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静岡で抹茶の生産が始まるきっかけになった知られざる"危機"とは


皆さん、はじめまして!

茶師見習いのCHASSY(チャッシー)です。
お茶とサッカーの街、静岡市出身のアラサー男子です。
静岡の製茶会社・丸七製茶の「中の人」歴3年。

駿河湾よりもさらに深い日本茶の世界…僕もまだまだ勉強中の身です。
そんな僕ですが、今日は勉強中のお茶の世界を、皆様に少しだけご紹介させていただきます!

 

サイト公開しました!

先日、丸七製茶のこだわりの詰まった商品を紹介する「TEA ARTISAN CRAFTED」というサイトを公開しました。ぜひ一度、覗いてみてください。



知っていますか? 抹茶の産地

突然ですが皆さん、抹茶はお好きですか…?

抹茶といえば茶道のような伝統的なシーンだけでなく、今日では様々なスイーツやドリンクにも使用されている、老若男女に愛される食材ですよね。

そんな抹茶ですが日本のどこで生産されているのか皆様ご存じでしょうか?

農林水産省発表の作物統計によれば、抹茶の原料となる「碾茶(てんちゃ)」の生産量は、1位鹿児島県、2位京都府、3位静岡県となっています。

嬉しいことに今では抹茶の一大産地としての地位を確立している我らが静岡県ですが、意外にも抹茶の本格的な生産は今から30年ほど前にスタートした比較的新しい産地なのだということを知りました。

1980年代といえば今のように抹茶味のスイーツやドリンクは殆ど普及していなかった時代。そんな時代にどうして静岡で本格的な抹茶の生産に踏み切ることになったのか???気になったので先輩茶師に話を聞いたり、図書館に行って過去の新聞記事を探して調べてみると…

そこにはある ″意外な理由” があることがわかりました。

抹茶の原料となる碾茶や玉露の栽培には「寒冷紗」等と呼ばれる日よけを被せます

静岡抹茶のはじまりの地

静岡ではじめて本格的な抹茶の生産が始まったとされるのは、現在の静岡県藤枝市の山間地域(旧岡部町周辺)とされています。

実は、この地域はもともと京都の宇治・福岡の八女に並ぶ「玉露」の日本三大産地の一つと言われるほどに、玉露の生産が盛んな地域でした。

しかし、急速な生活様式の変化とともに、美味しく淹れるには手間と時間がかかる玉露は次第に敬遠されるようになり、玉露の需要は低迷の一途をたどっていったのです。もちろんこれは、高品質な玉露を栽培・販売し生活していたお茶の農家さんたちにとっても生活を揺るがす由々しい事態です。

そんな危機的状況を打破するため、地元藤枝市の茶商・農協が中心となり複数のお茶農家さんと一致団結して玉露と栽培方法が近い「碾茶(てんちゃ)」の本格生産に踏み切ることになったのです。
(ここで登場する茶商というのが弊社だということにもここで触れさせていただきます!笑)

抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ) 碾茶を石うす等で丁寧に挽くと抹茶になる 

…と、勢いよくスタートしたものの現実はそう甘くはなく、数年間は満足のいく品質の碾茶(てんちゃ)には程遠く、販売には大変な苦労がありました。

そこから長い年月をかけ、日々の試行錯誤に加え、時には碾茶(てんちゃ)の生産に熟練した京都のお茶屋さんからも指導を受ける中で少しずつ満足のいくものができるようになっていったそうです。

静岡抹茶の舞台は日本全国 そして世界へ

そんな努力の甲斐もあり静岡抹茶は徐々に知名度を高め、その後も本山・川根・掛川・天竜といった静岡県内の様々な地域で抹茶の生産が盛んに行われるようになりました。

近年では全国区の飲食メニューや商品に「静岡抹茶」の文字を見かけることも増え、海外へもさかんに輸出されるようになった静岡抹茶ですが、背景にはお茶の産地の命運をかけた知られざる奮闘の歴史があったのですね。

そんなお茶の産地の歴史に思い馳せつつ、夏の終わりに最高級の藤枝産抹茶を贅沢に使用した抹茶スイーツを楽しんでみてはいかがでしょうか…?

今後もお茶にまつわる学びを皆様へお届けしていきたいと思います。

それではまたお会いしましょう。

Chao!