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全国保証(東1/7164) 株主総会レポート 2020/6/19

※同社のビジネスモデル図解を文末に追加しました。(2020/6/21)

 東証1部上場の全国保証の株主総会に出席してきました。株主総会の様子について、当記事にてご紹介したいと思います。なお、当レポートは私の心証に基づき脚色されており、意図せず誤認している可能性もありますのでご容赦頂ければと思います。
 ご参考までに昨年の同社の株主総会のレポート記事は当方のブログ記事にてUPしておりますので、併せてご参考になれば幸いです。

 当記事は同銘柄の売買を推奨するものではありません。株主総会レポートネタの読み物として何かの参考になればと思いますし、同社の理解に繋がれば幸いです。もし、お気づきの点などあればぜひツイッターブログにてコメント頂ければ幸いです(私自身の勉強にもなりますので)。

1.基礎情報

 まずは当日のタイムテーブルです。手元の時計での測定です。新型コロナウィルスの影響を考慮し、事前の案内通り、迅速な議事運営となり、1時間程度での閉会となりました。例年多くの株主から質問が出て、正午近くまでやっていますから概ね半分の時間で終わったことになります。
 特に対処すべき課題では、新中計の方針で今後対処していく方針を掲げたのみの形式的なものとなりました。ナレーションによる実績の報告の方が時間が長く報告事項の趣旨からすると妥当なのですが、私個人としては、今後の話をもう少ししっかりお伺いしたかったかなと感じました。

  10:00 開会 (石川社長)
     ~議決権数の報告や監査報告は割愛~ ※
     ※社長が審議に足る旨と監査適正の旨一言言及して終了
  10:05 報告事項(動画ナレーション)
  10:17 対処すべき課題 (石川社長)
  10:19 議案上程 (石川社長)
  10:23 質疑応答
  10:54 採決
  10:56 新任取締役・監査役の紹介
  10:58 閉会
  

 なお、同社の株主総会では毎年豪華なお土産が配られていましたが、「今年から」お土産を廃止しました。加えて自粛が呼びかけられる中で参加株主は目算で30人いない程度でした。ソーシャルディスタンスを確保した150席程度の椅子も空席が目立ちましたが、コンパクトな運営で良かったと思います。お土産争奪戦のような長い列も出来ませんしね。昨年はお土産だけもらった方も含めた当日参加者数は532人でしたから、その少なさに驚きますね。なお、お土産に関しては、「今年から」と記載がある通り、これを契機に来年からなくなるものと思います。元々公平性の観点から議論があったとのことですので、当然の処置だと認識しています。

 会場では昨年と同様の社員の方が全員マスクにフェイスシールドを装着され厳戒態勢の中でお出迎え頂きました。入口では体温測定のための機器が置かれていました。あの機械の前を通過する時はちょっとドキドキしますよね。空港の金属探知機と同じ感覚です。受付後、ペットボトルのお水といつもの高級お手拭きを頂きまして、会場に入ります。開会15分前には会社紹介の動画が流されていますが、その大画面の迫力ある映像を見ているのはこの時点でまだ20人程度の株主です。最後尾には背広族の方が数名お越しになっていましたが、個人株主があまりに少ないため、彼らの存在も目立ちました。

 開会まで時間もあったため、少しの距離を取って、いつもお世話になっているIRご担当者様と少し雑談をさせて頂きました。そうこうしているうちに役員の方が登壇され、石川社長の耳にやさしい語り口の議事運営が始まりました。流石に役員の方はフェースシールドは装着されておらず、マスクのみでした。

2.質疑応答


 報告事項の説明や議案上程などは流れるようにあっという間に終わりました。特に新たな観点の説明はありませんので割愛します。決算説明資料でもご覧いただければ概ね同様の事が把握可能です。従いまして、以下では質疑応答の様子をメモとして残しておきます。なお、繰り返しになりますが、あくまで私の主観に基づき脚色しておりますので、その点ご了承下さい。

 なお、円滑な議事運営のため、1人1問という指定がございました。4問の質問を携えて臨んだ私にとっては蒼白な宣告でしたが、しかし、そもそもどれも捻り出したような質問で絶対聞きたいという類の質問でもなかったので、まぁいいかと思いました(笑)。結果的にあまり質問も多く出なかったため、私は2問質問させて頂きました。ルールに反した中で、指名をして下さった石川社長の議長としての運営にこの場を借りて御礼申し上げます(誤解の恐れぬように書いておきますが、強引に質問に立ったわけではなく、十分他の方の質問も枯れたことを見届けて、申し訳なさそうに挙手しました(笑))。

