陸上競技トラック1周の長さは?(解説)

問題はこちら:

答え:398.113134 m

 直線部分は80.0mで上下2本あるので160m、カーブの部分は半径37.898mの半円が2つあるので、2×37.898×3.1415=238.113134m、合わせると398.113134mになります。

 陸上競技トラックの1周は400mのはずなのに約2m足りません。400m走の選手は1mを0.1秒ほどで走り抜けるので、この差は問題になるはずです。もちろん、これは意図されたもので設計ミスではありません。ではなぜ2m短いのでしょうか?

 実は設計図に記載されているカーブ半径は、円弧の中心点から一番内側である1レーンの端までの距離になっています。つまり1レーンを左回りで走る選手の左ライン(実際は縁石)の1周分の長さ398.1mなんです。ですから400m走で1レーンの選手が左ライン上を沿って走ると2m程得してしまいます。しかしこれはNGです。走者は自分のレーンの左ライン(内側ライン)を故意に踏むと失格になるというルールがあり、そういう走り方は出来ないのです。

 選手は自分の左のラインを踏まないように気を付けて走ります。でも一方でカーブを曲がる時は出来れば内側(左側)に近い所を走りたい。外側を走る程距離が伸びて損してしまうからです。選手がそのように踏まず離れず程良く進路を調整すると、カーブ全体で先程の2m分距離が延び、結果的にほぼ400mになるのです。その為内側の周囲が少しだけ短くなるよう設計されているんです。

 ではそもそもなぜ内周囲は398mなんでしょうか?399mや395mとかじゃダメなのでしょうか?その辺りを深堀してみます。

深堀:丁度400mになる時の左ラインからの距離

 では実際内周囲398mのトラックの場合、1レーンの左ラインからどの位離れると1周が丁度400mになるのでしょうか?これは次の方程式を解けばわかります:

画像1

 直線部分はレーンのどこを走っても変わらないので80×2=160m、カーブ半径は(左ラインの半径+離れた距離x)で、半円が2つ=円なので上のような式になります。これを解くと、

画像2

となります。左ラインから30cmだけ外側を走ると丁度400mになるという事です。実はこれが規格でして、実際の競技場も1レーンの左ラインから30cm離れて1周回ると400mになるようにしてあるそうです。この30cmの距離は選手がラインを踏む事無く、それでいて内側として走るのに程良い距離として採用されています。ちなみにレーンの幅は122cmなので、30cmは幅を4分割した左側のラインとなります。目安としても丁度良い幅ですよね。うまい事出来ているもんです(^-^)

 内周囲をLとした場合、そこから直線距離160mを引くとカーブ全体の長さになるので、そのカーブ半径rは、

画像3

で計算出来ます。1周400mの時はr(400)=38.198mです。もし内周囲が399mだったら、r(399)=38.039mになります。400mとの差は0.159m、つまり約16cmで、これが1レーンの左ラインからの幅になります。この幅は選手が沿って走るにはちょっと狭すぎますよね。

 もし内周囲が395mだったら、r(395)=37.402m。400mとの差は0.796m、すなわち約80cmです。レーン幅は122cmなので、これだと内側を走る有意性が際立ってしまい、競う距離の公平性が失われてしまいます。内周囲398.1mというのがいかに絶妙な距離であるか良くわかりますね。

 陸上トラックには人の心理も考慮した緻密な設計がされているのがわかりました。実に奥深いもんです。ではまた(^-^)/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?