日本ジオパーク全国大会ガイド講習会に参加してみた

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10月3日~5日の日程で、第11回日本ジオパーク全国大会 宍道湖中海ジオパーク大会がオンラインにて開催された。

私はガイド講習会に申し込み、インタープリテーションを学んできた。その様子を少々レポートしようと思う。

ガイド講習会1日目


講師の菊間彰 さん(一般社団法人をかしや代表理事)と、仲上美和 さん(環境教育事務所Linoworks 代表)によって行われたインタープリテーション講習会。
メインでお話をされていたのは菊間さん。親しみやすい笑顔が印象的。
話は、ムサシとコジロー、いえ、宮本武蔵と佐々木小次郎の戦法について、から切り出された。
佐々木小次郎の武器は長い1本の刀。ガイドで言えば、知識や情報で戦うスタイル。強いのかもしれないが、通じない局面もある。刀1本なくしたら、もう戦う術がなくなる危険性もはらんでいる。
一方の宮本武蔵は、長短2本の刀で戦うスタイル。これは、ガイドでいえば、知識を小出しにしながら、体験と五感を使って楽しませるやり方になる。
身近な偉人を持ち出しての分かりやすい説明がお見事。そして宮本武蔵は熊本と縁が深いお方なので、尚更嬉しい。

そこから、ZOOMの使い方練習などを経て、萩ジオパークのガイドによるオンラインツアーを2本立てで見ることに。
まずは屋内バージョン。10月でハロウィンの月であることから、ツアーの担当者が魔法使いスタイル。かわいい。場面転換で出てくるキャラクターも可愛い。お茶をたてたり、茶碗を叩く音を聞かせてくれたりと、画面越しでも確かに感じる、五感が震えるツアーだった。
次に屋外バージョン。城下町の成り立ちについてのツアーで、三角州の上に町が出来ているという内容を、気持ちのいい青空をお供にガイドさんがお話してくれる。
そこに突然の観光客!
仕込みなのかどうかわからないが、とても自然にツアーの中に入ってきて、一緒に話を聞いている観光客……!
ハプニング感ある。楽しい。
地下水位、という目に見えないものを見せるために、かなり大がかりな模型が使われる。(すごかねこれ用意したったい!)
お客様が模型を触り、土をすくう。一緒に体験しているような気分になる。
さすがにインタープリテーションのお手本となるツアーだけあって、様々な工夫が詰め込まれていた。

休憩の後は少人数での別室、ブレイクアウトルームに飛び、気付いたことを話し合うお時間に。鳥海山ジオパークの代表者が森さん。下北半島ジオパークの方が原さん、そして山崎、と、なんか原々森々山々した名前の3組が集まり、意見を共有。(そしてガイド勉強会のクセでつい取り回しをしてしまう山崎)
その後また大きなお部屋に戻って、意見交換を行った。
それぞれ見るポイント、感動したポイントが違うなぁ、と思いながら聞いている。住んでるところが違うと響くポイントも違うんだなぁ。
そしてここで、満を持してインタープリテーションの神髄を学ぶ。

○しゃべるな危険
……参加者が感じる機会を奪わない
○体験的な手法を用いる(体験学習法)
……主体的な発見を促すやりかたを用いる
○表面ではなく裏にあるメッセージや物語を伝える
……見えるものを通じて見えないものを伝える

「しゃべるな危険」はイチからヒャクまで「それな!」という感じだな!
詰め込みすぎないようにするのは難しいが、今回はそれを学ぶための講習会だということを、改めて肝に銘じた場面だった。この言葉聞くためだけでもガイドは参加したほうがいいよマジで。

そしてそこから、他己紹介と称して、他のジオパークのことを紹介してみよう、というワーク。
私は南紀熊野ジオパークの方とペアで、先方は3名での参加だった。平野さん、新見さん、伊藤さん。まずは私が南紀熊野の紹介を作ってみることに。
皆様それぞれ活動エリアが違うらしく、おすすめの推しポイントがどんどん出てくる。圧倒される。
そのなかで私が気になったのが、「なんたんみつ姫」というイモについて。イモができる土壌の年代や、それがどこで味わえるか、どんな環境で食べられるかなどを聞き、秋らしく食欲に訴えかける切り口でいくことにした。
一方、私が先方にお伝えしたことは、要素があまりにもとっちらかっていて、平野さんがまとめるのに悪戦苦闘されていた。人の話を聞くのはできるけど、自分の話を伝えるのはヘタという弱点が、ここで浮き彫りになる。その節は申し訳ありませんでした……
それでも、紹介では阿蘇の成り立ち、とくにカルデラの壁が破れて水が抜けていく様子をすごい熱量でお話してくれて、嬉しかったです。

いろんなジオパークの他己紹介を興味深く聞いて、1日目終了。
次の日はいよいよ自分のジオパークを紹介する。五感を使って、楽しく、体験を通じて伝える紹介を、明日までに……考えなければ……!

