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バームクーヘン <140字小説まとめ7>

Piece 58
君はたぶん気づいていたけど、最後まで知らないふりをしてた。僕からしたら、君は好きでもない自分に質問しすぎだ。好きな小説だの歌だの。君は答えると喜んでくれるが、それは君にとって仕事の一部、あるいは生き残るという仕草だ。だから君が退職する時、悲しいけど、救いってこんなことかと思った。
中埜さくら著: 『後書きみたいな恋でした。』
#架空タイトル
#テキトーなタイトル置いたら誰かが引用RTで内容を書いてくれる

 Piece 59
居残り勉強してるのは自主的に残る学生達だ。今日の晩餐はほうれん草パスタにしようなんて思いつつ私は彼らを眺めた。「先生、冥王星探索のメンバーは選出したんですか」「まだ、明日の試験後に決定」「先生は行くんですね」「うん」「僕も連れてってください」そんな真剣な顔をするなと私は思う。
#ノベルちゃん三題

Piece 60 
「それから待ち時間に詩を書かれるお客様もいらっしゃいます」
「詩?詩ってポエムの?」
「はい。当店スペシャルグラタンへの期待や感想、まだ見ぬグラタンへの憧れなどを込めて書いてくださるんです。ご覧になりますか、お客様の作品集」
「は、はあ」
ウェイターは、一冊の大判のノートを手渡した。
#言葉の添え木 「Give and Take」

Piece 61
君は綺麗でお金持ちで私がしたことない事をたくさんしたことがあって才能もあった。失敗しても許すと私は思ってたし、他の人だってそうだ。私は君を羨んで君みたいになりたかった。そっちに先に行ったのはやっぱり私がしたことない事を先にするためですか。それとも神様私の嫉妬は罪だったのですか。
#言葉の添え木 「世解」

Piece 62
三月の雨に濡れて、僕達はそのクラブの奥のバーまで走った。口移しで甘い酒を飲ませて、わざとこぼして、散々キスした。甘すぎるしべたべたになった。だんだんおかしくなってきてもう飲めない、まだあるなとか言って笑った。ごまかした。ほんとは少し泣いてたのを。どうしても悲しくなってしまうのを。
#言葉の添え木 「3月の雨」

Piece 63
女の子なんて簡単だ。みんなそのうち僕を好きだって言う。僕がちゃんとルール通りにしてれば。でも今日はキスする前にかわいいねって言うのさえ忘れちゃったな。ねえ、なんで兄ちゃんなんだ。兄ちゃんには何でもある。両親の愛も可愛い妻子もいい仕事も。だから君は僕のこと見てくれたっていいのに。
中埜さくら著: 『昨日、好きだった人へ。』 #架空タイトル #テキトーなタイトル置いたら誰かが引用RTで内容を書いてくれる

Piece 64
「詩集だけ?」「そう」なめらかな木製の本棚には、色々な大きさの本が時には表紙を前に向けて並べられている。「随分お気楽な本屋なのね。でも私は詩なんて全然わかんない」「そんなことはない。詩はすべての人のためにあるんだ」「そうなの?詩が必要なことなんてあるかな」「気づいてないだけさ」                                  #2月の星々 「並」

Piece 65
君が並々ならぬ集中力で描くロケットの絵を見たり、バスケットをして楽しかったという話を聞く時、自分は素晴らしい経験をしているのではと思った。一瞬だけだけど、幸せとは何かわかりそうな気さえした。「今日は学校で何したの」「何で毎日同じこと聞くのかな。お母さんこそ、今日はどうだったの」                               #2月の星々 「並」

Piece 66
教育実習をして教師になるまいと決めた。校則にも安月給にもうんざりだ。絶対にやめよう、OLになろうと思った。けれど私はその後鬱になって退職し、近所のアルバイトの塾講師に応募した。お手並拝見と塾長が見ている。でも教壇に立つと、ずっと言いたかった言葉が出て来る。涙がこぼれそうになった。                               #2月の星々 「並」

Piece 67
「並行世界って何?」「例えばその卵焼きを食べなかったら、という世界線のこと」「卵焼きを?」私は、だしとネギ入りのそれを一口齧った。「可能性ってこと?」「まあ、そう言ってもいいかもしれないけど」それなら、その世界では私は君と恋人同士かもしれないなと思って、良い気分でお弁当を食べた。                               #2月の星々 「並」

Piece 68
テロリストになる気はなかったのだけど、リクルーターのアヤメが僕を褒めてくれて、話だけは聞く気になった。その頃両親はどこにいるのかわからず、僕と弟は二人で小さな家に住んでいた。「あなたならリーダーになれる」僕と並んで座ったアヤメの茶髪が風に揺れて、本当は少し触れてみたいと思った。
#2月の星々 「並」


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__@attaranovels様の企画に参加させていただきました。

__@fairy_novelのお題に参加させていただきました。

__#言葉の添え木様、お題ありがとうございました。

__@hoshiboshi2020 様の140字小説コンテストに参加させていただきました。


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