役立つ重要な保険です。近年活発化する訴訟や高まるリスクへの対応として、D&O保険の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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