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丸和運輸機関(東1/9090) 2021/3 Q3決算精査

 東証1部(9090)上場の丸和運輸機関が2021/2/1にQ3決算を開示しました。アマゾン向け個配が増勢となる中、株価もだいぶ上昇してきました。そんな中、同社は原点である低温物流や最近ではBCPといった社会的意義の高い事業にも意欲を示しています。というわけで、決算を簡単に見ていきたいと思います。
 参考までに直近の株主総会レポート記事と直近決算のリンクをつけておきます。

1.概況

 Q3決算についても2桁の増収増益決算となっており、堅調な事業が継続しています。特に利益は2割増が続いています。EC常温、低温、医薬各セグメントが増収となっています。特にこの期はクリスマス商戦で荷量が増える期でもあり、化粧品等の動きにも左右される中で、医薬物流の部分も僅かとはいえ、減収トレンドから、増収トレンドに転じている辺りはよいですね。一方で、アマゾンを主軸とするEC常温については、増収が21%程度であり、これは期待と比べてどうでしょうか。私としては、ヤマトや佐川もアマゾンの荷受けをしてきている中でも、これだけの伸長を見せている事に寧ろ安堵している感じです。
 利益率についても特に変調はなく推移しています。人材への投資、設備への投資、そしてDXへの投資をより加速させている印象の短信文章からもうまくキャッシュフローを回せているなという感覚でもあります。全体絶好調という感じでしょう。
 但し、マーケットは上方修正を期待していたと思うのですが、それがなかったので、決算プレイのためか、株価が本日上がった分は帳消しになり、なんなら、その倍返しになりそうですね(笑)。

2.事業の状況

 全体感としての記載です。 

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 人材、先端技術、新市場へのチャレンジに取り組み、アフターコロナを見据えてインフラ基盤を支える事業を推進していくということです。
 低温物流では産直支援を通して経営支援、BCPへのとりかかりについても言及があります。DXへの投資もあります。まぁいずれも具体的な施策などはここで細かく言及がありませんので、雰囲気だけ感じ取る感じですね(笑)。BCPは利益率が下がる事業ですので、この辺り、来期以降の説明をうまくやっていかないと、変な期待が先行して、今のCAGRが続くとみられると厄介なので、うまくIR活動を行ってほしいなとも思います。

 各セグメントのコメントです。

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 EC常温は主にアマゾン向けとなりますが、ここはあまり詳細を語らずですね。やはり荷受けのシェアをどういう形で維持していくか、少し確認が必要かなとも思っています。最近我が家だけかもしれませんが、桃太郎率が下がっているんですよね。
 食品はスーパーの業績が好調ということもあり堅調です。最近では価格敏感度が上がっているということもあり、今後の荷量も気になりますが、基本的に取引先の拡大や産直を含めた付加価値を高める方向に取り組んでいるため今後も堅調ではないかと考えています。もちろん、消費動向による凹凸にはある程度お付き合いする事にはなるとは思いますが。
 そしてこの繁忙期に一番気にしていたのはインバウンドが完全に剥落している医薬物流でした。まぁ要するにマツモトキヨシ向けですね。ここが僅かとはいえ、前期比増収に転じたのは凄いなと思います。マスクとか衛生用品は堅調といっても、やはりインバウンドを含めた化粧品などが剥落している中での実績ですからね。

3.バランスシート

 バランスシートに大きな変化がありました。転換社債の発行などにより、現金が大きく増えています。290億ですよ(笑)。総資産が518億ですから、これまでの中では最もキャッシュリッチな状況ですね。新規食品センターなどへの投資を前提とした調達ですので、有効に投資して更なる成長を果たして頂きたいですね。

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4.業績について

 PL情報をまずグラフにしています。繁忙のQ3にきちんと伸びていますね。

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 そして据え置かれた業績予想からQ4を逆算すると以下になります。

 売上 16,115百万円
 営利 368百万円(利益率 2.3%)

 ちなみに前Q4は後半を既にコロナ影響を受けていますが、以下実績です。

 売上 25,022百万円
 営利 1.448百万円(利益率 5.8%)

 素直にみると36%減収、75%減益となる見込みです。いや、ないでしょう(笑)。
  ただ投資状況や従業員への還元など色々あると思いますし、あまり皮算用してもしょうがないので、これ以上の遊びはやめておきます(笑)。

 参考までに、詳細な四半期毎のデータを添付しておきます。

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 今後はスーパーの取引先の拡充やBCPという社会インフラ基盤構築といった今までのアマゾンで成長!というステージから再びかつての主業への再投入や社会還元という視点が強まってくるものと思います。
 このため、利益成長率という意味で、従来のような2割、3割成長は当たり前という世界から落ち着くものとみています。ですが、私は高成長で稼いだお金を、更に成長は持続しながらもスーパーに寄り添い、更に社会インフラへの還元をしていくという姿勢は大変すばらしいと思っています。利益成長だけが全てではないと強く思っていますし、そういう気持ちで同社に寄り添っています。
 心配なのは、同社への株価の値付けが勝手に高成長を期待しているのではないかということです。BCP事業など意義は高いですが、利益率は落ちます。そういうことを冷静みて、長い目で寄り添ってくれる株主にこれまで以上に恵まれ、良い会社へと邁進していってもらいたいなと思っています。

 頑張れ、丸和運輸機関!

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