※ ★印は私が質問した内容です。

★Q 数値目標の開示姿勢について
新中計や今期業績予想ガイダンス共に数値目標を掲げられている。このような誠意ある開示姿勢に感謝するとともに、中計では大胆な増配計画も含め期待を抱かせて頂けることを嬉しく思っている。一方で新型コロナウィルスの影響が見定められない中で、とりわけ中計の数値目標については再精査の後に開示をするなどの選択も出来たと思うが、コロナ影響なかりせばの前提で開示をした判断のプロセスはどのようなものか。
A
新中期経営計画については、昨年の秋口より外部環境の精査を行いながら、策定を進めてきた所である。年明け早々に、中国の方ではウィルス関連のニュースは耳には入っていたものの、粛々と数値が取り纏め、2月頃には内部としては概ね目標を共有することが出来た。その後、新型コロナの件が、国内にこれだけの影響を及ぼすことになるとは想定できず、開示前にこの影響を織り込むということも検討はしたものの、具体的に住宅市場にどれだけの影響があり、住宅ローンを借りてらっしゃる方にとっての影響度合いの測定が困難な状況であった。代位弁済の高まりや新規保証実行件数(金額)などに与える影響も合理的な算出が難しく無理なシミュレーションをするよりも当初の想定をまずはお示しするということになった。今後、影響がより具体的にかつ合理的に見積もれるようになった時に、必要に応じて適時適切に目標数値を改めてることも検討していきたい。(社長)
■考察
影響が薄いかどうかについては、特段言及がありませんでした。保守的な会社ですから、安易に「影響はそこまで大きくない」ともいえないでしょうし、実際失業率の高まりなどを背景に相応の影響があるものと捉えています。会社の姿勢として、中計は何も数値目標だけで構成されているわけではありませんから、定性的な取り組み、方針については社内外に示す必要があって、それは揺るぐことのないものであるという自信のようなものがあるのかなと感じました。確かに感染症の影響という意味で制御不能な要素でもって、数値に影響があるかもしれませんが、掲げた方針、定性的活動活動をまずは進めていくという意思を感じました。ついつい、利益がどうなる、配当がどうなるというところに目が行きがちですが、そこばかりに目が奪われないように改めて自分自身も気をつけなければならないなと質問をして自分を省みました。

Q 取締役会の運営と社外取締役の役割について
株主として取締役会が自由闊達な議論がなされることを期待している。常勤取締役を中心とした従前の価値観に捉われた議論ではなく、社外取締役を含めた多様的な議論を期待しているが、取締役会での議論の状況や社外取締役からみた取締役会の運営や自身の役割について考えを聞かせて欲しい
A
取締役会の議論においては、多様的な視点に基づき議論がなされることが重要だと認識している。また今回新任の社外取締役候補として今戸氏をご提案しているが、弁護士としてガバナンス構築は当然のことながら、M&Aの案件にも精通していることや女性の目線での提言もいただくことを期待している。この度、初めて女性の役員を登用したことでより多様的な目線を持てるよう、今後も努めていくし、取締役会以外の場でも重要な案件の議論などを日常的に取り組んでいる。(社長)
自分自身の銀行での業務経験、とりわけ地域金融機関としての役割という観点から、取締役会に留まらず、重要な案件の議論の場に至るまで闊達な意見を申し上げてきている。また保証審査の仕組み作りや企業ガバナンス、人事管理などのテーマでとりわけ積極的に発言をしている。全体的な雰囲気としては、忌憚のない意見を述べられ、質問に対して常勤取締役から丁寧かつ十分な説明を受けている。更に多様な人材が登用されることになるため、より多角的な議論が出来るものと期待をしている。(上條氏)
■考察
このテーマは過去何度か総会でも取り上げられておりますが、上條氏の存在感は結構大きなものを感じますね(笑)。石川社長にもきちんと意見を具申できるような関係性にあると以前にも聞いておりましたから、良い意味で牽制効果を発揮していただきながらよりより取締役会を運営していってもらいたいと思います。ちなみにかねてより女性目線ということも総会でも取り上げられてきましたが、女性役員が選任されたこと、しかもMAや企業ファイナンスの専門家の方ですから、今後の銀行子会社系などの買収など期待をもって見ていきたいと思います。

