見出し画像

一人営業通信dgtl_Vol.6「ヒットの要素4/6_ボリューム」

#4ボリューム

※この記事は、2018年にに営業ツールとして発行したニュースレターを加筆修正してnoteにアップしたものです。

さて今回第6回目の「元バイヤー目線~」は、4ツ目の要素であるボリュームについて解説いたします。

書き出しから何なんですが、今回のテーマが一番書きにくいっていうか、非常に悩ましい要素なんですよね……。なぜならこれって割と個人的な趣向が大きい部分だと思いますし、それにどちらかというと小売側の無茶な要望に近い所もあるので、立場や場合によっては飲み込みにくいお話があるかもしれません。
しかし様々な立場の要望を知っておくことも、これも売り上げをつくるために知っておいて損はない情報と思いますので、無理を承知で解説をさせていただきます。

早速ですが、ボリュームというのはそのまま読んで字のごとく量のことです。それは商品そのものの量でもあり陳列する場合のブース全体の量でもあります。これによって消費者のどんな無意識を刺激しそれが売上につながるのか。
結論からいえばボリュームが多いに越したことはありません。しかもそれは少ないよりも多い方がいいだろうという単純な理論です。
かなり乱暴な着地の方法ですが、しかしそこにたどり着くまでには細かい思惑があれこれとありまして、例によって説明が必要なのですが、ややこしい説明を省くために僕の経験を元に考えた失敗例(事実を元にした作り話です)を書き出してみたいと思います。

以前私が担当したある催事の中で焼き菓子を売るお店がありました。メインを中心に全部で10種類ほどの商品展開があるお店で、ブースには個包装されたが焼き菓子が整然と並んでいます。陳列はすごくきれいです。清潔感もあり、パッケージやPOPにもこだわって、店員さんの制服もおそろいのTシャツで気合が入っていました。
しかし結果からいうと、ここは売り上げが伸びずに終わりました。
商品単体で見ると凄く良いものです。素材にこだわっていて、メディアの露出も多く話題性だって充分にあります。
ただ問題は、陳列のボリュームです。整然と並べた商品は全部で10種類。陳列台に10種類×5個ずつの商品が並んでおり、その周りを飾るように、お店の世界観を表現する装飾品やPOPが並べられていました。佐藤はこれが売上の伸びなかった原因と考えます。

まず、商品それ自体が小さいものを売るときに付きまとう悩みだと思うのですが、小さいものは商品単体での(見た目の)存在感が薄いです。会場が広ければ広いほどそれは顕著で、パッケージが可愛くても、陳列がきれいでも、一歩二歩三歩・・・離れてしまえばそれは「何となく簡素な売り場」にしか見えません。
それに催事というのは基本的に一過性の消費者が一過性の買い物をする場だと僕は思っています。(※固定の催事にレギュラーで出続けるお店が、固定の顧客を持っているという場合もあるでしょうが、それごく稀な成功パターンと思います。)
一過性の消費者が無目的にブラブラと会場を歩く時、足を止めるのは目に付くものです。会場には肉から魚から総菜から酒からあらゆるジャンルの物が並んでいるわけですから、つまりは無目的に来る消費者を、あれこれと目移りする中から捕まえるには、目に付く場所づくりが必要なんだと思うんですね。
いやしかし、この例の場合、このお店はきちんと装飾やPOPで世界観を表現していたじゃないか、というところですが、その装飾というのが悩ましいものなのです。
店の世界観を表現するための方法としてはいいと思うのですが、ただ商品との組み合わせを考えた時に、果たしてそれが功を奏するのかという点ではいかがでしょうか。
僕個人的な意見としては、殊食べ物を売るときには、販売に必要なもの以外は邪魔だと思います。
例えば、マドレーヌとかフィナンシェとか、ヨーロッパの焼き菓子を売る店だから、ヨーロッパっぽい雑貨やPOPを商品と一緒に並べる。商品そのものが小さい焼き菓子のようなお店でこれをやってしまうと、全体的にゴチャゴチャと細かい物が並んでいて、どこに焦点を絞っていいのかが判らず、何を売っているお店なのかが判らないと思います。
見る人によってはここを雑貨屋と思うかもしれませんし、そこに焼き菓子があると視認できたとしても、雑貨屋が焼き菓子を売っているのか、と勘違いされなくもありません。人は第一印象を変えることが難しいものです。お菓子屋が雑貨を並べているのと、雑貨屋がお菓子を並べているのでは、商品の価値が変わってきます。

