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日本管理センター(東1/3276) 株主総会レポート 2021/3/26

 東証1部上場の日本管理センターの株主総会に出席しましたので、レポート記事として整理しておきます。なお、当記事の記載は、私の心証に基づき脚色されており、意図せず誤認している可能性もあります。万が一、当記事の内容を投資判断の一助とされる際にはご自身のご判断で活用頂ければと思います。なお、記載内容へのご指摘やご意見、感想などお気軽に以下当方のツイッターアカウントよりお寄せ頂ければ幸いです(画像リンクを貼っています)。

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1.参考記事

  昨年の株主総会のレポート記事を再掲しておきます。

2.基礎情報

 総会の全体の流れは以下の通りです。時間は手元での測定ですので、誤差があると思います。

  10:00 開会 (武藤社長)
  10:04 事業報告(司会の事務局の朗読)
  10:08 対処すべき課題・議案上程(武藤社長)
  10:09 質疑応答
  10:20 議案決議
  10:22 閉会
  10:23 会社説明会
  10:48 質疑応答
  11:06 会社説明会終了

 出席株主はやはり10人位かと思います。ほぼ個人投資家だったように思います。背広族は目に留まりませんでした。

 武藤社長のあの美声で開会が宣言され、コロナ禍で可能な限り効率的な運営への理解を求められておりました。ということで、監査役からの朗読や議決権数の確認などは割愛されました。適正ですという一言ですね。いいと思います。

 報告事項はスライドを使って、生のナレーション、つまり司会をされている女性社員が朗読されていました。といっても要点を絞ってほんの数分です(笑)。この後、武藤社長の口から対処すべき課題も語られましたが、特段特筆すべきことはなかったです。人材、IT、コロナ禍での人の移動の抑制などなどですね。サクサク進んでいきます。

 質疑については、総会後に会社説明会があるため、総会の目的事項に直接関連しない事項はそちらでお願いしますと、事前のアナウンスがありました。これは例年同様ですね。

 ちなみに会社説明会の内容は、主に中計の内容で、そのプレゼンは動画で開示済なのでここでは詳細割愛します。

3.質疑

 以下質疑の内容のメモを書いていきます。なお、私の主観に基づき脚色していますし、誤認している可能性もあります。参考程度に扱って頂ければと思います。なお、会社説明会での質疑もここに合わせて記載しておきます。
 ★印は私が質問した内容です

★Q 対処すべき課題における人材、IT投資の状況について
 ここ数年、人材面では若者の育成や定着に課題があった所から様々な施策を打ち改善に努めてこられたと思う。対処すべき課題で引き続き対応をしていくことになると思うが、一連の施策を通した人材面での対応の成果や今後の取り組みについて詳細を教えて欲しい。またIT投資の部分も、近年セールスフォースの本格導入等DX推進への対応を進めてきているが、その成果や課題についても教えて欲しい。
A
 人材採用では、東証1部上場となり10年となり認知度や信頼度の評価もあり好調である。一方、コロナ禍でリモートワークが中心となる中で(7割のテレワークを実践)、育成の部分ではこの1年をみると若干ではあるがブレーキがかかっている状況である。とはいいながら、ここ数年で新規採用した人材の定着や育成については、過去と比して総じて順調な状況である。今春の内定者も十分な数を確保しており、当社にとって満足できる状況である。
 ITについては、コロナ禍によりある意味強制的にIT化が進んだこともあり、セールスフォースの活用等のDX化が進捗した。詳細は会社説明会にてご説明したい。
【考察】
 人材面では育成部分で足元だけをみるとややそのスピード感にブレーキがあるものの、話しぶりからすると採用も含めて順調のようです。営業主体の会社なので、現場の対応がどうしてもやりづらい中で、育成までとなるとなかなか難しい局面もあろうかと思いますが、サブリースのような社会的逆境にある同社にあって、採用面でも順調なようで何よりです(回答の中で具体的な数値の表現もありましたが、ここでは割愛します)。
 IT投資は社内の合理化的な部分での進捗は順調のようです。ある意味コロナ禍がDX化を強制的に前進させているというのはどの業界でもそうだと思うので、あとは、導入したDX施策が、DX導入が目的化することのないように成果を挙げていってもらいたいなと思いました。

