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サンセイランディック(東1/3277) 株主総会レポート 2020/3/26

 東証1部上場のサンセイランディックの株主総会に出席してきました。株主総会の様子について、当記事にてご紹介したいと思います。なお、全文に渡り、私の心証に基づき脚色されており、意図せず誤認している可能性もあり、正確性が担保出来ない点はご容赦頂ければと思います。なお、先日開示されたサンセイランディックの決算精査は以下の記事にて纏めておりますので、併せてご参照頂ければと思います。

 また、昨年の株主総会のレポートは以下の記事に纏めてあります。

 当記事は同銘柄の売買を推奨するものではありませんが、株主総会の読み物として、また同社の理解に繋がれば幸いです。加えて、お気づきの点などあればぜひツイッターやブログにてコメント頂ければ幸いです。


1.基礎情報

 まずは当日のタイムテーブルです。手元の時計での測定です。
  10:00 定刻にて開会 (社長 松崎氏)
  10:02 株主数・議決権数の確認
      →4,613人/11,399人(40.5%)
      →56,989個/84,507個(67.4%)
  10:03 監査報告 (監査役 山口氏)
  10:05 事業報告 (PPT+ナレーション)
  10:13 対処すべき課題(社長 松崎氏)
  10:24 主に寄せられるQA(社長 松崎氏)
  10:28 議案上程
  10:31 質疑応答
  10:52 議案決議
  10:55 閉会

 会場は再び三菱ビルに戻ってきました。毎年底地くんの着ぐるみをきたマスコットが迎え入れてくれますが、この新型コロナの兼ね合いから、こんなところにも自粛ムードが漂っています。ただ、受付では検温もなく、消毒液も用意はされていましたが、任意で使って下さいという程度のものでした。対応されている社員さんは全員マスクをされていますが、登壇した役員はマスクを外して対応されていました。議事運営の立場からの配慮だと思われますが、逆にこのご時世ですから、マスク着用のままでよかったかなと思います。株主も昨年から3000人程度増えていますが、この新型コロナの自粛ムードの中で参加者も18人(目算で確認)と昨年より減少しておりこじんまりとしておりました。

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2.報告事項

 スクリーンに投影されたPPTに沿って、ナレーションの解説です。決算短信や決算説明資料などの開示されている内容を読んでいれば特に新たな発見があるものではありませんがよい復習にはなります。
 一方で対処すべき課題については社長自らがご説明されています。これは毎年そうですね。但し、基本的には招集通知記載の朗読会となります。この辺りは、形式に捉われずに社長の熱意を込めた説明を頂けるといいかなと思っています。文章は一応目を通してきていますし、この対処すべき課題は今後の経営方針などが滲む重要な示唆を与えてくれますし、当社を応援しようと投資している立場からすると注目するところでもありますからね。それが朗読となるとちょっともったいないかなというのは率直に思うところです。もちろん、それでも熱心に説明を尽くそうという姿勢は伝わってくるのですけどね。
 その観点からいうと、質疑応答に入る前に、よく寄せられるQAを予め挙げて先に説明を尽くすというのはよい試みだと思います。質問を準備してきている立場からすると、そのネタを先回りして摘まれてしまうので、あたふたするんですけどね(笑)。ここで紹介されていた内容を列挙しておきます。

Q
 新型コロナウィルスに関する事業への影響について
A
 現時点で事業影響に大きな影響は出ておらず、業績予想にも当該影響は考慮していない。しかしながら、収束の長期化によって、物件の仕入・販売の遅延や建築事業での部材調達における影響を与える可能性はある。これらの業績影響が大きくなると見込まれる場合、速やかに開示をする。
 また社内体制としては、感染予防対策や社員の安全確保の観点から、一部営業活動の自粛やテレワーク推進・時差出勤での対応促進等の対策を講じている。感染拡大抑止という社会的立場を最重視しながら、業績影響を最小限に抑えられるよう事業継続していく所存。

