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オリコンHD(JQ/2498) 株主総会レポート 2019/12/20

JASDAQ上場の建設コンサル会社のオリエンタルコンサルタンツホールディングス(以下「オリコンHD」)の株主総会に出席しましたのでレポート記事にします。なお、当記事の記載は、私の心証に基づき脚色されており、意図せず誤認している可能性もあります。万が一、当記事の内容を投資判断の一助とされる際にはご自身のご判断で活用頂ければと思います。

なお、先立って実施されていた決算説明会のレポート記事をブログにUPしていますので、併せてご参照頂ければと思います。

0.基礎情報

まずは当日のタイムテーブルです。手元の時計での測定です。
  10:00 定刻にて開会 (野崎社長)
  10:02 株主数・議決権数の確認
      →570人/1,573人(36.2%)
      →47,790個/58,471個(81.7%)
  10:03 監査報告 (小道氏)
  10:07 報告事業の説明 (野崎社長)
  10:24 議案上程(野崎社長)
  10:27 質疑応答
  11:00 議案決議
  11:03 閉会
  11:03 取締役挨拶(名前+よろしくのみ)
  11:05 経営説明会(野崎社長)
  11:25 質疑応答 
  11:45 終了
  

会場はオリコンHD本社が入居するオフィスビルの会議室です。西新宿の奥地、中野坂上の近くという事で新宿から大江戸線に乗り西新宿五丁目が最寄です。しかしながら、新宿までの電車が遅延し、新宿着時点で9時を過ぎていたため、新宿からタクシーです。普段タクシーは使わないのですが、600円位で行けることを考えると一刻も早く着きたい思いが強かったです。ちなみに開会は10時なので、これに間に合うという点では全く焦る必要がないのですけどね・・・。ビルの入り口を入ると、案内版が出ています。

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案内に従い会議室に向かいます。受付を済ませると、伊右衛門の525mlペットボトルを頂きます。資料の配布はありませんし、お土産もありません。私はお土産目当てではないので、別にこれでいいです。いかにも普通の会議室という様相で70席位の椅子が並び、机はありません。ノートパソコンを操作したいので机があると助かるのですが、贅沢は言えませんね。9:15位に到着しましたが、まだどなたもいらっしゃっていません。先日、東証での決算説明会にも参加していたため、そこでお世話になった社員の方からもお声がけ頂き、先日はお世話になりました~という感じのライトなやり取りをさせて頂きました。ここで、当日の流れを聞き、総会後に決算・経営戦略説明会がある旨を教えて頂きました(これは招集通知に書いて頂きたいですね)。個人投資家IR活動の充実の一環でこういう活動をして欲しいとコメントしようかなと思ったら、やる予定と聞いて変な質問をしなくてすみました(笑)。

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こんな感じで開会までの間、前方スクリーンには次々と事業活動の様子のスライドショーが流れています。まぁ色々やってますね~。9:40を過ぎた頃になると続々と株主さんが入室されますが、スーツの方が圧倒的に多いです。OB株主の方も多く出席されると聞いていたので、なるほどな~と思っていました。だから年齢層も高いのですね。そうこうしていると、役員一同が入室し、いよいよ開会です。

1.事業報告・議案上程

事業報告は事業報告に書かれた文言の朗読がメインです。一応サマリのスライドが用意されており、前面スクリーンに順次投影されています。粛々と進んでいきますが、時間もそこまで要さずに議案の上程も含めて20分弱といったところです。

2.株主総会での質疑応答

株主総会での質問の内容をここにメモを残しておきます。合わせて、私の所感も併記します。なお、★印は私が質問した内容です。質問の際には、前方のマイクスタンドまで移動して話すというちょっと変わった形式で、余計に緊張して自分で何を話しているかわからなくなりました(笑)。

★Q 取締役選任の人選について
社外取締役には弁護士と銀行出身の方を選任されており、法律と会計という両側面でアドバイスを頂けているものと認識している。一方で、当社事業は国や自治体からのお仕事も多く、発注者目線での助言や人脈形成の観点からこのような方面からの人選のお考えはないか。また、地方創生や災害対策等では女性目線が求められるかと思うが、現状、女性の取締役はいない状況である。女性がいればいいというもんもではないものの、今後の取締役への登用についてはどのような方針を持たれているか。社内的には女性のネットワーク活動として人材定着への施策はなされていると思うが、管理職登用などリーダーシップを発揮するという観点での女性活躍の現状はどのように考えているか。