それではこの焼き菓子のお店の場合、どうするのが正解だったのか。佐藤的な解を導きたいと思います。
まず、商品を整然と並べる必要はないと思います。商品ごとの区分けがされていて、種類が判り易く並べられていれば、カゴに山盛りでも、木の箱にざっと入れられた状態でもいいと思います。多少離れた場所からでも、それが焼き菓子だということが判り、数種類の何かが売られている(=選べる)という事実が分かることが必要です。
もっと言うなら、種類をもう少し絞ってもいいと思いますが、この辺はすごく微妙なところです。幅広くニーズをカバーするのか、ブースをわかりやすくするのか。売れ筋がどれくらい売れ筋なのか、そういった状況を見ながら判断してもいいと思います。

POPは最低限でいいと思います。最低限の中でも必要なのは、どこから来た何というお店で何を売っているのかということが分かること。
そして、装飾品は不要です。販売スペースは基本的に商品と商品を陳列するための容器以外は視線をブレさせる要素でしかないと思います。
ただ商品と同時にお店の世界観を伝えたいという場合は、ブースを飾るのではなく、販売員がそれを身につけるべきです。お揃いのTシャツ、帽子、エプロン、バッジ、髪型。どんな方法でも表現はできると思いますし、逆に言うと、そこで収まらないような表現はするべきじゃないと思います。
とにかく重要なのは何を売っているのかが一目でわかる、目に付く、無駄のない陳列というところだと思います。

では逆にです。ボリュームが多い場合。これはどうでしょうか。
いわゆるVMD的な話の時は、必ずこの定数定量という話題が出てくるものだと思います。
ここがですね、個人的な趣向が出てくる部分なのですが、僕の個人的な話をするならば、山盛りにされた陳列は嫌いじゃありません。僕の場合は食品の出身で主戦場は催事でしたからこの考えは強いです。
これまでの理論に則って、山盛りにしたときに生じるマイナス要素は何
かと考えると、それは「雑さ」とか「安っぽさ」とか「管理の低さ」などあると思いますし、それに先ほどのボリュームが少ない場合の例と照らし合わせるなら、多すぎても消費者は視点を定めることができないですし、何が売られているかりにくくなるし、売上から遠ざかる要素は沢山あると思います。
しかしですね、僕が思うに催事場などの一過性の商売では、とにかく消費者の足を止めること、売り場の前まで足を運ばせることが何よりも重要だと考えます。
つまりは、多少の傷を負ってでも、その先にある売り上げを目指すという、非常に損して得取れ的な発想ですが、それでいいと思うのです。催事っていわばお祭りですから。少しくらい常軌を逸脱してもそれはお祭りだからということで片付くと、僕は思います。
そしてこの場合当然、商品はいいものだという前提でお話をしていますから、売り場の前まで呼び込んでしまえば、あとは商品の良さを伝えるだけですから、勝率は格段に高くなると思います。

この辺りは賛否あると思います。売り場づくりはきれいに整然としているに越したことあないという人もいるでしょうし、それで実際に売り上げをとっているという人もいるでしょう。扱っている商品や会場の雰囲気によってもこの辺は変わってくると思います。
だから今回書いていることは、半信半疑で読んでいただくのがいいと思いますが、しかし先ほども言いましたが、お祭りはお祭りです。催事は催事だし、イベントはイベントで、通常のお店の商売とは別物と考えて、一定の方向に振り切ってしまったほうが、消費者には印象がよく、わかりやすい商売ができるのではないかというのが佐藤の発想です。

というところで今回はここまで。ご参考にしてみてはいかがでしょか。

・・・つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?