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日本で英語ができるようにならない理由

突然だけど英語話せますか?

ビジネス、プライベートでの会話など大人なら一度は聞かれたことがあるであろう質問。今日、現時点のあなたはどう答えますか?

欧州で生活していて思うのは、オランダ、ベルギー、デンマークあたりでは英語が第一言語でないにも関わらず国民の殆ど(90%以上と言われている)が英語で会話ができる。スーパー・駅・職場どこに行っても英語が通じなくて困ったという経験はほぼない。(郵便局で英語が通じず切手が買えなかった事があるが、英語が通じないと感じた経験はその一度だけである。)
一方で日本では英語話者は10%以下と言われており、「第一言語が英語ではない国」という条件だけで見ると欧州各国と大きな差が開いてしまっている。

日本で生まれ育ち、欧州に移住した私なりに大きく3つ原因があると考える。私は言語学のスペシャリストでも何でもないので、あくまで個人的見解ではありますが。

①母語と英語に共通項があるか

同じ語源の言語は単語・文法などがかなり似ている。先ほど例に挙げたオランダ。オランダ語と英語は時折全く同じ単語を使ったりする(例えばstationはオランダ語でもstation等)また文法的にも目的語や修飾語が動詞の後に来るので英語に近い。つまり母語が英語でない国でも、英語と文法的共通項が多い場合には全てを新たに学ぶ必要はない(一部の学習をスキップできる)ので習得スピードが早い、記憶に定着しやすい

これは所与の条件による差なので、もし原因がこの1点だけであるならば日本が欧州諸国から一歩遅れを取るのも仕方ない。しかし他にも欧州諸国と日本には英語が話せるようになる条件に差があると感じるのである。

②日常でどれだけ英語に触れているか

日本で生活していて気付くのは、あらゆる媒体から流れてくる情報が日本語で提供されている事である。正直、諸外国を見てもこれは非常に珍しい。アジアの隣国に行ってもCNNが見られるし、洋画を全部吹き替えで放送したりはしていない。加えてインターネット上で英語で検索したとしても、日本にいる時は日本語の記事が真っ先に出てきたりするから驚きである。

一方で、先に挙げたような英語を母語としないが、英語話者の多い欧州諸国では、ほぼ毎日何かしら英語に触れる機会がある。テレビをつけると必ず海外ニュース(英語)のチャンネルがあるし、洋書も現地語の本と同じように売っている、そもそも職場に各国の人がいて共通言語が英語、親戚は実は英語圏出身等。無意識の内にあるいは殆ど障壁なく英語に触れられる環境が整っているというのが日本との大きな違いである。
触れる機会があると「あれこの単語の意味なんだろう」、「次会話でこの言い回し使ってみよう」等、いわゆる英語学習(机に座って授業を受ける)をしなくても自然とボキャブラリーが増えたり、会話で咄嗟に新しい表現が使えたりするものである。つまり日本で英語話者が少ない原因の一つに、極端に英語に触れられる環境が少ない事が考えられるのである。

ただし昨今、この点については改善の兆しが見られる。テレビ、新聞等の既存媒体に可能性を見出せない事に気がついている人達は既に多く利用していると思うが、SNS、NetflixやAmazon Primeの登場により、英語圏で放送されているコンテンツや、ネイティブが話す動画にはかなりアクセスしやすくなっている。ここでインプットという意味では、かなり諸外国に近づいて来ていると個人的には感じている。
一方でアウトプットの機会については個人的にも模索中である。もちろんオンライン英会話サービスは一手であるが、あくまで目的がある場合の学習にしか使えない。いわゆるTOEFL何点目指すみたいな。欧州に住んでいて感じるのは、彼らはそのような勉強の仕方をほとんどしないことである。友人を作ったり、スーパーで使ってみたり、時にはアプリゲームで学んだりと机に座って誰かと一対一で1日30分的な勉強は中々実践力に繋がりにくく、実社会で使うのには十分でないと考えている。この点は私も過去オンライン英会話を使いまくっていた立場として全く同感であるので、日本でアウトプットが自然にできる場を今後探してみたい。

③「英語話せる?」って聞かれた時何て答えるか

「話せない」「ちょっとだけなら」「日常会話程度」このあたりが回答の大多数を占めるのではないかと思う。
ではいつになったら英語が話せるのか、正直そんな瞬間は一生来ない。私自身も欧州移住後は格段にスムーズに人と会話できるようになってきたが全く完璧とは言えない。白熱した議論の中では文法もミスるし、ピンポイントの単語がスッと出てこない時もある。だけど「英語は話せる」と答えるようにしている。意識の問題だけであるが、「今日は英語調子いいな」と思うとオフィスでの会話から友達との雑談まで驚くほど饒舌になるのである。逆に「最近英語話してなかったな、自信ないかも」と少しでも思った途端にそれが気になり言葉に詰まり始める。
言わずもがな欧州の友人たちは「英語話せる?」と聞くと漏れなく「話せる」と答える。正直言ってスペイン、フランス、イタリア、ドイツあたりは英語をスムーズに話せる人ばかりではないが、「話せる」と答えると結局その後の会話にも繋がるので、この繰り返しが彼らの更なる成長に繋がっているように思う。根性論のようで嫌ではあるが、日本人が英語ができない理由の1つには自分達は英語が話せないと強く思い過ぎてしまっている、つまり意識の問題もあると感じている。

なぜ英語が大事だと思うのか

ここまで日本で英語が話せる人が増えにくい原因についてツラツラと書いてきたが、別に国民全員が英語を話せるようになる必要があるとは思わない。英語ができる人の方が優れているとかも思わない。
ただ、なぜ英語を話す人が少ないことを問題視しているのかというと、世界規模で起きる物事を正しく、早く理解するには英語が使える事が不可欠であるからである。仮に第2のコロナみたいなのがやってきた時、正直日本語で検索していては海外からの情報が一度訳されるまでのタイムラグが生じるし、本当に重要な情報が訳されていないかもしれない。
現に2022年10月現在、人々がマスクをつけて出歩いているのは日本と隣国のみと言っても過言ではない。ここ半年間殆どの欧州諸国を回ったが、公共交通機関を除いて外でマスクをつけて歩く集団には一度も出会わなかった。
そう言った意味で、英語の情報にアクセスできるようにしておく事は世界規模で何かが起きた時に、あるいはそのような有事以外にも多くの人があらゆるリスクから免れる、正しい判断をするのに非常に重要なのではないかと思うのである。


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