Q
 中計最終目標値と今期業績予想の数値差異について
A
 決算短信での当期業績予想の数値は、中計数値目標に比べて弱いガイダンスとなっている。この要因としては、①利益率の低下、②販売物件構成の変化、③販管費の増加が中計策定時点(2018年)からみて利益の下押し要素となっているものである。
 ①利益率の低下については、当然不動産市況の変化などによって当社の利益率も一定ではなく凹凸がある。前期の実績に比べて、今期は元々不動産市況は落ち込むという点を十分加味したうえでガイダンスのベースを策定しているためである。(つまりある程度のコンサバティブなものだということですね。ただ新型コロナの影響もあり楽観も出来ないかなとも思います)
 ②販売物件構成の変化については、中計策定時点に比べて底地の構成比率が低い状況である。底地は権利調整の付加価値がより高まることで利益率が高いこともあり、当該構成比率が下がることにより、全体の利益の伸長が売上伸長に比してマイルドになるということになる。
 ③販管費の増加については、消費税増税の影響で租税公課が嵩むことを織り込んだものと、所有権販売の増加による手数料支払いも増額となる。加えて事業拡大のための人材リソースの拡充やベースアップの積極実施による社員還元の強化も一因となっている。またデータ活用をより推進するためのシステム面での先行投資も織り込んだものとなっており、総額の販管費が増額となっている。
 以上のことから、現時点での業績予想としては中計未達となる水準でのガイダンスとなっているものの、十分に販売可能なストックを有しており、利益率を前期並みの水準で確保出来れば、前期比増額だけでなく中計目標も射程圏となる認識をもっている。
 また中計目標としてROA12%の確保を掲げていたが、事業を拡大していく中で棚卸し資産を順調に積み増していく中で資産効率性を高めるためのKPIとして意識してきた一方で、回転効率を高める事が必ずしもよいとはいえない状況も散見され、権利調整の時間を十分に取ることによりむしろ利益率を高められることもあるという側面も多数あり、次期の中計ではどういった指標を採っていくのがよいのか改めて検討したいと考えている。

Q
 女性役員登用について
A
 当社は女性役員を登用できていないが、その重要性は認識している。社外人材からの登用のみならず、社内人材からの女性登用も積極的に検討していきたいと考えている。

 優先度はともかく、私が事前に用意していた質問メモに全てあった内容だったので、この後の質疑で何を優先して聞くか、質問の順番や言い方を変えるために頭の中があたふたしました(笑)。

3.質疑応答

※ ★印は私が質問した内容です

Q
 内部留保からもっと配当に回すことはできないのか。
A
 内部留保はオリンピック延期や新型コロナ影響など不確実性が増す中では、何よりキャッシュを会社がきちんと確保しておくことが重要だと認識している。しかしながら、配当金を毎年少しずつでも拡充していくというのも会社の基本方針としてなすべきことと理解している。その両方のバランスを十分検討したうえでの今回の開示となっているので理解頂きたい。

Q
 オリンピック延期や新型コロナの感染拡大が与える影響はどうか。
A
 先ほども案内の通り、足元では影響はないが、今後部材共有の遅れが建築事業へ与える影響は足元の新規受注に影響がまさに出始めているという状況。サンセイランディック本体の事業は影響がまだ出ていないが、先ほど説明の通り今後については十分注視が必要だと認識している。必要があれば速やかに開示をしたい。

Q
 建築事業は昨年総会でも議論があったが今年はどういう処理をするのか。
A
 建築事業は期初の段階で豊富な受注残をもって今期念願の黒字化を目指しスタートしている。但し、この新型コロナの影響で今後の受注状況は下押しが出てくるものと認識している。加えて建築部材の調達遅れが今後顕在化してくると顧客への物件引き渡し時期が遅れることによる検収期ズレの可能性もあり、今期数値は見通せない部分もあるが、頑張る。

Q ★
 現中計の指標のひとつであるROAに変わる指標の検討状況についてはどういう方向性で検討されるのか。回転率だけでは推し量れないという課題感はこれまでも共有頂けていたが、ではどういう点をKPIに設定しようと思われているか現時点の考えを教えて頂きたい。
A
 具体的に指標として現時点でこれがいいというものはまだ見出せていないため今後次期中計に向けて検討したい。その上で考え方について回答したい。
 従前、居抜きは1年、底地は半年程度を使い事業を回してきたものの、この画一的な時間軸にはめ込むことが必ずしも利益の最大化にならないという事例も増えてきている。つまり、もう少しじっくり、深く権利調整の手間をかけることがよりよい結果に繋がりえることがあるわけである。従って、回転という時間軸の側面だけで効率化を図る指標としてのROAは必ずしも現状のスキームに合わなくなってきているという課題感を持っている。今後の指標をどう設定するかは、この資産の回転という時間軸を見据えつつ、手間をかけて付加価値を高めるということも大事にしていけるという双方のバランスを取れる指標がなんなのかということを改めて役職員一同で議論をしながら整理していきたいと考えている。
 従前の回転に偏らず、特に時間と手間をかけることが、当社だけではなく、お客様のためにもなるということを想定して検討していきたい。