Q デフォルト率のシミュレーション期間の変更について
決算説明資料において、資本の検証をシミュレーションする際に用いるデフォルト率について、従前は過去10年の平均を使用してきていたが、今回より過去15年の平均と期間を変えたのはなぜか。また、IR資料についての要望であるが、当社事業を「家賃保証」と認識している個人投資家が多いと感じているため、正しい理解を促せるよう、より丁寧なIRを期待している。
A
資本の検証の際に用いるデフォルト率について、従来の10年期間の平均を用いるとここ数年の低位な状況が続いている中では小さく出てしまうということがある。リーマンショック時のややデフォルト率があがった時のデータも期間平均として用いる事が妥当と判断し、今回15年期間平均に変えた。また住宅ローンの期間は申込30年だが実質的には15年以内という状況であり、実情の期間という事も考慮しての期間となっている。また、IRについてはビジネスモデルを理解してもらえるよう注力していきたいと考えている。当社が保証しているのはあくまで実需の住宅ローンの保証であることことをアナリスト向け説明会や個人投資家向け説明会などの場で積極的に説明を果たしていきたい。コロナ禍にあって形態はどうあるべきか今後議論も必要だと捉えているが、積極的に発信をしていきたい。(青木氏)
家賃保証の話はかつて当社もやっていたことがあった。今もごく僅か残高は残っているが新規は受け付けておらず事業としてはもう実質やられていないものであるため、誤解のないよう説明をしていきたい。(社長)
■考察
デフォルト率については、確かに10年で見てしまうと、低位になってしまい、ストレスが小さくなってしまうのでしょうね。ストレスチェックの意味合いが強いこともあり、リーマンショックを入れてという事だと思いますが、このコロナ禍はどうやらそれを超える悪影響がありそうということですが、どうなるでしょうかね。案外住宅需要や住宅ローンは賃貸家賃と比べると影響は軽微といわれてますけどね。あと、青木氏の答弁は抜かりないなと思いました。IRの資料への記載の提案でしたが、それはそれで検討されると思いますが、IR活動をどのように行ってきたかを説明し、今後は形態は変わるかもしれないというエクスキューズをしつつ、IRも頑張っていくというソツのない答弁だったと思います。

★Q 求償債権回収の現状について
求償債権回収については、前期は計画より下ブレたようだが、コロナの影響があったものと認識している。この要因の他、あけぼの債権回収社の体制上の課題や不動産市況の外部要因などどのような背景があるかを教えて頂きたい。また、今期以降は例年80億/年程度の回収実績を90億/年超に改善していく事に加え、他社保証債務の回収業務へも業容拡大を進めていく中で、あけぼの債権回収社を主体とした体制上の課題はないか。
A
昨年の実績については、指摘の通り下振れしている。この構造は代位弁済が生じた後に、一定期間を経て回収となる性質のものである。前期については、上期の代位弁済の発生そのものが少なく推移をしており、その結果、下期に回収する絶対額も少なくなったという側面もあろうかと思う。不動産市況の側面からも任意売却等を経た回収効率の指標も変化はなく良い状態を維持出来ており、固有の課題要素は生じていない。しかしながら、新型コロナウィルスの自粛の影響により不動産売買の状況が低位となったり、裁判所の競売業務等において、3月末以降一部滞留が見られるという状況である。今後はこの滞留がどのくらいのスパンで回復してくるかを注視しつつ、全国的な不動産売買の状況も踏まえながら年度内に回収の計画を遂行できるよう指示を出している。あけぼの債権回収の回収計画は前期も計画通りの実績を挙げることができ、在宅勤務の影響で足元、若干の計画遅れがみられるが、昨年従来アウトソースしていた債券を自社G内で処理できるようになった実績を今年度は全国保証全体で共有しながら進めていける自信もあり、体制上の課題も特段ない。(山口氏)
せっかく設立したあけぼの債権回収社なので活用してグループとして成果をあげていきたい。なお、保証会社が回収をするのと、回収会社が回収に当たるのでは相手側のニュアンスも若干異なるようで、思わぬ所で効果的な回収が出来たというケースもある。(社長)
■考察
コロナ禍の影響として、失業→代位弁済→回収という流れになります。このうち、全国保証として対応力が試されるのは回収部分ですし、この回収業務はあけぼの債権回収の買収によって自社で債権を運用することを標榜しているチャレンジ領域だと認識しており、重要な部分だと思い質問しました。失業や代位弁済はある程度不可抗力で生じてしまうでしょうから、如何に回収で損失額を抑制できるかは、足元を見ても今後保証債務が膨らむ中でも重要な部分だと思っています。現状では大きな課題感もなく遂行出来ているということで、あけぼの債権回収の社長でもある山口氏からも丁寧かつ的確なご答弁を頂き安心いたしました。

以上、簡単ではありますが、同社の株主総会のレポートとさせて頂きます。

3.ビジネスモデルについて

 全国保証のビジネスモデルを簡単な図解にしてみました。1枚の絵にするのはなかなか難しいのですが、こういうの作るのは楽しいですね。もしここは違うとか、この方がいいということがあればぜひ、ご教授頂ければ嬉しいです。

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