この世のすべての放物線は相似!?(解説)

問題はこちら:

答え

 すべての放物線はy=x^2で表される基本的な放物線を拡大、平行移動する事で表現出来ます。よってあらゆる放物線がすべて相似である事がここからわかります。…と言っても全然ピンと来ないと思いますので、解説をご覧下さい(^-^;

解説:相似を式で表現する

 2つの図形の一方を拡大縮小、平行移動、回転、裏返しした時にもう一方の図形にピッタリ重なる時、2つの図形は相似であると言います。これは感覚的にわかりますよね:

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 y=f(x)というグラフ(図形)について、この拡大縮小、平行移動、回転、裏返しをそれぞれ式で表現する事が出来ます。ただし回転については少し難しい所がありますので今回は割愛します(^-^;。残りについて見ていく事にしましょう。

解説:拡大縮小はxとyに同じ値sを掛ける

 ノートに描いた図形は見る距離を変えると見た目の大きさは変わりますが、距離に関わらず同じ図形、つまり相似です。距離によってノートの全体の大きさは拡大縮小しますが、その縦横の比率はどの距離で見ても一緒。だから当然描いた図形の形も変わらないんです。つまりX軸とY軸を等しい割合で拡大縮小すると図形の相似性が保てます。

 XY軸を拡大縮小するというのは、xとyの値に同じ値sを掛け算するという事です。例えば(3,5)という点を原点中心で2倍に拡大すると(3*2,5*2)=(6,10)になりますよね。y=f(x)のグラフでも同様で、xとyに同じ値sを掛け算するとグラフ全体を拡大縮小した事になります:

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上式の両辺をsで割ると下式になります。このように右辺のxをs倍して、右辺全体をsで割った図形は、ノートに描いた図形を色々な距離で見るのと同じで、全部相似なんです(ただしs≠0)。

解説:裏返しはXとYの一方に-1を掛ける

 ノートの表に描いた図形を裏から見た時、見た目の左右があべこべになります。右が左で左が右になると…。これは図形をY軸を中心に反転する事と同じです。例えば点(3,5)をY軸で反転させると、X成分だけが反転して(-3,5)になります。要はX成分に-1を掛け算すると裏返しになるという事。つまり、

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これが左右反転(裏返し)をする式になります。もちろん元の図形と相似です。

解説:平行移動はxとyそれぞれに値を足し引きする

 平行移動(図形を傾けずにずらす事)は直感的です。例えば点P(3,5)を点(2,9)に移動するには、(3-1, 5+4)と点Pに(-1,4)という値を足し算すれば出来ます。同様にy=f(x)のグラフのx,yに対して移動分(tx, ty)を足し算するとグラフ全体がそのまま移動します:

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もちろん移動前と移動後で図形は相似(合同)です。

※注意:本当は引き算するのがベターなんですが、今回は見やすさを重視して足し算としました。

 では以上を使ってすべての放物線がy=x^2と相似である事を示してみましょう。

解説:全ての放物線はy=x^2と相似

 まず解説を割愛した回転についてですが「全ての放物線は適当に回転する事で形を変えずに頂点が真下もしくは真上に来る放物線に出来る」これは自明とします。傾いた放物線は頂点を中心にいい感じに回転すると頂点が真下(真上)に来て左右対称になりますよね:

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この回転で元の図形の形は変わらないので、回転前後の図形は相似です。なので、以後は回転を施した後の左右対称な放物線だけを考える事にします。

 頂点が真下や真上にある左右対称な放物線は、皆さんご存知以下の式で表せます:

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このa,b,cはa≠0であれば他はどんな値でも取れて、この世にあるあらゆる放物線(頂点が真下か真上にある放物線)を表現出来ます。

 y=x^2という基本な放物線に拡大縮小と平行移動を施して上の式が作れれば、あらゆる放物線がy=x^2と相似である事が言えます。これは同時にあらゆる放物線同士もすべて相似である事も表します(AとCが相似、BとCが相似ならAとBも相似なので)。

 y=x^2の放物線に先に解説した拡大縮小sと平行移動(tx,ty)を実際に適用してみます。(x,y)を(sx,sy)にすると拡大縮小、さらに(sx+tx, sy+ty)とすれば平行移動になりますから:

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最下段の右辺がy=x^2に拡大縮小と平行移動を施した放物線です。s,tx,tyがどんな値でも(ただしs≠0)元のy=x^2と相似な放物線になる事は先の説明の通りです。

 このs,tx,tyを放物線の一般式にあるa,b,cで表せれば相似を証明出来ます。右辺の各項の係数を比較すると:

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このようにsもtxもtyもa,b,cで表す事が出来ました。この式はどんなa,b,c(a≠0)にもそれに対応する拡大縮小sと平行移動(tx,ty)が唯一つあり、それをy=x^2に施す事で対象先の図形にピッタリ重なるという事、すなわち相似であるという事を示しています。実際上の式を戻してみると:

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と、確かに対象先の図形と同じ式になり、ピッタリ重なりました。

 以上からこの世の中のすべての放物線はたった一つのy=x^2と相似であり、それすなわちありとあらゆる放物線同士もまた相似である、という事がわかりました。

 ぱっと見全然違うように見える放物線も実は全部相似だというのは不思議な感じがしますよね。でも数式でちゃんと示せば納得です。こういう相似関係になるグラフ(図形)は他にも色々ありますので是非探してみて下さい。ではまた(^-^)/

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