π=3.14はおおよそ正何角形?(解説)

問題はこちら:

答え:およそ正57角形

 π=3.14で近似した場合、それはだいたい円を正57角形くらいにみなした精度になります。意外と粗い印象ですよね。この角数をどう計算するか解説します。

多角形の辺の長さを求める式を作ってみよう

 直径を1とする円に内接するN角形について、その辺の長さを求める式を考えてみます:

上のθは中心角360度(2π)をN等分した角度なので、

です。ここのπは紙のみぞ知る真の円周率です。またN角形の1辺の長さを上図のようにaとすると、周の長さLは、

になりますね。

 aは余弦定理で直接式を立てられます:

上式でθ=2tと置くと、2倍角の公式から式が物凄く簡単になります:

素敵です(^-^)。これを多角形の周の長さLに代入すると、

となり、

から、

これが直径を1とした時のN角形の周の長さを表す式となります。

 円周率を3.14と近似するというのは、このLを3.14とする事です。よって、

これを満たすNが欲しい多角形の角数です。

Nを近似的に求める

 上式のN、残念ながら解析的に求める事は出来ません。その為数値計算で近似的に求める事になります。手っ取り早くやるならExcelのソルバーなりを使えば良いのですが(^-^;、ここはすっかりお馴染みニュートン法で求めてみる事にします。

 ニュートン法についてはこのマガジンで何度か登場しています。詳細については割愛させて頂きますが、今回の場合はまず以下のf(N)とその微分式f'(N)を定義して、

これをニュートン法の式に入れます:

あとは適当なN0から始めてくるくる回すと答えが出てきます。実際にやってみましょう:

このようにN≒56.958角形という答えが出てきました。ここからπ=3.14と近似した場合はおおよそ正57角形としている事がわかりました!

 実際正57角形の辺の長さは、

このくらいのようで、かなりしっかり3.14してますよね(^-^)。

深掘:3.14は粗いの?

 日常生活の範囲では、π=3.14つまり円を正57角形と捉えてもほとんど問題ありません。手に取れる程度の小さな物や紙に描く程度の大きさの物であれば正57角形はもう円と見分けがつきません。

 一方工学の世界などでは3.14159くらいまで桁数を上げて計算誤差が小さくなるようにします。特に橋梁やビルなど大きな建造物だと3.14では精度が足りずその誤差で大事故が起こる可能性があるため、より多くの桁数を使います。

 超大な規模と言えば宇宙です。天体の動きは基本円や楕円ですからπがかかせないわけです。必然宇宙工学の世界ではより精度の高い円周率が必要になります。と言っても何万桁という事では全然無くて、あのNASAでさえ小数点以下15桁で計算しているそうです:

この中に「For JPL's highest accuracy calculations, which are for interplanetary navigation, we use 3.141592653589793.」(惑星間航行で用いられるJPLの最も高精度な計算で、私達は3.141592653589793を使っています)とあります。惑星と惑星の間をロケット等で移動するくらいの規模でさえ15桁のπで事足りる。15桁というのはそういう精度なんですね。

 という事で今回は円周率の近似値と正多角形のお話でした。ではまた(^-^)/


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