A
当社グループでは官公庁の仕事も多くしているという中において、発注者目線での当社事業の推進の観点が重要なものである認識している。このような状況の中で、現状では行政経験者という枠組みで官僚や地方自治の実務を経験された方を社員として採用している。国内外を問わず、案件プロポーザルへの適切な対応など発注者目線で様々な工夫が求められており、これらの方に活躍を頂いており体制を整えている。今後、社外取締役という立場でこのようなキャリアを積まれた方を招聘していくことは今後の課題として必要性等を検討していきたい。
また、女性という面では指摘の通り、きめ細かい目線であったり、育児の経験等からも多様的な視点があり、実際に現場でも管理職登用も行ってきている。女性ネットワーク活動では、女性の置かれている状況を考慮しながら育成をしていくことを重視するとともに、幹部職や海外で活躍する女性社員などロールモデルとなる社員を相互に共有しながらか活躍をしてもらう素地を作っている。指摘の通り、女性の活躍、目線、価値観は重要なものであると認識しており、将来的に取締役への登用という面でも人材育成の後にそのような機会に繋げられるよう引き続き活動を行っていきたい。

(所感)
発注者目線を持ち取り組むこと、あるいは特殊な特性がある官公庁という顧客を主要顧客として対応している実績からすれば、無策であるとは思えないわけで、実際「行政経験者」という枠組みできちんと手厚い体制を構築していることがわかり安心しました。社外取締役としていずれ招聘し、更なる強い連携が取れるといいですが、一方で単なる天下りとかになってもらっても困るので、うまくバランスが取れるといいなと思いました。また、女性の目線という点でも、ネットワーク活動が単なるパフォーマンスではなく、実体運用として回っている様子が垣間見れたのでこの点もよかったです。ロールモデルを設定し、かつ多様的な活躍を女性視点でもガイドすることが出来ればいいなと思います。

Q 営業利益率や自己資本比率が同業比較で低い背景・理由
当社の営業利益率は4%程度と低く、自己資本比率も同業と比較しても低い状況であり、周囲の個人投資家界隈においてもその点を危惧されて当社への関心が高まらないといった状況がある。営業利益率や自己資本比率が低い背景や理由についてはどのように考えているか。

A
中計の2025年において営業利益率5%程度を目標としている。確かに利益については、同業比でも利益率が低く、その点については十分認識をしている。利益率が低い背景としては、当社は事業拡大、将来の成長に向けた人材へ相当な投資を続けており、その投資が利益率を押し下げている要素であると理解してもらいたい。事業拡大への投資は、重点化プロジェクトとして100案件に近いプロジェクトにおいて、新たな価値創造とは何ぞやという事を考え、開拓していくためのい研究開発に約5億程度のコストを投下している。人材育成においても同程度の投資をしている。同業他社も程度感は存じ上げないが投資をしているだろう中で、当社として相当な投資を続けている。そして今後の着実な成長のためにはこの投資を緩めてはならず継続していくことが大変重要だと考えているし、それが今後の成長につながると確信をしている。8期連続の増収増益が持続出来ていることもこの投資が奏功しているものであり、低空飛行と感じられ申し訳ないとも思っているが、今後も着実に増収増益を確保していくための経営方針だと理解して頂きたい。
※自己資本比率の件には言及がありませんでしたが、「未成業務支出金」が急伸しているためかと思います。仕掛中の工事が積み上がっているとこのような構造になりますね。

(所感)
この投資が持続的に使途するということは、基本的な収益構造としてはやはり低利益率であるという事は認めざる得ません。投資なかりせば、という議論は一過性のコスト投下であれば理屈も通りますが、投資をしなければならない環境下にあるということは必要なコストだとみることができますからね。しかしながら、会社としてこの投資投下は新たな価値創造に相当の覚悟を持って取り組まれている印象ですし、会社が「着実に」成長し続けられるために大きな飛躍はなくても成長を持続させていくという意気込みを感じて、私は好印象に思っています。相当真面目で実直な会社なのだと思います。

