見出し画像

社会人のための学び直し数学【高校数学方程式編その2】

2.2次方程式①

 $${a_2x^2+a_1x+a_0=0}$$ という 2 次方程式を考えます。添え字がすこしわずらわしいので,係数を $${a_2=a,   a_1=b,   a_0=c}$$ とおいて,$${ax^2+bx+c=0}$$ とします。
さらに $${a\neq 0}$$ なので,方程式の両辺を $${a}$$ で割ると $${x^2+\cfrac{b}{a}x+\cfrac{c}{a}=0}$$ と書くことができます。ここで $${\cfrac{b}{a}=p,   \cfrac{c}{a}=q}$$ とおけば $${x^2+px+q=0}$$ です。
すなわち $${x^2+px+q=0}$$ の形の 2 次方程式を考えることができれば十分ということです。

 まず $${p=0}$$ のときを考えましょう。$${x^2+q=0}$$ なので,左辺の $${q}$$ を右辺に移項すると $${x^2=-q}$$ となります。$${x}$$ は 2 乗すると $${-q}$$ となる数です。
これを解くために $${x^2=4}$$ という簡単な 2 次方程式を考えてみます。
$${x}$$ は 2 乗すると 4 となる数ですが,すぐ思いつくことができるはずです。$${2^2=4,    (-2)^2=4}$$ です。すなわち,$${x^2=4}$$ の解は $${x=2}$$ または $${x=-2}$$ となります。
解の書き方は $${x=2,   -2}$$ あるいは $${x=\pm2}$$ と書くこともできます。
(今後は $${x=\pm2}$$ という書き方を採用します。)

 このことから $${x^2=r^2}$$ となる数 $${r}$$ があれば,2 次方程式の解は $${x=\pm r}$$ となると考えられますが,このように比較的簡単に解が求められる数 $${r}$$ には特徴があります。
整数 $${m,   n}$$ を使って(ただし,$${m\neq0}$$ とします)$${r=\frac{n}{m}}$$ と書くことができる数です。このような数のことを有理数といいます。そして,有理数を 2 乗してできる数を平方数と呼ぶことにすると,2 次方程式 $${x^2=-q}$$ の $${-q}$$ が平方数 $${\left(\frac{n}{m}\right)^2}$$ である場合の解は $${x=\pm\frac{n}{m}}$$ です。

 ところが,$${-q}$$ が平方数にならない場合があります。例えば $${x^2=2}$$ において 2 は平方数ではありません。$${1^2=1,   2^2=4}$$ なので,2 乗して 2 になる数は,1 と 2 の間にあることは確かなのですが……。(同様に,2 乗して 3 となる数も 1 と 2 の間にあるはずです。)

 そこで新しい数,方程式 $${x^2=2}$$ においては 2 乗したときに 2 となる数を考え,それを $${\sqrt2}$$ と表します。すなわち,2 乗して 2 になる数のうち正のものを $${\sqrt2}$$ と表すのです。もちろん,負の数 $${-\sqrt2}$$ も $${\left(-\sqrt2\right)^2=2}$$ となります。この $${\sqrt2}$$ は整数 $${m,   n}$$ を使って $${\frac{n}{m}}$$ の形に表せない数なので無理数といいます。($${\sqrt 数}$$ という記号は,$${2^2=4}$$ から,$${2=\sqrt4}$$ のように有理数にも使うことができます。)
一般に $${x^2=-q}$$ で $${-q}$$ が平方数でない $${\alpha}$$($${\alpha\geq0}$$)である場合,すなわち $${x^2=\alpha}$$ である場合の解は $${x=\pm\sqrt\alpha}$$ です。

 ここまでの説明で,少し違和感を感じた方がいるかもしれません。
$${x^2=-q}$$ の符号「$${-}$$」です。有理数と無理数をあわせて実数という数を構成するのですが,実数はその定義上 2 乗すると必ず 0 以上の数になります。逆に $${R^2\geq0}$$ となる数 $${R}$$ があれば,それは実数であるといえます。違和感のゆえんはここにあるのではないでしょうか。
 実は $${q\leq0}$$ であれば $${-q\geq0}$$ となるので,符号の「$${-}$$」は見かけ上の困難に過ぎません。ところが $${q>0}$$ となると $${-q<0}$$ となり,今度こそ困ったことになります。2 次方程式の解がないのです。解決法は,2 乗して負の数になる,実数とは違う別の数を考えることですが,これについては次回考えることにします。

【参考】実数とは数直線上に目盛ることのできる数であるということもできます。有理数は $${\cfrac{整数}{整数}}$$ なので,その目盛り方は問題ないでしょう。しかし,無理数をどのように目盛ることができるかは一筋縄ではいかないところがあります。例をあげるなら,$${\sqrt2}$$ の場合,1 辺の長さ 1 の正方形をつくって,その対角線を引き,それを切り取った線分の左端を数直線上の 0 の位置において,数直線に重ねます。すると,右端の示すところに $${\sqrt2}$$ を目盛ることができます。円周率の $${\pi}$$ も無理数であることがわかっていますが,これは直径が 1 の円周を使って目盛ることができます。

練習問題 次の 2 次方程式を解け。
(1)$${x^2=121}$$    (2)$${x^2-7=0}$$

【答】(1)$${x=\pm11}$$(2)$${x=\pm\sqrt7}$$

【参考】$${\sqrt2}$$ が無理数であることを証明する有名な方法があるので,紹介しておきます。
(証明)$${\sqrt2}$$ が有理数,すなわち正の整数 $${m,   n}$$($${m\neq0}$$)を用いて $${\sqrt2=\cfrac{n}{m}}$$と書け,$${\cfrac{n}{m}}$$ はこれ以上約分できない($${m,   n}$$ は互いに素であるといいます)ものとする。
$${\sqrt2=\cfrac{n}{m}}$$ の両辺を 2 乗すると $${2=\cfrac{n^2}{m^2}}$$
よって,$${n^2=2m^2}$$ である。
ここで,$${2m^2}$$ は偶数であるから $${n^2}$$ も偶数であり,$${n}$$ は
偶数である。偶数 $${n}$$ は正の整数 $${k}$$ を用いて $${n=2k}$$ と書ける。
よって,$${n^2=2m^2}$$ より
$${\left(2k\right)^2=2m^2}$$ すなわち $${4k^2=2m^2}$$ であり
$${m^2=2k^2}$$ である。したがって,$${m}$$ も偶数である。
ところが $${\cfrac{n}{m}}$$ はこれ以上約分ができない分数であるから,この結論は矛盾している。
ゆえに,$${\sqrt2=\cfrac{n}{m}}$$ と書くことができないので,$${\sqrt2}$$ は無理数である。(終)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?