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おせち料理なるもの

食品屋さんなので、たまにはそれっぽいことも書いてみようかと。

おせち料理とはそもそも何なのか?

おせち料理と言えばお正月の代名詞みたいなものですが、今では百貨店や料理屋さんの受注・配送商品になって久しいですね。作って見ても結構楽しいんですけど、皆さんお忙しいのでこれも時代ですね。

さて、おせち料理とは何なんでしょう?おせち料理とは「御節料理」と書きます。つまり「節句」を祝うための宴の料理だったようです。とはいえ節句とは結構たくさんあるようで、有名どころとしては桃の節句(3月3日:ひな祭り)や端午の節句(5月5日:こどもの日)などがありますが、一番重要なのが正月であることから料理として前に出てきた様です。日本人節目好きですしね。笑

節句を祝う料理という古来からある料理、それこそ平安時代よりも前からあった説もあるそうですが、そんな料理が重箱に詰められるような形を見せ始めたのは江戸時代という説が有力なようです。
ただ、個人的に好きな説・解釈は

「かまどの神様に感謝して祀る為に正月の三が日はかまどに火を入れない。その為おせち料理は味付けを濃い目にした保存性の高い祝いの料理」

というものです。
「未だに多神教の名残がある」というのは私が好きな日本のポイントの一つです。一神教に多い善悪二元論に傾かず、あっちゃこっちゃに神様が居て、それはそれで尊重しているというのは良いことだと思います。弊社の敷地にもお稲荷さんがあります。企業内に商売繁盛祈願で稲荷社を持つ会社って意外とあるんですよ。

さて、おせち=重箱文化が完全に定着したのは戦後だそうで、百貨店などがイメージを押し出した影響も大きいのだとか。おせち料理のご先祖は華やかさは今ほどなかったようですが、現代ではいろいろな「験(ゲン)を担いだ」料理が並びます。今回はその内容をご紹介します。前振り長いですね失礼しました。

おせち料理各品目の謂われ

①数の子

おせちのイメージ代表格ですね。これは見た目の通り子宝に恵まれますようにと言う願掛けで、魚のニシンの卵です。元々はかなりキツい塩蔵品で、おせちで食べられるようにするには流水に浸けてかなり塩抜きをしないと食べられません。素材そのものは保存食なんです。


②たつくり

カタクチイワシの干物を炒って砂糖醤油をからめた料理ですね。別名ごまめ。「田を作る」で豊穣を祈るのですが、これはカタクチイワシが江戸時代は主要な肥料だったことから来ているようです。また、「マメに生きられるように」ということでごまめとも呼ぶようです。

③栗きんとん

栗はそもそもが縁起物です。昔の武将も戦いの前には「勝ち栗」といって栗を食べていたとか何とか。そして「きんとん」に「金団」と字を当て、見た目通り金運を祈って食べるものになりました。

④伊達巻

これもおよそおせち料理でしかお目にかからないものですね。卵と魚のすり身を甘く焼いたものです。お寿司屋さんでは「玉子」として出てくることはあります。こちらは見た目が書物(巻物)に似ていることから学業が成るようにという願いが込められているそうです。

⑤ナマコ酢

ナマコは料理そのものより、元々の姿が米俵に似ていることから豊作を祈って食べるものです。東北地方以北のナマコは内臓が鮮やかな黄色で、また砂と一緒に食べた砂金を体内に持ってることがあるらしく、そのせいでキンコと呼ばれて縁起ものであるという側面もある様です。

⑥鰤(ブリ)

鰤はご存じ冬に美味しいお魚です。これがおせちに採用されることが多いのは「出世魚」だからです。出世できますようにと言うことですが、出世魚ですので幼魚から大きくになるにつれて名前が変わります。しかも厄介なことに地方によって呼び名が変わります。笑
例えば関西では
ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ
他方関東では
ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ
となるようで、誠にややこしい。但し、各地方みなさん最終的にはブリに行きつくんですよね。社長みたいなもんでしょうか?笑

⑦筍

筍はとても成長が速い植物です。おなじみの柔らかく食べられる時期は本当に短くて、あっという間に数メートルの高さになります。それゆえに「早く健康に成長しますように」という願掛けがある様です。子供にはあまり人気のある素材ではありませんが、お子さんに食べて貰いたいものですね。

⑧とこぶし(貝)

写真真ん中のところにいます

あのアワビっぽい貝ですね。あれ実はアワビの子じゃなくてアワビとは別種です。あれ以上大きくなりません。笑
貝は元々縁起の良いものです。平安時代には貝合わせという絵合わせの遊びがあり、二枚貝は夫婦仲良しの象徴です。「竹取物語」(かぐや姫)には子安貝が登場します。
トコブシは海底に張り付いているのが「床に臥せるように見える」ことからトコブシらしく、その点では縁起が悪いのですが、別名「フクダメ」(福溜め)と呼ばれることから採用となったようです。尚冬は旬から外れています。笑

⑨見た目まんま枠
・海老・・・腰が曲がるまで長生きできるように、目が出ていてメデタイ。
・蓮根・・・見通しが良くなるように。
・慈姑(クワイ)・・・その姿から芽が出るように(才能が花開くように)
・紅白なます・紅白かまぼこ・・・紅白だからw
・ゆり根・・・かけらが玉になっているので子沢山
・たたき牛蒡(ゴボウ)・・・家がしっかりと安定し、根を張るように

⑩ダジャレ枠
・鯛・・・メデタイ
・昆布巻き・・・よろこんぶ
・黒豆・・・マメに暮らせるように


最近は洋食や中華のお重も販売されますからあまりこういった「謂われ」を振り返ることも少ないかなと思ってまとめてみました。おせち料理は冷えたままを頂いたりするので、私のような酒飲みはともかく、子供にはあまり嬉しくないご飯かも知れません。こういった「謂われ」を聞いて少しでも楽しんで食べてくれるといいなぁと思います。

尚、最後に免責事項ですが、こういったおせち料理の歴史や解釈には諸説あり、ここに書いたものが正しくない場合もあるかもしれませんし、何より地域によってまた多様さを見せるのも食文化のよいところです。「ウチではこんなの入れないぞ!」ということもあるかもしれません。
食卓の小噺に、程度の軽い話とご理解頂けますと幸いです。


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