Q 保守的な業績予想の開示は何をリスクとしてみているのか
毎年業績が保守的なものだと受け止めているが、このような開示となっているのは何か下振れリスクを懸念してのことなのか。今期の収益も開示水準から上振れを予想するが(質問者が)、どのような認識を持たれているか。

A
業績予想が保守的過ぎると多くの株主の方々からご質問を頂く。我々は2025年の中期経営計画に沿ったガイダンスを出しており、今のところこれを変えるつもりはない。しかしながら、社内では、この目標を少しでも前倒しして達成すべく活動をしているが、計画としてこれを修正開示する文化ではなく、従って業績予想のガイダンスも、結果的に超保守的なものになっている。計画はこのような説明でご勘弁頂きたいが、実際には少しでも前倒しして達成できるよう取り組んでいるところであり、期待をもってみていただきたい。

(所感)
冒頭にリンクを張ったアナリスト向け説明会の際にも、この中計については、一貫して修正はしないという姿勢です。ビジョンという名目で策定をしたものであり、努力もあれど外部環境にも支えられ絶好調だからといって、たやすくビジョンを変えるみたいなことはしない、地に足をついた元で、出来ることを全力でやるという表現がこの表現なのだと思います。ビジョンに示したガイダンスを徹底的に遵守するという立場ですから、結果的に社長が「超保守的」とまで言ってしまうガイダンスになっているんだろうなと思います。そして投資家としてこれをどう捉えるかは賛否が分かれるところではないかなと思います。すなわち、投資家は期待やサプライズというものを重視する傾向にありますし、株価のモメンタムという点では超保守的な予想を毎年並べられてもインパクトが薄れると感じるもので、その層からすると魅力が低く映ってしまうかもしれません。一方で、あれ、数年間を振り返ってみたら(業績が)ものすごい高みにいたんだね、ということになり、その時の還元力や企業としてのファンダメンタルズの好転に結果として株価がそれなりについてきてくれればいいという向きの方には支持されるのでしょう。

Q Webサイトのデザイン等がもう少し洗練されないのか
Webサイトやロゴなど全般的にCIデザインが質実剛健で好感を持てる一方で、今風にもう少し洗練されたものにはできないのか。Webサイトのデザイン性などは採用などの面でも会社イメージを創るものなので、より洗練されることを期待したい。

A
頑張ります。いかにイメージアップするか、ブランディングしていくかということは重要だと考えているし、IRもビジネスレポートの質を高めたり広報活動も注力している。Webページは会社の顔であると考えているため、貴重な意見として承る。具体的にいつ頃、どの程度出来るかはこれから検討していくことになるので、この場では回答はできないが、今後に期待してもらいたい。

(所感)
貴重な意見ありがとうで終わらず、きちんと検討するトーンだったですね。少なくても私にはそのように感じました。やはり真面目な会社だと思います。実際に出来るかどうかという側面もありますが、こういう意見にもPDCA回そう意識が滲んでいるように感じました。

Q ASEAN地域等における通信インフラ構築への関わりについて
フィリピン等ではWi-Fi環境も脆弱で満足にサービスが受けられないといった問題がまだみられる。通信設備の整備も広義的なインフラ構築の範疇であると認識しているが、当社が通信インフラの整備にも主体的に関わっていくことはできないのか。

A
通信インフラを特別な注力ポイントとして現状捉えているわけではないが、当然ながらこの分野に明るい人材もいることから、今後の課題対処や価値創造に何ができるのかは各現場で考えて仕事をしていくことになる。
<OGC米澤取締役から補足回答>
海外案件はほぼ9割がODA事業である。これらの案件は運輸交通が主体であるが、一部通信インフラとして基地局整備などの事業も扱っている。あるいは日本の地デジのような規格の導入案件などもみられるようになってきて、今後もこのようなインフラ整備の需要は増えていくものと理解しているため期待して欲しい。