Q ★
 利益率を前期並み確保すれば中計目標も射程ということだが、具体的にどういう活動を通してそれが見通せるのか。また、その実現確度はどう捉えているか。特に底地の比率が下がっている点は、滞留在庫等の対応チーム組成など様々な活動をされている中でその効果や今後の底地扱いの見通しと合わせて教えて頂きたい。
A
 従前は担当者1人で対応していたところを複数人で対応するように変えたり、担当者を入れ替えていくという試みを行っている(これは複数人や違う視点を入れると新たな発想や顧客接点上ブレークスルーする機会になる点があるということなのかな…)。また販売チャネルも従前の住宅系ディベロッパーやホテル事業者のみならずもう少し違った業態への販売が利益率上昇に寄与する見通しがある点を想定している(これは具体的にはどういう所へ出すと高く買ってくれるんだろう。例えば介護施設向けとかかな…)。また、居抜き物件などで一部の方に立ち退き等の交渉を行うことがあるが、これを適正な費用負担で実現できるような交渉努力なども利益率を向上させる観点である(もちろん、この費用をケチり当社だけが優位になろうという趣旨ではないが適正化を図れる余地があるのではないかという趣旨ですね)。
 このようにひとつひとつは泥臭いような細かな事の積み重ねではあるものの、それが元々当社のビジネスを支えるために必要な事だと認識しており、今後もこのように原点を忘れることなく、また各ステークホルダーへの配慮にも留意しながら、利益向上の努力を少しずつ積み重ねていきたいと考えている。

Q ★
 対処すべき課題の中で、新規事業の検討を挙げられているが、自治体向けの引き合いが強いという説明がこれまでもあったがその前向きともみえる状況と逆に海外展開は日本固有の商習慣に係る部分もあり難しさもあると認識しているが、どのような方策で取り組まれようとしているか教えて頂きたい。
A
 地方については、市街地再開発をメインに考えている。当社はディベロッパーではないため、箱モノを整備するとか道路を作るとかの役回りではなく、人と人との権利の調整などのシーンで力添え出来ることになろうかと思う。その後にディベロッパーとしての役回りをワンストップで提供していくためには、当社が直接手を下すというわけではなく、そういった会社との提携をして推し進めていくということになろうと考えている。この辺りの市街地再開発における当社が力を発揮できる領域が一定数あることが自治体からのヒアリングで需要認識できたため、今後の取り組んでいくにあたり、次期中計にはこの領域でどういった目標感で進めていくのかを、定量部分も含めて開示をしていけたらと考えている。
 海外事業については、正直にいってこの商習慣が海外で通用するのか未知のものであると考えている。しかしながら、実際に各国現地にてヒアリング等を進める中では、一定数の当社シーズを発揮できる需要があることがわかってきた。ただ、いきなり権利調整だけ絞ってやりますと現地支社を作っても名もない所で認知を高めて運営できるとは思えないため、まずは現地で実績のあるビジネスのお手伝いをする中で、権利調整という軸で広げていけるようなプロセスで進めていきたい(つまり、まずは現地法人などと提携し既存スキームでの一般的な不動産事業を手掛けられる所と提携等で足場を作り、その上で、数年かけて認知も上げつつ権利調整という領域で強みを発揮できる環境作りをしていくということですかね)。あくまで最終的な目指す所としては、我々の強みである権利調整能力が生かせる所で戦えるような戦略を描き展開を検討していきたい。従って相応の時間を要することは否めないものの、これも次期中計で何らかの形で目標設定して取り組んでいけるようにしていきたい。 

Q ★
 新型コロナ影響について現時点の見立てについて、この場でご説明を頂けたが、投資家はこの影響を推し量れずに不安が不安を呼び、当社株価も大きく評価を下げているようにみられている。現時点で見通せない点があろうかと思うものの、「現時点では大きな影響は出ていない」、「但し、長期化していく中にあって、仕入販売環境の収縮やサプライチェーンの混乱による工期遅れ等に注視が必要」ということをIRして少なからず発信していく事も検討頂くとよいのかと思う。個人で応援している株主も多い事と思うため、フレンドリーなIRを期待したい。(コメントとして発言)
A
 貴重な意見。今後参考にさせて頂く。