ガイド講習会2日目

削ぐ、絞り込む。
持ち時間10分の中で自分のジオパークを紹介するのだから、かなり要素を限らないと厳しいな、という印象。
実際にやると、やはり時間のマネジメントは難しく、10分を超えるところもちょいちょいと。
どのジオパークも工夫を凝らしていた。十勝岳ジオパーク構想の生ピートやザルいっぱいのホップ、ビール缶と焼肉、早着替えなど、要素盛りだくさんにして飽きさせない進行のところもあれば、隠岐ジオパークのように自分の身の回りの環境をひとつひとつ紹介することで、その土地の歴史と成り立ちが感じられる内容のところもあって、それぞれ面白かった。
島原半島が新鮮野菜を見せてくるのとか、とかち鹿追や隠岐の動物が出てくるのとかはホント火力強い。下北半島のマグロが横切るだけなのに存在感というか圧がすごいのとか自社牧場のヨーグルト推しなのとかはニヤニヤ笑いが止まらなかったし、ふくい勝山の中国語を話していたかもしれない恐竜とか、土佐清水の世界一きれいなウンチとか、パワーワードがいっぱい拾えたのも嬉しかった。
これ書きすぎるとキリがないので浅く触れるだけになるけど、実際は各ジオパークともノートいっぱいに気付きを書き留めております。

それはそれとして気になったのが、
「自分が見せているものが、画面にどう映っているか」
を把握できてない場面が多かったこと。
ラミネートしてある写真は照り返しを受けて光るので、ひどいときには画面の三分の一が光の帯に包まれて見えないことも。パソコンモニターとカメラが同じ向きに付いているから起きる悲劇。
また、せっかくいい素材があっても、一瞬しか見せてもらえなかったりすると、その後もずっと気になってしょうがなかったりもする。このへんの塩梅は実際のガイドでもかなり難しいので、オンラインになると精度を上げてあげてやっていかないといけないなぁ、と感じた。

さて、自分の発表についてどう組み立てたかを、メモ程度に記しておく。
10分で自分のジオパーク紹介。何しよう。今草原が綺麗だから草原の話にしよう。草原と言ったら、森と草原の間の防火帯作り、輪地切りをやっている頃なので、輪地切りしているオジサンが出てきたら面白いな。
よし、一人二役だ。
そこで、オジサン用のヘルメットを作る。材料はクリアファイル、マスキングテープ、ボウル(大)。衣装はちょうど野焼き用のツナギを持っていたのでそれを使う。輪地切りには刈払機を使うな。身の回りで刈払機に形が似ているもの何かあるか?よし扇風機だ、扇風機を持とう。ついでに野焼きの火消し棒も作っておこう。
画面に着替えが映らないように、身を隠せる範囲を確認。そこで着替えるためには、ツナギをあらかじめ半分着ておく必要がある。じゃあ背もたれがあるイスはジャマなのでやめよう。衣装が映らないようにコートを着よう。コートが青いな。ナウシカネタ入れるか。(安直)

雲海と夜明け大

金色の草原と青い空。ここにみんなを連れてくるのに、写真は使わない。想像力を借りよう。目を閉じてもらって、声掛けをしてイメージの中に連れてくる。その方が、たぶん綺麗な草原を見て貰える。
草原の話のテーマはなんだ?オジサンのお爺ちゃんも輪地切りをしてきたし、そのお爺ちゃんもしてきた。代々守ってきた草原だけど、今は守り方が変わってきている。みんなが来て、草原を楽しむことが、草原の保全になっている。そういう話をしよう。熊本弁で。

実際にやったときは、私の番はけっこうあとで、時間も迫っていた。目標5分に設定。じゃあ野焼きの話は深追いやめよっと。
早着替えが上手くいくかヒヤヒヤだったが、下半身に既にツナギを着ていることを悟らせずに前半を乗り越え、ひとり芝居と着替えをこなし、オジサンになって登場ができたので、もうそれだけでヨシだ。
参加者に声もかけたし、話も退場もすんなりできた。参加している感が出てるといいなぁと思いながら〆る。
実施時間正味6分のうち、目を閉じてもらう時間40秒、私が画面から消えていた時間40秒。80秒も不在の時間があるツアー。見せた絵は、自分で描いた2枚きり。すげぇな我ながらイミわかんねぇや…(白目)
着替えの着想は、1日目に他己紹介で見た、おおいた姫島さんの「凍れ」の表現からだった。マジサンキューでした。

振り返ると、草原というテーマで一点突破しつつも、案外色んなことを考えていたしやっていたな、という感じ。

tただしい輪地切りスタイル

こちら正しい輪地切りスタイル。

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急ごしらえ輪地切りオッサンスタイル。

2日間通してやってみて

インタープリテーションやっぱいいなぁ!

この講習会の12日後にオンラインツアーを控えていた身としては、改めて伝えることの楽しさを再確認したし、お客様にとっての「楽しい」とは?というところについて考えを深められたので、参加してよかったことばかりでした。もうこれ毎年やったらいいのに。
4年前にも男鹿半島・大潟ジオパーク大会のときに、ガイド分科会でインタープリテーションを扱ったけれど、時間がなさすぎて泣きそうだった。

インタープリテーションを体験し、学ぶ間にも、その組み立てにインタープリテーションがふんだんに盛り込まれていることまで感じて、十重に二十重に学びが大きい2日間でした。ありがとうございました。

講師の菊間さんのインタープリテーションについての本を紹介して、退場することにします。
当日参加された皆様、準備くださった皆様、菊間さん、仲上さん、お疲れさまでした。

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