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音楽の在り方、そして伝え方

本来なら5月のGWに行う予定であったDimension “31”レコ発ツアー。アルバム発売から約ひと月半を経てのライヴが、先日古巣であるBluesAlley Japanから配信された。

日本でコロナ感染が流行した時、ライヴハウスの存在がクラスター発生の諸悪の根源の様な報道・印象付けをされたことに腹が立ったものだ。

自分の世代が知るライヴハウス(Jazz Club)の形態と、若年層が指すライヴハウスの実態とは経営方針・内容・そして環境さえも違うのに何故同じ括りにされてしまうのか…とても納得出来なかった。

とは言え、私達の活動や人間一人ひとりに与えられた「役目」を守ると言う意味でも、世論にただ刃向かう行動は得策ではないと思った。

どのアーティストも皆同じ考え方だったはず。
4月下旬、誰が真っ先に突破口を開いて行くのかなと、とても興味があった。
大物アーティストの方々に先陣を切ってその安全性やエンターテインメントの必要性を見せつけて、国民感情を和らげて欲しいと望んでいたが、やはりリスクは高い。
誰もやらぬのなら・・と自分達レベルの規模で始めようというのが今回の発端。

止まる事の怖さ、止める勇気、そして同じ様に始める勇気

当初は集まる事さえNGであり、日々アナウンスされる状況に一喜一憂していた。
その中でこの配信ライヴのスケジュールを組むのも中々悩ましい作業でもあった。

結果的には本当に素晴らしい1日となった。沢山の方々が配信ライヴを観てくれて楽しんで頂いたとの声が聞こえている。本当に有難い。
日頃の鬱憤をはらす…という意味ではないが(笑)、自分が思う事は全て吐き出せた気がする。
2人体制になったDimension。新作も好評だと聞く。だけどそれを発表する場もタイミングも失った、ある種の喪失感は本当に自分を萎えさせていたからだ。

新体制になってどう変わったんだろう?きっと今までとは違うよ」と誰もが思う事に対して答えを聴いて欲しかったし、またその変化を感じて欲しかったというのが本音。
-人が変われば音も変わる。変わることを望んで出した答えが ”31” -
本来ツアーで予定されてた新曲を含むセットリストの約半分強を演奏したワケだけど、残りは秋のライヴにキャリーオーバーとして残しておいた。是非楽しみに待っていて欲しい。

改めて、今回の配信ライヴに関わってくれた全てのスタッフ・ミュージシャン、そしてオーディエンスの皆さん全てに心から感謝しています。本当に有難う!!

料金設定や配信のルールも含め、最後まで右往左往したけど結果的に良かったと思う。
低料金にての配信もこのコロナ禍に於いてはアリだと思うけど、自分の世代のライヴの料金を下げる事による弊害が下の世代に出るのが嫌だったし、プロの職業の仕事を長期無料化するのも少々抵抗があった。
なので今回の配信ライヴは、そういう自分自身の心の不安を払拭する為のものでもあったのかも知れない。

配信ライヴ・・・やはり最初はチカラの入れどころが分からなかった。
サウンド的にはクリアーな音質でお店の外側にいる人達に届けられるワケだけど、1stセットを終えた段階で伝え方の難しさを感じた。

本来なら無観客での生配信ライヴな訳なんだから、向こう側にいるオーディエンスの方々のコメントを見ながら?進めて行くコミュニケーションが必要なのかなとも発案当初は考えた。
だけど普段のライヴ自体、目の前にいるお客さんとコミュニケーションしながら進行して行くものでもない。
私達Jazz/Fusion系のライヴは、フリースタイルな面がその音楽の核になる場合がほとんど。そのフリーなシーンこそがプレイヤー同士の会話だったり、その場の空気感を感じ取って交わされる音楽のストーリーの本質でもある。

無観客のステージ上でその空気感や雰囲気を感じ取り、音で伝える術の大切さ・・大袈裟かもしれないが、それを今回の配信ライヴで学んだような気がする。
まぁまだ慣れてないといえばそれまでなのだが(笑)

ライヴ=Live showは生きモノ
ライヴハウスに於ける音楽は、大規模なコンサートの様に演出された「完成度の高いエンタメ」とも少し違うと思っている。
そこには演者の熱量によって左右される「その場限りの何か」が生まれ、尊重される。
それを創り出すのは演奏者だけではなく、間違いなくオーディエンスの方々の存在はやはり大きい。無論コンサートのショウも大なり小なりそういう要素はあるべき(持つべき)なのだが…。
お客さんもその場に足を運んできて貰い聴いてもらうケースと、自宅で寛ぎながら聴くのでは印象も全然違うだろう。
その温度差をどう埋めていくか・・・今後の課題であり、それこそ自分のスキルアップにもつながる。ますます自分だけの良いトーンを追求する時なんだと思う。

ついでに音楽のリモート・テレワークについて

私自身はリモートやテレワークで伝えられるモノであれば賛成。
例えば音楽教育や細かなミーティング、そして録音のオーバーダビングといった必ずしも対面でなければ成り立たないことでない限りの案件は、効率的にも今後のためにも必須だと思うしそのつもりで準備しておく方が安全だし便利。
注意すべき点は「時間の使い方
ある意味時間的な制約が其々にオープンになる事もあって、ハードワークになったりルーズにもなる。移動時間が有効に使える反面、時間の流れがタイトになってくる。
こと音楽の仕事という場合に於いて、一般社会に比べて無駄な様に見える形式が残されてるのも事実かも知れない。

だけど無駄を省くことが全てにおいて良いとは思わない。
無駄と思われる雑談の中から素晴らしいアイディアが生まれることは沢山ある。
音楽に限った事ではないが、一人で考え、時にネガティヴな発想へと陥ってしまう場合も多々ある。
そういう場合こそ皆で集まり、力をぶつけ合うことが必要だと思う。テキストを書く事も大事だけど、どんな時代になろうと言葉をぶつけ合う大切さは失いたくない。このコロナ禍で学んだ事のひとつでもある。

これからは様々な流れの中で試され、試行錯誤しながら色んなものが淘汰されていくのだろう。
その中で自分に合うやり方・考え方を時の流れに沿わせて表していく時代になったのだと、渇を入れなきゃ!と自分自身に言い聞かせている(苦笑)
そんなに強くないんだけどね!(笑)

今月下旬位からソーシャルディスタンスを取りながらのライヴが始まる。
今まで通りとはいかないまでも、生きた音を体感する事によって様々な想いも生まれると思う。
まだまだ油断は許されないけど、かつてのライヴハウスやエンタメを取り戻すためにも後一年はこのような状況を強いられるだろう。
それでも考えを出し合い、音楽の場を失くさないよう頑張っていきたい。
そしてそして・・皆さんの前で演奏出来る日を、心から楽しみにしています!

先ずは髪切りに行かなきゃ!(笑)

日々の思いを綴ってます。趣味の事、音楽や楽器の事、そして今までの経験の事。何かの役に立てれば嬉しいです