見出し画像

1Day防災ポーチの運用

2021年の4月、私は防災ポーチを作った。
stand.fm で、ポーチ作成の様子をLIVE配信したりなどした。

Midnight Meadow 真夜中の牧草地 防災ポーチ作ってみるLIVE!

4月と言えば熊本地震、という熊本県民。復興目覚ましい一方で、まだ傷跡があちこちに残ったままである。
私は、といえば、生まれ育った阿蘇地域がもともと災害が多い地域で、良くも悪くも被災慣れしている。言うなれば被災のプロである。
そんな自分が皆に伝えられることは何だろう、と試行錯誤した結果、
日常生活の中で楽しくオシャレに防災!
というところに持って行くことになった。

今回ご紹介する1Day防災ポーチ、コンセプトは
『私が24時間生き延びるために必要なもの全部入り&Kawaii』
だった。
これを作って運用して、1年余り。
どんなふうに使って、どんなときに役に立ったかを振り返ってみようと思う。

材料を揃える前に

まず、なにはともあれ自前の道具で24時間生き延びる、というコンセプトから考えた。

家を離れているときの被災においては、まずは帰宅することを目標にする。準備の整った自宅に戻るのが一番確実だ。
ガイド活動などで阿蘇の中にいれば、おそらく実家が第一目標になる。実家もまた被災のプロである。頼れることは熊本地震のときに立証済みだ。
移動中の被災であれば広域避難所や大きな商業施設に身を寄せることになるだろう。災害の種類によるが、どの場所がどの災害に強いのか常に考えて、既に目星をつけている。

私が24時間を生き延びる時に、なにが一番耐え難いか、と考えた時に、空腹は絶対無理、と考えた。ちょっとくらいの空腹で動き続けるなんて芸当、できるわけがない。私は私の食いしん坊ぶりをよく知っている。よって、食料が確保できていることは絶対条件となる。
私の基礎代謝が1100キロカロリー。活動強度は3、座り仕事と軽い家事程度なので、一日の消費カロリーは1700キロカロリーくらいを確保したい。しかしそれをぜんぶ携行食で賄うことは不可能だ。嵩張ることこの上ない。なので、1食分、約400キロカロリーを目指して、携行食料のボリュームを調整することにする。

次に耐え難いものが、環境の変化だ。暑さ寒さだけでなく、体が濡れている、日焼けが辛い、といった些細なことで、いきなりパフォーマンスが落ちる。寒さはまだ平気だが、暑いのは覿面にダメ。よって環境変化を凌げる用意と、体調を整えるための準備物が必須となる。

この自問自答が、防災ポーチづくりにはなにより大事になる。
自分が使いこなせるものしか入れない、というのがポイントだからだ。
自分で選んで入れるからこそ十分に使いこなせるのであって、人が揃えたお仕着せのものを使っても、おそらく身を守ることはできない。
自分に問いかけ、自分で選ぶ。ポーチづくりだけでなく、あらゆる防災シーンにおいて、このスタンスはとても大事なものになると思う。

ここまでやってようやく、必要なものの買い出しに行く。
道具のほとんどは100円ショップで揃えることができるので、ここでまずおおよそのものを買い揃えてから、スーパーや登山グッズのショップなども回って、準備を進めていく。
必要、と思って購入しても、いざポーチに詰める段になって、入らなくて諦めることは多い。その取捨選択もまた、自分自身の防災スタンスを明らかにするために必要なのだ。

そして買ってきたものがこちら。

私の防災ポーチの中身

というわけで、こちらが私の防災ポーチの細かな概要となる。

最初に揃えたのは以下のもの

【ポーチ】
DAISO 14×11×5,5cm

【空腹対策】
1本満足バー 195キロカロリー

【暑さ寒さ対策】
DAISO 緊急簡易ブランケット 140×210cm
アミノ酸クエン酸ゴールド 500ml用 1包
塩分チャージタブレット 3つ
熱さまシート 1つ
五苓散 2包

【健康対策】
キズ用軟膏 1本
ワンタッチパッド Mサイズ2枚
持病の喘息の薬 1,5日分
痛み止めの薬 4回分
赤玉はら薬 2包
新セルベール整胃 2包
総合感冒薬 2包

