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経営者と既得権益

経営者であれば、至る所で「既得権益」と思えるものに遭遇する。
逆に、他人から「既得権益」を持っていると思われることもある。
今回は、この辺りのことについて書き綴っていく。


既得権益とは?

goo辞書によると

きとく‐けんえき【既得権益】

国や地域・組織などが、法的根拠に基づき、以前から獲得している権利と利益。

goo辞書

既得権益と言うと「悪いもの」だと想像してしまうが、本来の意味は必ずしも悪いものだと断定するものではない。

経営者にとっての既得権益

長年経営していると、外から見ると既得権益と思えるような仕事の一つ二つは持っていると思う。

例えば、神社を経営している知人がいる。
自治体が神社維持費用として寄付金を集め、納付されている。
行政、地元団体、大手企業などから、毎年決まった時期に決まった仕事が入る。
こういったことが既得権益と見なされ、一定数の人から嫌われている。

しかし、本人は既得権益だと思っていない。
公共的な場として誰しもが自由に出入りする神社の掃除を毎日欠かさず行っている。
長い歴史の中で、固定的な仕事の依頼が来ることも悪いことだと思っていない。

他にも、建設会社を経営している知人がいる。
エリア内で最大規模の建設業だ。
そのため、この会社しか受注することができない公共工事をほぼ確実に受注している。
こういったことが既得権益と見なされ、一定数の人から嫌われている。

しかし、本人は公共工事を「重荷」に感じている。
建設業は、人手が足らない。
しかし、他に誰も請けられないから、やるしかない。
行政側も誰も受注してくれないと困る。
結果、行政側と発注時期などの調整を余儀なくされる。

次は、学生服を販売している知人の例。
学生服の指定店になっているため、黙っていても、毎年確実に学生服が一定数売れる。
これを既得権益だと嫌う人もいる。

しかし、本人は指定店を止めたいとぼやくことがある。
学校側とは「入学までに全員へ確実に学生服を納品する」という暗黙の了解がある。
かつては、入学者名簿が渡され、個別に学生服の案内をしていたらしい。
今は、コンプライアンス上、名簿を貰えない。
入学直前に学生服をオーダーされると、入学に間に合わない。
特に高校生の学生服は、入試の合格発表から入学までの期間が短い。
学生服のシーズンは、多忙を極め、定休日を返上して夜遅くまで営業をしている。

なぜ既得権益は嫌われるのか?

嫌られるかどうかの主なポイントは以下。

1.営業行為
2.利益率
3.参入障壁

まず、営業行為が不穏に思われることが多い。

・政治家や官僚への働きかけ
・行政への働きかけ
・業界団体への働きかけ
・マスコミへの働きかけ
・顧客への働きかけ
・従業員への働きかけ

こういった行動は、本来は悪くない。
何かを成し遂げるためには、避けて通れないこともある。
しかし、その先にある「不正な利益」を想像させ、嫌われる。

「利益率」も嫌われる原因だ。
儲かる、羨ましい、嫉妬する、嫌われる。
単純な流れだが、強い感情と言える。

参入障壁も関係して来る。
参入障壁が高いものは、その内部が想像しにくい。
しかし、障壁を超えた人を外から見ると、楽に仕事をしているように思えてしまう。
この認識のギャップは、なかなか埋まらない。

このような理由があり、既得権益は嫌われる傾向にある。

――― しかし、既得権益は、悪くない。

長い道のりを血を吐くような努力で進み続けた結果、手にするものだ。
手にした後もそれを維持ことに必死になる。
やがて安定してその仕事を続けられるようになる。
これが、経営者にとっての既得権益だ。

悪質な既得権益とは?

今一度、goo辞書を引用する。

きとく‐けんえき【既得権益】国や地域・組織などが、法的根拠に基づき、以前から獲得している権利と利益。

goo辞書

ここに記載のある「法的根拠に基づき」という点がポイントだ。
法的に問題がなければ、他人から非難されても気にする必要はない。

逆に、法的に問題があるケース。
これは良くない。

・リベート
・キックバック
・賄賂

いろいろな呼び方があるが、これらが「企業会計外」で動いた時に悪質な行為となる。
また、金銭を受け取る側が「無申告」であった場合にも悪質な行為となる。あとは、金銭を受け取りを禁止されている公務員が受け取ったり、所属する会社に不利益をもたらす場合も悪質だ。

――― ルールを守った既得権益

これは、経営者にとっては重要なものだ。
経営者は、全ての既得権益を悪いものだと判断してはいけない。
逆に、ルールを破った既得権益に手を出すべきではない。
正々堂々と既得権益を手に入れるべきだ。


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