鉱石の玉手箱(2) 古崎真帆

アホーイト入り水晶

人に伝えなければならないことは
どうしても隠し通せない

内側からこみ上げてくる
美しいものへの賛美の衝動

それが本物でも贋物でも
見た者の実感が決めたらいい

必要なとき
それは自ら光を放つのだから 


カテドラル水晶

聖堂の窓は
朝日を映し 夕日を映して輝く

幾重の塔は
雲に磨かれ 雨に洗われて立ち続ける

内部に深い慈しみと悲しみの母の心を抱いて


マーカサイト入り水晶

切り出して磨き上げる前の静寂

こんなにも静かにあなたは待っているのに
光に包まれて その姿が定かには見えない

握りしめていたら氷のように溶けてしまうのだろうか 


タンザナイト

長い刻をかけて結晶した夜の雫が
再びの光を得て その中へと私を誘う

深く青く澄んだその底は知れず
どこまでも沈んでいくうちに
憂いも悩みも背後に浮かんでゆく

水面に届いたらそのまま消えてしまえ!
私はそれにはかまわず 海の中に星を探すのだから 


アストロフィナイト

そこにあるものを あるがままに見よう
もう迷わない
道は必ずどこかに続いている

空には星 地には石
でも 星は流れ 石はころがるから
その流れに乗って ころがり落ちて
そこからまた歩き始めよう

負けちゃったり 泣いちゃったりしながら
歩いていくと
足元にころがっている星を
拾ったりすることもあるからさ