【衛生対策】
オーラツーマウスウォッシュ 2包
ポケクリンハンドジェル 3包
DAISO ペーパーソープ 1袋30枚
生理用品 ナプキン、おりものシート、タンポン 各2

【その他】
現金 2500円程度
DAISO コンパクトタオル レギュラーサイズ 2つ
ポリ袋、レジ袋 適宣
化粧水・乳液・日焼け止め
カード(鍋ケ滝、阿蘇神社、瀬田神社)
テレホンカード
メモ帳
DAISO マスキングテープ 赤 1つ
ミニカッターナイフ

ポーチ外側に笛

買ったはいいが入らない

ポーチを準備する前は、実はフルグラ携帯サイズも入れようと思って準備していた。チョコレートもクッキーも入れたかった。しかし、目標カロリーを達成しようとすればするほど、嵩張ってしまいポーチに入らない。
なので、このときは1本満足バーひとつだけをポーチに入れて、他の食料はバッグのポケットに分散して忍ばせる運用に変更することにした。
こういう防災グッズに入れる食料は、消費期限を手帳に控えておいて、期限が近付いたら食べて次の新しいのを補充するようにすると安心。
そして、欲しいものが欲しいだけ入れられないという難しさを、つくづく感じた。
空腹がいちばん耐え難いのにポーチには空腹対策が満足に入れられない、というのは、なかなかショック。

そして季節によって、熱中症対策のものが多めに入れたり冷えピタや塩タブレット、五苓散など)、寒くなってきたら一部用品は入れ替えて、カイロにしたりなど、という運用を考えた。

ちなみに2021年9月、防災の日スペシャルコンテンツとして、防災ポーチの活用についてふりかえりを設けている。

Midnight Meadow 〜真夜中の牧草地〜 20210901 https://stand.fm/episodes/612ec2f0384e7200069f2b06

被災したときに必要なのは道具だけじゃない

赤いメモ帳に書いているのは、
 親や兄弟の連絡先
 銀行口座の番号
 自分のプロフィール(声が出せないときのため)
など。カッターはあると何かと便利と聞いて、小さいものを探して入れた。
電気や通信が使えないとき、アナログに記した情報がなによりモノをいう。
紙に油性のボールペンで書く。それだけで情報が残る確率がとても高くなる。紙はかさばらないので、ぜひ重要な情報は記して持っておいてほしい。

実は大事な、「げんきがでるもの」

マスキングテープは、避難所で自分のものに印をつけたり、エリア分けをしたりするのに使うために入れている。マステ好きなので、持っているだけで元気が出る、という効能もある。
同じく持っているだけで元気が出るものとして、私の好きな風景のカードを3枚、忍ばせている。うち2枚が神社の写真なので、もしかしたら神様に守ってもらえるかもしれない。

持っているだけで活力になるものは、活動中でも、避難生活中でも、心の支えになる。家族やペットの写真もおすすめ。推しのブロマイドとか。

運用4か月でいちばん使ったもの

このポーチを用意して4か月、『私が24時間生き延びるために必要なもの全部入り&Kawaii』のコンセプト通りに、ほぼ全ての活動先へ持ち歩き、その度ちいさくちいさく私の活動は助けられてきた。

No.1はポリ袋、レジ袋

ゴミを拾うのに使う。ゴミをまとめるのに使う。食べ物を分けるのに、濡れないように包むのに、と、活用するシーンがとても多く、もう何度補充したかわからない。最初は3枚しか入れていなかったが、今は少なくとも5枚は入れるようにしている。最終的に、車にレジ袋を一束積むところまでいってしまった。袋はとにかく様々な大きさで多めに持っておくのがいい。

次点、医薬品。

特に痛み止めの薬は、片頭痛がいつ出るかわからない私にとってはお守りのようなもので、辛くなったらすぐ飲める、という安心感はとても大きかった。そして暑さ対策の漢方薬、五苓散は、二日酔いの薬でもある。お酒の席にも心強い相棒なのだ。

