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学生をとも家&岩室温泉でおもてなし~1週間滞在型トビラプロジェクト~

(読了時間:約10分)


トビラプロジェクト とは?
新潟県内外の学生が、「もっと深く地域を知っていろいろな人と出会ってほしい」「かけがえのない経験をして、未来のあなたに活かしてほしい」という思いから生まれました。学生が地域の活動に入り込みながら、新潟の暮らしを体験できるプロジェクトです。

舞い込んできた一週間ホスト役の案件

 とも家はよく学生が集まります。その理由は、とも家の発起人である僕と相方が大学生であり、とも家を自身の生活の場でありながらできる範囲で呼びかけて公開してきたからです。そうすることで自分たちがやっている活動・生活・「とも家という空間」を好んでくれる学生が自然と集まるようになり、初対面の人やとも家で知り合った人同士が寝食を共にすることが日常的に起こる場所となりました。
 そんな場所なので、県外大学生が一週間滞在する場のホストをやってみないかというお話がに加え、その間の地方体験のプロデュースをしてくれないかと話が来ました。
 新しい仲間が増える予感。しかし、自分にできるかな…。今まで「友達の家」のノリだったので、地域体験を企画するプロデューサーとして人を受け入れたことがなくてちょっと不安でした。しかし、これも何かのご縁。思い切って受け入れることにしました。

 後日、にいがたイナカレッジのYさんと、一緒に今回の受け入れをサポートしてくださるOさんとでミーティングをしました。議題は「どういう風に募集をかけるか」。地方体験だからといって、ただ単に岩室温泉地域”全体”の文化に触れるのではなく、受け入れ先である「とも家」の特色がある体験をしてもらいたいという話になりました。
 なぜならこんな思いがあったから。「地方創生」や「まちづくり」や「地域体験」のなかで「地方・まち・地域」全体の文化に触れることはもちろん重要です。しかし、その地区のよりリアルなものは今現在そこに住んでいる人の日常に立ちのぼるからです。とも家はまったく”岩室っぽい”自覚などないし、岩室の方々からむしろ奇異の目で見られている気も多少しますが(笑)、そこに根ざして住んでいる時点で紛れもなくとも家も岩室温泉の一部なのです。なので、とも家を体感することは地域体験として意義深いと思いました。

 そんなこんなで、なにを売りにするかを考えたところ、最終的には「自・他給自足」・「温泉街」・「地域参入」などが挙がりました。これらを基にYさんがサムネイルを作ってくれました。わーお、とっても素敵ですが、やぱりコンセプトが若干、前衛的か?(笑)果たして人は来てくれるのかしら(笑)

3人の大学生が来た!

地域の方向けに当プロジェクトを紹介するチラシ

 しかし、そんな心配は杞憂、3人の大学生が興味を持ち応募してくれました!東京出身のともちゃん(川畑)たけちゃん(末永)、秋田出身のなっちゃん(加藤)。そうと決まればこっちも全力で準備するぞっ。男女の部屋割りを考えたり、シェアハウスメンバーで対応を分担したりと、少しずつ具体性を上げていきました。そして、なによりも大変だったのは、1週間の体験を用意すること。自分たちがなぜ今の活動をしているのか、岩室温泉という場所とそこに住む人々のイチオシは何なのか、それをイチオシする自分たちなりの理由は何か、など体験の用意を通して自分たちの活動も見つめ直すきっかけとなりました。

地域&とも家の魅力を一週間にわたってご案内👌

 そして、あっという間に1週間滞在の初日に。最初は顔合わせのワークショップとおおまかなとも家の説明をしました。

皆で炊事をするの図

 その後、岩室案内人のOさんにまちあるきをしていただきました。夜はみんなで炊事して食卓を囲みました。

 一日目は後日に予定しているハザカケ稲刈りに向けて、ハザ場づくりをしました。
 竹を適当な長さに切断し、竹の節をナタで落とし、設置場所まで運ぶ。脚の角度や向きに注意しながらゴンゴンッとハンマーで打ち込む。竹を縄で結ぶ。
 人生初めてのナタもめきめきと上達していきます。想像以上にみんな体力と集中力があって、どの作業も大変でありながらとても捗りました。

人生初「もぎたて野菜を畑でパクリ」
野菜もたくさん頂きました!😂

 3日目は弥彦の農家さんのもとにお手伝いへ。
 マンゴーやパッションフルーツの南国フルーツから有機野菜まで育てるYさんからお話を伺いました。一貫したテーマは自分が農業をしている動機とその背景について。話は現場の楽しさ・苦労から日本の食べ物に対する問題意識まで広がりました。話の後は農作業のお手伝い。東京出身・東京育ちの二人には新鮮な話と体験が大いにあったようです。なによりも、現場の蚊の多さを文字通りに肌で体感したことは農業における原体験となったのではないでしょうか(笑)そしてその後、お手伝いのお礼としてYさんが抱えきれないほどのとれたて野菜をくださいました。ありがたい…!