(所感)
通信インフラよりまず鉄道や道路といったインフラがまだ未整備ということなんですかね。まだまだ余地がありそうな気がしてなりません。まぁ通信インフラの方が市場規模はまだ小さいのかもしれませんけど、そのあたりのマーケットインパクトの解説もあるとありがたかったですね。

Q 1Q進捗の赤字が毎年縮小している理由
毎年1Qは赤字であるものの、期を追うごとにその赤字幅が縮小してきている。これは偶発的なものなのか、あるいは何か施策を講じての結果であるのか、どのような取り組みをされての推移なのか。

A
従来は海外より国内の比重が高く、国内は検収が下期に偏重することから1Qは固定費が重荷になり1Qだけみると赤字という状況であった。一方で海外の寄与が足元で大きく、かつ進行基準適用となるため、この分の収益寄与が効いて、1Qの見た目が年々好転しているようにみえている。いずれにせよ、成長している証ととみて頂きたい。

(所感)
海外比率が高まり、進行基準のため、国内の期末偏重の効果が薄れるということですね。逆に進行基準のため、進捗の遅れなどプロジェクトに問題が生じると、どの四半期であったとしても下押し要素となるため留意が必要ですね。

Q 株価の分割や株主対策の拡充策について
株価が3000円を超えてくると個人投資家にはやや手が出にくい水準も意識されてくる。このタイミングでの分割や、更なる株主還元策の拡充をお願いできないか。

A
貴重な意見として頂戴する。趣旨は理解したつもり。

(所感)
ここは流石に踏み込んだ発言はできませんね(笑)。あまり余計なことを言うとインサイダーっぽくなってしまいますもんね。単価については、東証の指導としては40万だったはずですから、直ちに、ということは難しいかもしれませんが、流動性の観点からいえば分割をして頂けると嬉しいですね。

★Q 株主還元の方針について
配当の方針は複合的な観点を元に決められるという基本方針や継続した投資をしていくことによる内部留保の重要性も十分認識しているものの、配当性向15%程度という水準は低いとも感じている。日本工営で30%超、建設技術研究所でも増配発表があり20%超という中で相対的低さも感じている。投資の必要性とのバランスとは承知しているが、配当に関する現状認識についてどう考えているか。また、株主優待制度については、現状1年超保有の株主への同一拠出となっているが、株主アンケート結果をみると半数超が3年超保有という結果であるし会社としても長期で成長をしていくという姿を訴求されている。より長期保有の方への優遇措置によるインセンティブを持たせるお考えはないか。

A
配当は認識の通り基本方針に則って決めているもので配当性向15%というものは長期的な安定配当という側面からも現状ではこの水準としている。20%や30%というご意見も頂戴するので、そういう意見にも寄り添いながら検討していきたい。優待についても長期株主に対してどう報いることができるのか、こちらも検討をしていきたい。

(所感)
答弁の後に、補足でコメントをさせて頂きました。
安定配当を重視ということで、それであれば利益の増減で配当が増減される不安を軽減するために配当性向(EPSに対する目安)ではなく、DOE(BPSに対する目安)にすることを提案しました。BPSを毀損することで結果的に減配というリスクはあるのでしょうが、それでも配当性向よりはマシだと思います。まぁとはいえ、リーマンショックの頃などはBPSを普通に減らしているのですけどね…。

★Q 本則市場への上場意欲について
当社株式は長きに渡りJASDAQ構成銘柄として上場されているが、本則市場への上場は考えられないか。東証の再編問題などもあるもが、本則市場への上場により、企業としての信用力や社員の方のエンゲージメントという観点からも検討されると良いと思うが、認識はどうか。

A
東証1部上場への期待はこれまでも声を頂くこともあり、我々としてもどのように次のステップへ上がるかということは色々な考えがある。もちろん昇格については、念頭にはあるが確実にいつまでという形でビジョンの中に明記はしていない状況でもある。その理由としては、成長と昇格という両輪でやっていくのがよいのか、成長というものに集中しその暁に考えるべきものだとするのかよいのかということがあり、現状では後者としてまずは成長のために、ということに集中したいと考えている。事業の拡大、価値の向上に集中したいが先にあり、とはいえ、指摘の信用力や採用面での優位さなどもあるため、今後もバランスをみながら考えていきたい。次のビジョンを描く時にこういった側面でもどう位置付けていくかを考えていく。