このポーチにプラス、
 ペットボトルの水 1本
 ウェットティッシュ携帯用 1つ(ノンアルコールタイプ)
 ボディシート 1袋
を携帯するようにしていた。
ペットボトルの水は、清潔な水がない状況で、傷の洗浄に使えるし、万が一火山の噴火に遭遇してしまったら、頭を守るためにも使える。少々重いが持ち歩いて損はない。
……と思っていたが、やっぱり重い。
最終的に小さめの水筒に落ち着いた。
火口のそばにいくときはペットボトルを持っていきます。ウチの火山、いつ噴火するかわかんないし……

そしてアミノ酸クエン酸ゴールドは、水に溶かすと疲れが取れるおいしいレモン味のジュースが出来上がる。ディスカウントドラッグコスモスで手に入る。地味にリニューアルして効果が高くなり、今の正式名称はわからない。
スポドリの素や塩タブレットは、夏の時期には心強い持ち物になる。
主だった食料が入らなくても、ちょっと口に放り込んで甘かったり酸っぱかったりするものは、活動にメリハリがつくので、スキマにねじこんででもいれておくのがおすすめだ。

1年後はこうなった

Midnight Meadow 防災ポーチ運用振り返りライブは、2022年の4月に行った。
広げてみると、一年前とかなり内容が変わっている。

現在の中身

もうすこしわかりやすくしてみる。

  1. ポーチ本体(DAISO)

  2. 化粧水と日焼け止め 2回分

  3. 緊急簡易トイレ(DAISO)(new!)

  4. アルミブランケット(DAISO)

  5. ペーパーソープ(DAISO)

  6. 阿蘇の景色のカード(先述のもの)

  7. テレカ(new!)

  8. 粉末のお茶と塩タブレット、ペットボトルの蓋(穴あき)(new!)

  9. メモ帳、現金少々、マステ(先述のもの)

  10. 生理用品

  11. ポリ袋

  12. 夏対策グッズ 熱さまシートと五苓散

  13. 賞味期限と季節でアウトしたもの カイロとはちみつ、アミクエゴールド

諸事情で写っていないが、小さなカッターも入っている。
緊急簡易トイレとテレカ、粉末のお茶と塩タブレット、ペットボトルの蓋(穴あき)に(new!)がついている。
粉末のお茶はホテルの備品だったもの。発災時はどうしても環境が荒れ、ほこりっぽくなるため、手持ちの水にまぜてうがい用に、また喉を効果的に潤すために忍ばせた。
また、ペットボトルの蓋にキリで穴を開けたものは、ペットボトルの水をシャワーに変える秘密兵器。蓋の口に合わせて2種類の大きさを用意してみた。(多少合わなくても使えることも確認した)

相変わらず、ポーチはパンパンだ。簡易トイレまで入れたので、常に限界までふくらんでいる。
必要なのに嵩張るのが、生理用品だ。まずは一昼夜分と思って最小限の数だけ入れているが、空気を抜いてもなおスペースをとる、地味に厄介な存在。体が女性というだけで、いのちを守るポーチの中に、逃れようもなく嵩張るものを備えなければならない、というのが、明らかに性差によるハンディキャップだよなぁ、と、常々苦い思いを抱えながら突っ込んでいる。

災害は、いつだって起きる。
ごはん中だって、結婚式の日だって、風邪で寝込んでいるときだって、生理の時だって。
自分が一昼夜、そこそこ快適に生き抜き、拠点へ戻るための必要なもの。自分で選んで入れているのに、なぜ苦い思いがつきまとうのだろう。
こういう話をもっと共有していきたいなぁと思うんだよなー。

ちなみに、災害レスキューナースの辻直美さんは、手持ちの防災ポーチにペット用の吸水シートを入れているそうだ。
怪我した時の血の処理に、という想定だったそうだが、電車の中で気分が悪くなったかたを助けるのに役立った、という話を聞いて、とてもためになった。
生理用品も……怪我したとき用を兼ねる、と思うと、ちょっと気が楽になるかなぁ。

これからも、苦かったり、悶えたりしながら、
『私が24時間生き延びるために必要なもの全部入り&Kawaii』の防災ポーチの運用を続けていこうと思います。

あと、誰か「自分の防災ポーチ見てみて!」とか、「つくるの手伝って!」とかあったら連絡ください。おまちしてます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?