Q 管理戸数の目標に対する進捗と取り組みについて
 管理戸数10万戸を目標として掲げられているが、その進捗具合と、今後積み上げいく取り組みについて教えて欲しい。
A
 現状の10万戸は通過時点でその後も新中計で開示の通り16万戸を目標を設定しており、現状では計画通り進捗している状況である。毎月KPIで申し込み数も含めて先行指標として開示しているので、投資判断に活用頂きたい。
【考察】
 進捗具合はKPIで開示されているので、それを見てくれって感じでしょうね(笑)。管理戸数の16万戸に向けて、既存事業へ回帰という中で、どういう物件を主に注力していくか、という質問であればもう少し面白い回答が引き出せたかもしれませんね。例えば同社の得意とする地方物件なのか、首都圏なのか、あるいは外国人やシニア等のセグメンテーションでの狙いはとかですね。

Q 倉敷の物件取得について
 7億程度の投資で取得した倉敷の物件はどのような経緯で取得し、今後どのように活用するつもりなのか。
A
 大学を誘致するために、倉敷市が物件取得した物件である。しかしながら、立地等の兼ね合いもあり目論んでいた学生の入居も低位となっている中で、当社に相談があった。元々大規模な物件を地方で借り上げするような業者はあまり存在がなく、結局当社が入札を行い管理受託することとなった。当社では学生に限らず、様々な地元企業の社員の方等にも入居を頂くスキームを通して、今は管理受託を行っている状況である。
【考察】
 倉敷市の例のように、今後地方の賃貸への入居は色々厳しい局面があると思います。一方でその地方に強みを持つ同社の場合、その難しい局面を受けて難局に立たされるというのは定説だと思います。一方で、今回の例のように逆説的にそれが機会になり、一定の収益が得られるビジネスとなるということは、今後も出てくるのではないかと思います。もちろん、全体の寄与からしたら今回のような稀有な状況はそうそうないとは思いますが、地方も大学や企業の誘致を進めなければ衰退の一途なわけで、その環境下で、賃貸需要もしっかりした物件であればきちんと残っていけるのではないかと感じました。

★Q 下方修正に至った際の思い
 当社がガイダンス目標を修正するというのは過去に例のないもので、武藤社長が長年誇りにされていたガイダンス必達を今回ごめんなさいをした。子の事は、コロナ禍で様々な不測自体があって止む得ないことだと受け止めているが、売上はキープしていた事から、一定の利益を出す事も出来たのではないかと思い、この下方修正には覚悟のようなものもあったのではないか。どのような背景、想いでこのようなドライブになったのか思いを聞かせて欲しい。
A
 入居促進費をかければ空室が埋まるという状況でもなく、ある意味コストをかけてもリターンが見合わないという中で、リーシングに一定の時間を要する事を覚悟せねばならないということで、断腸の思いで修正するに至った。この時に無理をして投資を行い、少しでもこの状況下でのビハインドを埋めるようなマネジメントも選択できたかもしれないが、ここは潔く判断をしたということ。コロナ後の世界で、再び人が動くようになった時に、その機会を全力で享受できるよう、今の利益を追い求めるのではなく、まずは数を求めていこうという判断を行った。
(池田専務)
 昨春は人の移動が減って、我々もどのように、どの場所に促進費をかけると効果があるのか手探りだったため、広く投資を行うこととなった。しかしながら、この1年で効果的な促進費の投下ナレッジを得る事が出来たため、この点は昨春と大きく違う点である。これはDX化の恩恵もあり個々の物件毎に管理が出来ており、現状でも効果を見極めて戦略的に対応できており、詳細は伏せるが計画通りに投下、リターンが得られている状況である。
【考察】
 潔いといえば潔いですね。もう少し忸怩たる思いがあるのかなと思いましたが、まぁ人の移動が3割も減れば仕方ないという感じでもありました。いずれにせよ、無理な状況下で無理をするのではなく、それを受け入れて、その先を見据えた方策に舵を切るような柔軟性もあるんだなと感じました。一方で、その数そのものがリスクになることには変わりはなく、当然リスクを受容しなければ、その先の成長もないというわけですから、この辺りは信じるしかない部分もあります。というわけで、やはり大きな株数を持てないということになるんですよね(笑)。
 池田専務は現場の声として費用対効果を見極めて投下しており、計画通りということで心強い答弁を頂けました。

Q ガバナンス体制について
 多くの会社でガバナンス上の課題が色々と出てきているが、当社では誰が先頭を切ってガバナンス体制を構築する体制となっているのか。
A
 (服部さん)
 コンプライアンス、コーポレートガバナンス体制については、社内と社外で3人ずつ選任し、執行と監視を双方で管理する事を大切にしている。SDGsでは女性や社員への報酬株式の付与等一体感を持って取り組めるよう体制を構築している。
 (武藤社長)
 社員に対しては、定期的な研修を施すことにしているし、例えばコロナ禍対策で決められた政府対策のために19時職場ロックダウンをするなど、決められたルールはすぐに遵守するようにしている。
【考察】
 この辺りの質問はまぁ模範解答を得る形になりますね(笑)。いかにコンプラを遵守しているかをアピールされていました。まぁ大切なことですし、なにかとサブリースは業界としても後ろ指を指されやすい状況でもありますので、留意頂きたいですね。