(所感)
うーん、ここも私の中では結構満点に近い答弁です。杓子定規に頑張るといわれるより、潔いですよね。要するに昇格より着実な成長を優先したいということです。もちろん、着実な成長と昇格は両立できるものですし、実際そういうツッコミも頭を過りますが、これもビジョンや経営戦略の基本方針に沿ったものをとても大切にしている現れな気がします。戦略はやらないことを決めることだとも言われますが、もちろん「やらないこと」とまでは仰っていませんが、集中すべきやるべきことではないということですね。ちなみに私は本則市場といったのですが、それはJASDAQからの直接1部昇格は形式要件の壁は相当高いと理解しているためです。従って、まずは2部でよいと思っており敢えて、1部という表現をしなかったんですが、東証1部への期待が日常よく言われているんですかね・・・(笑)。

Q 為替変動による影響について
為替の変動により収益へ与える影響はどの程度か。ドル円でどの程度の水準であることを前提としているのか。

A
海外事業においては、円高になると損失が出やすい状況であることは事実。ドルベースで為替のリスクヘッジをしているが、現地通貨が多様な現状の中でドルだけでヘッジできない部分もあるし、現地通貨に各々リスクヘッジも検討はしたものの、その対策における費用対効果がバランスしない面もあり苦慮しているのが実情である。しかしオリコングローバル(OCG)の会計的安定をもたらすための工夫の施策も講じていることから、今後より安定的になってくるのではないかと考えている。

(所感)
この辺りは現地通貨の影響は相応に受けるよということですね。どうしてもグローバルな事業をしていると特に急激な為替変動についてはどうしても影響は不可避ですからね。

3.経営説明会・質疑応答

決算と経営戦略の説明です。このような機会は貴重ですし、多くの株主の方に聴いて頂きたい内容ですから、ぜひ招集通知にも記載頂きたいですね。取締役の方も後方に移動して同席されています。資料は決算説明資料に沿った説明です。冒頭にリンクをつけたアナリスト向けの説明会とも被りますね。ここでは詳細は割愛します。質疑応答の様子は以下の通りです。

Q 国内での強靭化機運の高まりの対応について
国内では強靭化向けの補正予算も通り、この市場は活況になるものと認識しているが、この機運に乗って仕事を積極的に取っていくイメージなのか、あるいは選別をして利益率を確保・向上していく方針なのか。またこの補正予算が付いたことに伴う要素は業績予想には加味されていないと考えてよいか。

A
まず認識の通り計画には盛り込んでいない。安定的な数値を作っていく上では追い風ではあるものの、一方で就業問題という観点からすると、楽観できない点もある事も事実。改正労働基準法においては、サービス業におけるコンサル業務については、残業規制も厳格化されておりこれを遵守できないとブラック企業化してしまうというリスクもあり。このため、適正な就業環境を維持するためにも結果的に選別をしていくことになると考えている。このため、追い風ではあるものの、数値を単純に底上げする余地があるものとみるだけでなく、就業環境等の社員の健康等に十分配慮する必要があるため慎重にならなくてはならない。とはいえ、業績面で安定には寄与してくれるものだと認識している。

(所感)
この答弁も面白いですよね。普通こういう質問がくると、追い風になると思うので期待してね、とちょっとリップサービスになりそうなものですが、両側面があるよということですよね。社員を大事にするという会社の色が強いことは、以前にも実感したことを記事にしていますが、やはりここでもそのようなトーンですね。そしてアドオンによる期待ではなく、安定化への期待ということで、この会社らしい回答だと思いました。

Q 海外案件における生じうるリスク管理について
海外の比率が高まっており、これらの収益があがってくると気になるのは海外の案件で不測事態に伴うリスクの発生が起こらないかどうかという点が気になっている。プラントの構築等でなかなかプロジェクトが進まずに損失になるなどの事例もよく見聞きするがリスク管理についてどのように考えられているか。ODA案件という面からも安全性はあるかなと思うがどうか。