Q ★
 当社はかねてより少しでも毎期増配で報いるという姿勢を堅持しており大変ありがたいのだが、一方で先ほどから説明の通り成長のためには内部留保も必要という中で、財務面の安全性とのバランスを取られている事と思う。今期は減益でありながら増配という事でメッセージ性も込めたものであると考えているが、財務面の安全性や今後の成長投資という点を踏まえた時に、どういう判断プロセスで減益×増配という判断に至ったのか、今後の還元姿勢を伺うためにも、会社としてこういう判断をした経緯について教えて頂きたい。
A
 配当というのは株主への応援への感謝という捉え方をしている。当然のことながら財務を踏まえた内部留保とのバランスを考慮するのだが、その中において、今出来る応援に報いる最大限の還元姿勢とはなんなのかということを念頭に置いて決定している。財務面においても銀行からの資金調達姿勢は今後も変わらないという事は確認しており、またクラウドファンディングのfundsを通した新たな資金調達スキームも多様化出来ている点も好材料である。特にリーマンショック時に比して、東証1部上場企業となったことが大きく調達面で安定をもたらしてくれており、この応援に応えることが出来るということである。
 また、毎年1円でも多く還元して応えていくという姿勢は社長としての私の信念でもあり、それを会社の姿勢としても打ち出している。もちろん、今後景気が大きく減退した場合には据え置きや減配となることも可能性としてはありうるが、そうならぬように努力をしていきたい。

4.所感

 会社の姿勢としては特に大きな変化はありません。引き続き、実直に事業を行い、社員も株主も大切にし、またお客様へも寄り添うwin-win-winを実践されていると感じました。外部環境の変化として新型コロナの影響が懸念されてますが、これは現時点では影響は限定的という印象ですが、相応に影響を受けると思います。今後の終わりのない風邪の蔓延は収束しないですから、どこで世論的に自粛を諦めるかというのがポイントになりそうです。自粛や不安払拭が遅滞してくると、特に高齢者からの紹介が多い中ではそもそも営業に行きにくいとかも出てきそうですし(とはいえ、相続は待ったなしという面もありますけどね)、何より販売チャネルが総じて収縮してしまうことは否めず、今期に限ってみると落ち込みがどこまで掘るかは見通せないかなとも思います。株価的には倒産するの?という位に叩き売られてますが、財務面や在庫の総量など表面からの見え方だけみるとそれもまた致し方ないかなとも思います。
 中計との乖離についても予め会社側から説明もありましたし、その補足の質疑も含めて、私の理解が及ばず想像力が足りない部分もありますが無策ではなさそうですから、新型コロナの落ち込みはやむ得ないとやり過ごした上で、その先を期待したいと思いました。ただ、やはりゆっくりと、という事になろうかと思います。もっと野心的にやってもいいのでは、と思う所もありますが、不動産としてはこれくらいの温度感でちょうどいいのかもしれませんね。
 還元姿勢については、当社のスタンスは変わらず、今期も減益予想ながら増配という計画になっています、質疑のやり取りで当然今後大きく業績が掘ると減配も含めた下押しはありえますが、その応援への感謝というスタンスは今も堅持されていますから引き続き優待のパンを頂きながら今後を見守りたいと思います。
 しかしながら、現時点で私のポートフォリオの状況からして、大きくイノベーションが起こるような要素も少ない、また急成長やカタリストを有しているわけでもないため、大きく主力級に買い戻すには至らないなというのが率直な所です。

5.さいごに

 いつもは熱心に質疑が出るのですが、今回は私の他に質疑に立ったのはもう一人の株主だけでした。それも何かメモを読み上げる一言だけで、既に説明があった内容だったので、意図がわからずに残念な感じでした(まぁ私の質問も意図がわかりにくかったりするので、人の事いえないんですけどね(笑))。
 また、開会前の受付では某株主が、マスクをくれと受付の方に突っかかっていて、おひとつお取りくださいと言われているのに、箱からマスクを鷲掴みで懐に入れる光景を目の当たりにしてげんなりしました。そもそもその方はマスクをつけてるんですよ。マスクが手に入らずマスクを1枚譲って欲しいということならわかるのですが、勝手に自分のお土産にされていたようで、新型コロナに感染すればいいのにと思ってしまい、自分の心の小ささにもげんなりしました。
 閉会後、退任される役員にも一言だけですが、ご挨拶も出来てよかったです。IR担当をされている方からも開会前に丁寧にお声がけ頂き大変嬉しかったです。

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