★Q 中計の数値目標について
 利益目標については開示されていない。ROEだけでは配当でコントロー出来てしまうこともあり、現下のマーケットからの評価をみても、やはり利益面での見通しの不透明さが不安になっているものと思料している。実際、利益は当面凹凸しながらという事と受け止めているが、今の販管費率6%、営業利益率4%程度まで落ちている状況が、今後どのような水準になる事を想定しているのか、定性的な部分でもよいので教えて欲しい。
A
 具体的な数値はお話できないが、現状が底で今後は復調していくものと確信している。但し、利益目標を出さなかったのはこの策定中にまだコロナ禍の見通しが立っていなかったことも一因である。今でも2022年に人の移動が完全に元に戻るのか、あるいは2023年になるのかによってもやはり変わってくる。
【考察】
 とりあえず武藤社長自身はある程度2022年に元に戻るのではないかと思われているようですが、まだまだ不透明さもあることから、ROEで設定をしたということですね。いずれにせよ、今が底であるという強気の発言も頂けたので、託している身としてはあとは見守るだけですが、KPIをモニタリングしながら長い目で見ておきたいと思います。

★Q 配当政策について
 これまで配当性向40%を遵守してきたわけだが、今回の説明から「増配」を前面に出されている。これは当面利益は凹凸があるだろうが、減配は出来るだけしないというメッセージと受け止めていいのか。以前に減配をしたこともあったが、考えが変わったということか。
A
 今の利益が底であるという認識と、ある程度の利益の凹凸でもって、今後減配しないというメッセージと受け取ってもらってよい。一度(減配となり)すみませんでした。
【考察】
 一度、配当性向40%堅守のために、減益の際に減配したのですが、苦い経験のようでした(笑)。今後、出来るだけこのような事がないようにという事で、ある程度配当性向だけでなく、減配には慎重な姿勢が示されたものだと理解しました。(もちろん、絶対はないですけどね)

★Q 資金調達を受けたM&A政策の検討について
 今回の資金調達はTIPを意識されたもので、今後の資金調達のイメージとこれを活用したM&A政策における検討の方針や展望について教えて欲しい。
A
 まだ調達はされていないが、取得したものはM&Aに活用していく。具体的に言及出来る事は現時点ではない。(見ている事と思うが)あとはWebセミナーをご覧頂ければと…。
【考察】
 この質問だけ、塩対応でしたね(笑)。まぁM&Aの具体的な方策ともう少し聞き方を工夫すればよかったです。例えば、リビングサービスのような事を展望していますが、こういった業態とか、あるいは、先般提携したような業界のDX化に向けた領域とか、もう少しヒントというか目指すべき方向性みたいな話が聞きたかったです。私の質問の仕方が下手くそでした(笑)。

Q 社外取締役の形骸化防止について
 社外取締役がお飾りではなく、実務的に監視の目を持てるような体制構築に努力してもらいたい。
A
 会社として形式的なものは全く求めていないし、実態口うるさくご指導頂いている。一定の専門知識を持ち、発言機会の多い社外取締役を選任し今後も有益な運営を心掛けてまいりたい。
【考察】
 まぁ形式的なものを嫌う会社ですからね(笑)。

4.所感

  特に大きく同社への見立てが変わるようなこともありません。ただ、今は利益ではなく数を追い求め、将来の機会を最大限享受できる準備をしていきたいということですが、これは当然相応のリスクもあるわけです。管理戸数の数を求めて、大量に受託した場合、そのリーシングがうまくいかなければ逆さやになり、低利益になるわけですからね。

 実は管理戸数の数を追い求める姿勢と、そのリスクをどう考えているか質問したかったのですが、武藤社長だと、結局、リスクはある、それを享受してこそなのだと回答頂けるだけで、ではそんなリスクは回避せよも違うし、転嫁せよも違うし、結局軽減策どうするの?ってなるだけなんですよね。と思って直接的な質問はやめました(笑)。

 あと気になるところでは、プレゼンや答弁の中で、数値に係る部分を事務局に確認するシーンが2、3度ありました。武藤社長は数値が全て頭に入っているの常なのですが、今回も現状の管理戸数が正確に空でいえなかったりしていて、少しあれ、って思いました。いや、そもそも空で言える必要もないのですけどね(笑)。

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