A
リスクはある。国内も同様だが海外も同様である。OCGにおいても契約段階から検証力を高め、現場の安全パトロールで品質重視をすることでリスク対処を行っているし、そのようなプロセスを取れることも資産だと思っている。人材の確保という事も進め、主要6社の利益率も横並びで安定的な利益を出してくれている。ODAの案件であれば指摘の通り安定した内容である。また一方で市場拡大を取りにいかねばならない側面もあり、世界銀行、アジア銀行、民間の案件にも視野を広げていくことにも取り組んでいくためにも、現地方針で現地採用をしながら、リスク対処を取りながら体制構築し、幅を広げていきたい。

(所感)
それはリスクはありますよね。今後市場拡大を取りにいくために、ODA以外のアジア銀行や純民間の案件も視野に入れていくということですからこの辺りのリスク対処の状況は見ていかねばなりませんね。

Q 人月ビジネスによる成長余力の見立てと人材確保余力
人月ビジネスという側面があると認識しており、成長余力は人の数とその稼働率に依拠するものだと捉えているがそれは正しい認識であるか。またその場合、人の確保に比例した成長だけであれば成長限界が来てしまうとも感じるのだが、新たな収益モデル(商品を売るとかサービス提供型でサブスクモデルを模索するなど)の構築も必要かと思うが何か策は考えられているか。

A
認識の通り、人の数×稼働率という考えであっている。まず前提として社内の人材リソースがいかに稼働するかがベースであり最重要であるが、それだけではなく、協力会社の方々との連携も大切な収益源になる。海外においてはジョイントベンチャー(JB)という概念によって同業他社と組んでやることで、ボリュームを取っていく事もできる。体制をどう構築していくか、出来るだけ内部リソースでいかに付加価値を生んでいくかということを主体に考えている。一方で新たな収益モデルという面は今でも酒蔵の運営やカフェなど現地の採用を自己資本で進めて小さくは取り組んでいる。またAIソフトを開発し、クラウドでそのソフトを提供することによりそこに参画するゼネコンさんが使えるような仕組み提供も着手している。しかしながらこれらの新たな取り組みを別個に進めるのではなく、あくまで建設コンサルという現場から派生し相乗効果があるものに投資することが大切だと考えている。

(所感)
この質問は良い質問だったなと思います。勉強になりますね。具体的な取り組みとかはよくわかりませんが(特にAIのシステムの話とか)、今後こう言った目線でビジネスモデルの創出という観点でまた私も質問出来るように準備しておこうと思いました。

★Q 外注リソースの充足感や粗利率下押し要素がどの程度あるか
国内での強靭化の機運の高まりから外注リソースの活用も必要という事かと理解しているが、現状で外注リソース確保の充足感の不足感はないのかという点と、労働力がタイトでコスト上昇も見られると考えられるが粗利率への下押し影響がみられる状況であるかを教えて欲しい。

A
外注の現状を見ていると高齢化が進んでいることも課題である。新規の外注取引先をどのように増やし、量と質のバランスを取りながら確保していくか考えている。場合によっては、社内に取り込める余地も検討していかねばならないと思っている。一緒にやりましょうという声掛けも必要になってくるのではないか。安定とプラスアルファになるように取り組んでいく。

(所感)
この辺りは対策も講じておられるようですね。人材への目線はとても高いものを感じるため、あとは収益構造として定量的に分析をするためにも外注率や原価比率など知りたいですが、ちょっとマニアックですからまぁ程々にするのがよさそうです(笑)。

★Q パナマの現地法人設立のポテンシャルの見立てについて
パナマに南米地域初の現地法人を設立ということで、現地採用の拡充や更なるプロジェクトの拡充といったポテンシャルを期待してのことかと思うが、現状海外売上の約240億のうち、この地域でどの程度を占めていて将来的にどの程度伸長するポテンシャルがあるマーケットなのか。定量的な説明が難しければ定性的な側面でもよいので、理解を深めたいと考えている。

