見出し画像

WDBホールディングス(東1/2475) 2020/3 Q3決算精査

 東証1部(2475)上場のWDBホールディングスがQ3決算を開示しています。人材派遣、CRO事業共にとりわけ大きな成長を見せているわけではありませんが、事業の状況としては堅調に積み上げが行われています。一方で、今期は人材育成や営業拠点の新設といった先行投資を推進する期としてコスト投下が進んでいるため、減益決算となっています。先行投資の効果が即座に効果としてみえるともう少しトップラインが伸びてもよさそうですが、そこまで高い成長とはいかず、この辺りが期初の計画から下振れしているだろう状況を招いています。加えて、派遣先と派遣社員の間を結び、効率的なオペレーションを実現することを企図したドコニコが失敗しており、見込んでいたボリューム増や効率化といった側面の効果発現が見えないといった状況です。低迷しているという表現をされていましたが、今は我慢の時ですね。というわけで、言いたいことは書いてしまいましたが、超手抜きの決算精査を書いていきたいと思います。なお、PPT資料は未作成でありエクセルのみとなります。

① PLの状況

 売上と粗利の状況です。QoQでもYoYでも増収は維持していますが、先行投資で拠点を増やしたりしている中では心もとない水準かなともみえます。粗利率はQ3で27.3%を確保しており、前期より0.6%向上していることと、この27%台はすべての期において過去最高となっています。

画像1

 次に販管費の状況です。Q3では16.4億を支出しており、高水準となっています。前Q3では13.8億でしたから、2.6億の増額となっています。Q3累計でも7.6億の増額と今期の利益の抑制要因となっています。この増額要素がなければ営業利益は12%程度の増益基調となっており、従来の2桁成長の水準となります。この先行投資ですが、人材育成を企図したラボ施設の新設のほか、営業拠点と既存拠点も含めたルート営業の人材拡充のために支出しているものです。
 派遣労働者のスキルアップと人材総量の確保という点では、人材獲得と育成は死活問題ですから、その育成のためのラボの拡充は重要な施策だと認識しています。一方でルート営業のアルバイトを中心とした体制強化については、費用対効果を見て分析をして頂きたいとも思います。効果が顕在化するまでに一定のリードタイムがあるとは思うのですが、地域の体制を強化したコスト投下とトップラインとの相関がどうなっているのかは総会の時などに聞いてみたいなと思います。

画像3

 営業利益の状況です。粗利の確保を主因としてQ3では営業利益は増勢となっています。Q1-Q2と比較すると結構増えていますが、前期のQ3がだいぶ積み上がっていたので、前期比でみると減益幅が広がるといったことになっています。

画像3

② 着地想定

 同社は東証が示す基準の通り、売上1割、利益3割の範疇であればわざわざ事前の修正をしないというIR方針です(それはそれでどうかなと思わなくもないのですが)。
 まず、売上については、稼働日も大きく減るわけでもないため、これまでの水準を維持するものと考えています。Q4で108億くらいとみると、通期では432億程度でしょうか。ガイダンスは466億ですから7%程度の未達と思われます。仮にQ4が前期並みの103億程度となるとちょうど10%未達となるため、修正基準に抵触することになります。
 次に営業利益ですが、売上108億に対して利益率を9.8%程度で見てみます。すると営業利益は10.6億となり、通期では48.0億となります。ガイダンスは49.9億ですから4%程度の未達となります。なお、Q4では毎期業績賞与の支出をしており、利益率は前期で9.4%、前々期で9.2%となっています。しかしながら、今期は売上も利益も危うい中で若干調整をして9.8%として計算しています。ちなみにこの賞与が薄かったと思われる17/3期の利益率は10.9%となっています。仮に前期までと同様の賞与をしたという前提で営業利益率を9.3%程度でみるとQ4の営業利益はちょうど10.0億程度となり、着地は47.5億となり未達幅は5%程度になります。まぁこの程度なら賞与も従来通り支出するかもしれませんね。
 ちなみに四季報予想では営業利益以下は会社予想よりごくわずかですが強気設定になっており、コンセンサスがここにあると株価的には軟調になりそうですが、一方で株価の推移をみるとこの辺りは織り込まれているのではないかとも思うのですがどうでしょうかね。

画像4

③ さいごに

 今期は先行投資として利益が抑制されることはよかったのですが、売上が想定より伸びてこない、そしてその背景としてドコニコのリリースに失敗したことが残念です。ドコニコのリリースによって、派遣先や派遣社員の間を繋ぐオペレーションの効率化の施策が推進出来ていない点に対して、現在も鋭意改修中でありますが、これのメドがつくのは来期上期中で、その効果は早くても来期後半となるとまだまだトンネルの中かなという感覚です。加えて来期はオリンピックがあることで、労働環境に変化が見られます。稼働時間数の抑制という影響も気になるところで、来期もまだ我慢の展開が続きそうかなと思います。この辺りの転換をどのあたりで市場が織り込み始めて株価が復調していく流れになるのか、あるいは来期もまだ低迷が続くとなった時に、市場はどこまで失望を強めるのか、大変留意のいる投資先だという認識を持っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?