 その後は、たびたび僕らと遊んでくれる近所のDさんの窯でピザを焼いて食べました🤤ちなみに薪はDさんの裏山の木を伐採したもの、そして野菜はもちろんYさんから頂いたもの。お手伝いして頂いた野菜がピザに代わり、裏山で採れて自分で割った木が炎に代わる。ピザ窯は借りる。ご飯はみんなで食べる。自給とは何か、地域とは何かを少しでもこの体験で感じてほしいと思い作ったプログラムでした。

旅館の庭園の草刈りをお手伝い
高級感のある内観とまだ誰もいない旅館にテンションが上がる
「あ゛ぁ~いい湯だった~」

 4日目は濱松屋さんに”おてつぶろ”!
 小一時間のお手伝いを引き換えに自慢のお風呂を頂きました。お手伝いは庭園の草刈り。膝まで素足を出して草藪の中をズンズン進む子を見て「おいおいすげぇな…(笑)」と、普段から草刈りをしている僕を逆にビビらせました。案の定、蚊の応酬に遭ってましたが、「一周回って逆に新鮮」と言われ、再度ビビらされました。その後はお風呂を頂きました。お手伝いの後のお風呂は最高!また、岩室温泉の代名詞でもある「黒湯」も堪能してもらいました。入浴後は旅館内を探検。趣深い客室に、開店前でヒッソリとした旅館内に自然とテンションが上がりました。草刈りをしているときには気づかなかった雑草に客室から見ることで気づき、「あそこもっと、綺麗にしておけばよかったね」と一緒に話しました。
 その後、館長のOさんが温泉地としての岩室温泉地区についてお話をしてくださいました。なぜ旅館を継いだのかを進路に悩める大学生に重ねてお話してくださいました。さらに、甘~いあんみつがかかった葛きりも出してくださいました。お忙しいにもかかわらず大いにもてなしてくださった館長と濱松屋さんの温泉で、心も体も温まりました。😌

キノコ汁・野草の天ぷら・自家製魚醤の炙りおにぎり・山葡萄塩

 5日目はとも家でえげつないほどお世話になっているHさんご夫妻の野草・キノコ勉強会と採ってきた食材のランチでした。
お二人は日ごろからキノコ・野草・果実採集に行ったり、釣りに行ったりと超野性味あふれます。それに加え、それらの調理までも圧倒的なクオリティでしてしまいます。
 勉強会は色んなマニアックな世界が聞けました。その後は実際に採ってきた食材たちでお昼ごはん!自家製の魚醤を塗ったおにぎりをバーナーで炙ると香ばしいにおいが脳まで沁みわたりました。
ランチと体験談からHさんご夫妻の圧倒的に”生”な世界に触れてくれたのではないでしょうか。「こんな世界があるんだなぁ…!」ととも家に集まってきてくれた人同士が痛感し合ってくれたら、この上なく嬉しいです。

トン汁とおにぎりを畔で食べる

 6日目はビッグイベント、稲刈り&ハザカケでした!
 とも家も田んぼは一年生。この日は事前に友人に呼びかけたため、トビラの3人のほかにもとも家メンバーが集まってくれました(^^)ハザ場の作り方、稲の刈り方、稲束をまるける方法など、やり方は僕がyoutubeで一通り情報をまとめてみんなに伝授していきました。全員、最初は勝手がわからず、作業も牛歩の如し!だったのですが、みんな自己流のやり方を開発していき、みるみるうちに作業効率が上がっていきました。お昼ご飯は畔に座って豚汁とおにぎり!やっぱうまいね~!作業の最中に近所の方々が面白がって応援しに来てくれたり、アドバイスをくださったりもしました。「昔は嫌というほどやらされたね~」と懐かしがって楽しくおしゃべりしました。結局、その日のうちに全部作業は終わらず…泣。でも、やるだけやって達成感を噛みしめられました。

8日目・別れ際の一枚。すっかり名残惜しくなる

 7日目と8日目はフリーの日にしました。
 各々が1週間滞在して興味を持った場所に行ってきたみたい。突発的に弥彦山に登る者、いわむロックフェスに行く者、地域のおばあちゃんに話を聞きに行く者など、各々の個性が際立ちます(笑)最後の夕ご飯もみんなで食卓を囲んでだべりました。
 そしてあっという間に別れ際。1週間、寝食を共にしてすっかり名残惜しくなってしまいました(笑)それぞれ個性的で素晴らしい感性を持っていた。三者三様に、とも家と岩室での様々な出会いからどんなものを感じ取ったのだろうか。見ず知らずの土地に飛び込んでくれた3人の勇気に応えれらるような経験をさせてあげられていたらこの上なく嬉しいです。

おわりに.地域の案内役をして思うこと

稲刈り・だいろの湯の後、地域の呑み屋へだべりながら向かう。
こんな瞬間が一番楽しい。


 「また遊びに来ます!」と言ってくれた3人。その一言がまず友人としてなによりも嬉しい。そして、それは同時にまちづくりの観点からもあるべき本質的な関係性なのではないでしょうか。漠然と「まちづくりがしたい!」という考えで岩室温泉に飛び込んで3年。しかし、「まち・地域をつくる」という意味とその実質的な方法は何かを悩み続けてきました。今のところのその答えとして、「とも家での住み開き」にたどり着きました。なぜなら、地域外の人にとって「まち・地域」という曖昧な集合体はあまりにもわかりづらく、親しみづらいからです。そうではなくて、まずはその「まち・地域」に生活に根ざしている友達の家や、そのような人が作っている心地よい場所に行く。それがそのまままちづくりへと地続きに直結しているように思います。とも家も住人が生活に根ざしていると同時に、少し公共に開かれている場所となり、みんなの友達んちになれるのではないでしょうか。

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