A
海外の戦略そのものはアジアを中心に進めてきたが、軌道系の案件が爆発的な需要がありそれを取り込んでいるところである。アフリカ市場も数年前から取り組んでおり新規開拓を進めている。そしてアジアとアフリカだけでいいのか、アジアがピークを迎える可能性もある中で、受注や売上を安定させるために、エリア拡大は必至でありポテンシャルを有する南米をターゲットにした。また顧客層もODAだけでなく、世界銀行や民間にもターゲットを広げることで顧客の広がりによるプラス寄与もしていきたいと考えている。

(所感)
定量的な評価は難しいため定性的な回答を頂きましたが、総じてポテンシャルを感じられているようですね。一方で民間など従来の案件からみるとリスクを取っての案件も出てきそうです。その分、利益率も向上できるといいと思うのですが、そのあたりのリスクと収益率のバランスについては、今後、民間案件なども出てきた時に改めて質問したいと思います。

★Q ASEANの鉄道軌道工事のピークアウト後の海外トレンドについて
ASEANでの鉄道軌道工事により足元の受注が急拡大をしているが、このピークを超える2年後辺りには受注トレンドは踊り場を迎えるということかと思うが、他の地域のカバー等で横ばい程度のトレンド感なのか、あるいは漸減してくるイメージなのか、現状のトレンドの見立てを教えて欲しい。

A
海外の受注については一旦踊り場が来て減少することは否定できない。それを回復させるためにエリア拡大や顧客層の拡大で回復させていくことを今から戦略として取り組んでいる所である。しかしながら、売上については必ず伸ばしていくという強い意志を持っている。株主に還元していく、安定着実な成長をしていくという観点で増収を確保し、着実な増益を基軸として経営をしていく。

(所感)
受注は減少を認められましたが、売上、利益は減らさない強い意志を感じました。もちろん、意思だけでどうにかなるものではないわけですけどね。受注が減ると遅滞して売上も減ってきてしまうため、進行基準で売上源があるうちに受注を回復させて売上を維持向上していくということで、今から種まきをしていくということですね。リスクテイクのバランスも変わってくると思いますから、この辺りは期待とマネジメントリスクの双方の観点で注視が必要だと思います。なお、受注トレンドが減少するといった際には、とりわけ個人投資家は一喜一憂しがちであることもあり、長期的な売上利益の維持の方針等丁寧なIR活動を期待したいと最後にコメントさせて頂きました。


★Q 自己株買いの継続性と活用方針
自己株買いを発表して、その後株価は上昇しているが、中には予定数量を買わずに終了という会社さんもありますが、当社ではどのような方針であるか。合わせて、自己株買いした株式の活用としてはMAなど様々な事を考えられえていると思うが、どのような活用をされていく方針であるか、お話できる範囲で方向性をお聞かせいただきたい。

A
一度示した方針を変えることはないので、きちんと買う。活用方針はMAも含めて先ほどの答弁の通り、外部リソースの拡充という側面からも有効活用していきたいと考えているのと、社内リソースへの拡充の観点で社員への還元という観点でイソップのための準備にも備えていかねばならないと考えている。

(所感)
従業員と株主へのバランスを取った回答ですね。いいと思います。安定的な業績を作りながら、双方に還元していくという姿勢は当たり前のことですがいい温度感で説明されていると思います。

4.さいごに

最後に後席にいらっしゃった役員の方々にもご挨拶をして、出口のところで一人一人の株主の方を見送られていた社長にも丁重に御礼を差し上げて会場を後にしました。出口の所に、玉子屋の仕出し弁当が置かれていたので、この後、関係者各位でランチですかね。どうせなら、うな重とかもっと高級なものを召し上がって頂きたいなと思いました(笑)。

株主総会に出るにあたり、質問事項の纏めが追い付かず、やや拙速な質問をぶつけてしまいました。株主になってから日が浅いこともあり、やはり自分が本当に寄り添っていられるなと思えるのには、最低でも3年程度は必要ですね。というわけで、どこまで一緒の船に乗っていられるか、私自身が試されている気がしますが、良い会社だと改めて感じられたため、寄り添える株主でありたいなと思いました。


この時点で11:45です。この日は渋谷で野村IRが開催されており、12:00から丸和運輸機関の和佐見社長の講演会なのですが、間に合いそうにないので、再びタクシーです。タクシー利用なんて年に1,2回しかないのに、この日2回目のタクシーです。

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